左利き専門店「菊屋浦上商事」の浦上裕生社長

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 全人口の1割、日本には1300万人いる計算になる左利きの人々。右利き多数社会で不便を強いられるのが常だが、そんな日本社会にも、左利きの人々に優しく寄り添う店がある。

 神奈川県相模原市にある“左利き専門店”「菊屋浦上商事」だ。その品揃えは何と最大100点にも及ぶ。社長の浦上裕生氏が語る。

「当店は親の代から文房具屋なのですが、官庁との取引で、よく左利き商品の注文があった。例えば、ハサミ100個の納入時、右利き用が98個、2個だけ左利き用と指定される。しかし、仕入れは10個単位なので、余りを店で売り始めたんです。

 私は両利きで、弟が左利きなのですが、弟が中学生だった頃に、使いにくい右利き用カッターを使って手を切ったことがあった。母親が、“世の中には左利き用の文房具がなくて困っている人がいるんじゃないか”と考え、徐々に扱いを増やしていったんです」

 2000年頃から大々的に商品を集め、テレビのバラエティ番組で取材を受けたこともある。

「その時にほんの数秒だけ映った、左利き用『草刈り鎌』を見て、わざわざ遠方から買いに来てくれたお客さんもいました」

 それだけ、左利きグッズにはコアな需要があるという証拠。

◆逆向きの「おたま」をメーカーと開発 

 同店の人気商品は、「ハサミ」や「カッター」「定規」などの文房具だ。

「左利きの人は定規で線を引く時、目盛りが逆向きの方が使いやすい。だから左利き用の定規は、右から左に向かって目盛りがついています。カッターは刃の向きが右利き用と逆で、左手で刃をスライドできる。替え刃も、左利き用のものを取り揃えています」

 左手で持つと注ぎやすい「急須」は、外国人にも好評だという。

「海外では、左利きグッズはほとんど作られていません。だから、外国からのお客さんにも“クールジャパンだ”と言われています」

 そんな海外でも作られている、数少ない左利きグッズが「万年筆」だ。欧米では、万年筆でサインする機会が多く、高級品も含めて種類が豊富なのだとか。

 また、同店がメーカーに依頼して、左利きグッズを開発してもらうこともあるという。

「左利き用の『おたま』を作ってもらった時は、先端の加工を逆向きにするだけなので、意外と簡単に作れました。今考えているのは左利き用の『ノート』です。罫線を左上から右下へ傾けさせて、手が汚れないものにしたいですね」

◆「左利きの男の子に告白したい」

 浦上氏のアイデアは、店舗でのお客さんとの会話から生まれている。

「実際に左利きのお客さんと話していると、何に困っているか分かる。ご本人だけでなく、『左利きの男性と結婚するので、左利き用万年筆をプレゼントしたい』という女性や、『左利きの男の子に告白したい』という女の子、『左利きの上司にプレゼントする』という会社員の方もいらっしゃいます」

“迫害”を受けている中でも、心強い味方はいるのである。

※週刊ポスト2016年12月9日号