シネフク大黒座の前で記念撮影する人々。 映画『シネマの天使』場面写真より
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 現在、日本では数多くの映画館が消えていっており、東京でもここ10年間で銀座テアトルシネマ、銀座シネパトス、シネマライズなど、多くのミニシアターがなくなりつつある。いまやスマートフォン一台あれば映画を楽しめてしまう時代。映画館体験をする若者は減っていき、デジタル化とともに都市の映画館はシネコン一色になり、独立系映画を上映してきたミニシアターは消えていくのが現状だ。(取材・文:森田真帆)

 ハワイで開催されたハワイ国際映画祭では、日本映画『シネマの天使』の上映が行われ、本作の監督を務めた時川英之監督が舞台あいさつに立った。2015年に公開された本作は、122年間にわたって営業を続けてきた広島県福山市のシネフク大黒座を舞台に、スタッフや常連客などの思いが交錯する姿を実際にシネフクで起こったエピソードを交えながら描いた作品だ。取り壊しが決まった劇場の最後の雄姿を何とか映像に残したいという劇場関係者の熱い思いに、広島在住の時川監督が応える形で閉館間際のギリギリのスケジュールを縫って撮影されたというエピソードを観客に向かって披露した。

 舞台あいさつにはハワイ映画祭のプログラミングを務めているアナ・ペイジも登場し、本作を選んだ理由のひとつに「ハワイも映画館がなくなりつつある」と話し、「日本もハワイも関係なく、どんな人が観ても、自分たちがかつて足を運んだ映画館を思い出し、そしてその映画館を恋しく感じる思いにかられる大変感動的な作品だと思いました」と紹介。

 舞台あいさつ後に行われた現地の観客とのQ&Aでは、高齢の観客が「どうしても伝えたい気持ちがある」と手を挙げ、「ハワイにはかつて数多くの映画館が存在しました。この映画のエンドロールで、ここ数年のうちに閉館した日本の映画館が写真で紹介されていましたが、それはアメリカも同じだと思います。ハワイの映画館もここ10年間で10件以上が閉館しました。映画を愛する人間にとってこんなに悲しいことはありません」と涙ながらに訴えた。

 日本と同じようにここ20年間の統計を見ると、約20館以上もあった映画館が消えていったというハワイ。現在は、ミニシアターのような映画館は、ほぼなくなっており、シネコンがいくつかあるのみだ。日本でもここ数年で数多くの映画館が閉鎖していったが、ニューヨークから映画祭にやってきたという観客のひとりは「アメリカ中で映画館がなくなっていっている。これはもはや世界規模の問題なんじゃないか。映画を愛する人間みんなでこの問題を話していくのが不可欠だと思う」と話した。

 メジャー級の映画が数多くのシネコンで上映されているかたわら、ミニシアターがなくなっていることで多くのインディペンデント系の良作映画が上映する機会を失いつつあるのが現状だ。本作の上映は小さなきっかけに過ぎないかもしれないが、このような事態をただ見過ごしていくだけではなく、もう一度世界中の映画ファンが団結して世界規模で打開策を考えていくことができれば、映画界は少しでも変わっていくのではないだろうか?