1

by Jake Bellucci

「いかにして囚人たちを社会復帰させるか」という問題はアメリカでも重要視されていて、研究者やシンクタンクが調査データや囚人との面談を元にいくつものレポートを公開しています。しかし、テキサス州で新たに行われた試みは少し変わっていて、「問題の解決案は問題に最も近い人が出せる」ということで、「どのようにして囚人を改善できるか」ということを囚人自身に書いてもらったレポートが当局に提出されました。

If Prisoners Ran Prisons | The Marshall Project

https://www.themarshallproject.org/2016/10/23/if-prisoners-ran-prisons

「Responsible Prison Project(社会復帰可能な囚人たちのプロジェクト)」と呼ばれるプロジェクトで提案された内容の一例は以下の通りです。

◆到着



by Nathan Rupert

移送されてきた収容者はバスから下ろされると、まず建物の中で身体検査を受けます。この時、囚人は看守から裸になるよう大声で命令され、検査が終わって専用の衣服が支給されるまでの数分間はずっと裸でいなければいけません。しかも、身体検査の最中、看守たちは収容者たちに卑わいな言葉を大声で浴びせ続けます。一連のプロセスは収容者たちの士気をくじき従順にさせるためのものですが、一方でこれから収容されることについての説明や案内は一切ありません。

しかし、「受け入れられること」が復帰の第一歩であり、看守によるこれらの行動は囚人を社会復帰から遠ざけると囚人たちは考えています。新たに収容される人物がカウンセリングを受けられるようにし、ギャングのリクルーターや強奪といった行為の餌食にならぬよう、来るべき刑務所の文化に備えて訓練の場を用意すべきとのこと。

◆売店

刑務所の物資配給所は選択肢が少なく、ブラックマーケットを生み出す原因になっています。例えば、それまで配給されていた洗剤が扱われなくなると、囚人たちは刑務所内のブラックマーケットでランドリー室から盗まれた洗剤を得るようになります。同様に、配給所はオニオンパウダーやニンニクといったシーズニングを扱わないので、囚人たちは食堂から盗まれたものをブラックマーケットで入手します。

「枕・漂白剤・スパイス・タッパー・飲み物・非常食・ペン・クリップ・輪ゴムなどを囚人が所有することは禁じられているがゆえに、囚人たちは州から盗む形でこれらのものを入手します。必需品を禁じることで、州が盗みや不道徳な行為を推進する結果となっているため、テキサス州刑事裁判部はこれらのアイテムを配給所を通じて囚人が得られるようにすべきです」というのが囚人たちの意見です。

◆食べ物



by Derek Bruff

囚人たちの健康を保つために、物資配給所で野菜や果物を扱って欲しい、という意見も。選択肢さえあれば囚人たちは野菜や果物を食べて健康的な生活を送りたいと考えているようで、園芸クラスのある刑務所では、食堂からサラダが毎日盗み出されるとのこと。テキサス州刑事裁判部は「果物を配給所で扱うと囚人たちがワインを作り出す」という考えていますが、果物がなくても囚人たちはジュースやレーズンを食堂から盗み出してワインを作っています。

◆独房収容者の扱い

例え独房に収容されている囚人であっても、最終的な目的は社会復帰であるべきです。そう考えると、独房に収容されていても、ポジティブな振る舞いを推進すると思われるイベントへの参加は許されていいはず。刑務所では一般人による音楽の演奏やコメディーショー、聖歌隊による演奏などが行われますが、独房収容者にもこれらのパフォーマンスを見る機会を与えてほしい、という声もありました。

◆来訪



by Heather Williams | Flickr

すべての来訪は制限時間を2時間から4時間に伸ばすべき、とのこと。収容されている人物と過ごせる時間が長くなることで、遠方から訪れる人も増える、と考えられるためです。

◆振る舞いと衣服

看守はトラブルメーカーが誰かを認識しており、囚人を悪行から引き離すよう目を光らせていますが、一方で「囚人の善行」は見過ごされがちです。模範的な囚人であっても上から注意を払われないので、他の囚人と同じように扱われてしまいます。

テキサス州では囚人はみな同じ衣服を着るように定められていますが、州によっては模範囚の衣服が異なるところも。着ることができる衣服の選択肢が増えるということは、当の囚人が「自分は悪行を働く囚人とは違う」と認識することにつながります。それによって自分の未来に目を向け、希望をいだいて「未来を変えよう」と思えるようになるはずです。

なお、上記の案は終身刑に服しているアーロン・フラハティーが数人の囚人と元保護観察官のウォルフ・スティラー氏と共に作ったもの。フラハティーらが書いた65ページにも及ぶ「公共をより安全にするためのテキサス州刑務所システム改革案」は実際にテキサス州に提出されました。