「Thinkstock」より

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 今年も年末が近づいてきました。年末といえば「忘年会」。今回は幹事を任された方々が名幹事と言ってもらえるように、宴会について「飲食店の本音」をお教えします。

 大きな忘年会ですと、10月から飲食店に予約が入り始めます。忘年会の規模が小さくなるにしたがって予約は後ろにずれて11月へ。そして仲間内の小さな忘年会の予約は、12月に入ってからが多くなります。最近は大きな忘年会が減っていたり、忘年会の回数減少から予約の競争率が下がっているせいか、徐々に予約時期が後ろになり、開催日の週や1週間前くらいの予約も増えているようにも思えますが、幹事を任せられたときには、念のためにできるだけ早めに予約などの準備をしましょう。

●お店の予約

 幹事慣れしていない方だと、飲食店に予約するときに「こんな予約内容で飲食店は受け入れてくれるかなあ」という心配や疑問があると思います。お店への相談でもっとも多いのが、「税込み○円で飲み放題にできませんか?」というような予算と内容に関することでしょう。お店には最初から設定された宴会が何種類かありますが、個人店を中心に「応相談」可能のお店も多いです。オーナーや店長の裁量が強く、融通がきくお店です。その際にお店にとって最終的に重要になるのは、「その日は結局いくらの売上になるか?」です。

 たとえば、ある個室や空間を使う場合、1人4000円で10人のお客さんだと売上は4万円、1人3500円で12人だと同4万2000円です。変動費である材料費率を調整すれば、粗利は同じくらいか客単価が安いグループのほうが儲かります。

 また、19時からの予約で2時間の宴会予約を受けた場合、終了は21時となり、片づけと次のお客さんの来店準備があるので、立地が良い店舗でない限り2回転目の売上が少なくなりがちです。もし18〜20時の予約なら2回転目の売上を増やせる可能性が高まります。

 そのため早い時間帯の予約は、幹事さんのわがままが通りやすくなります。お店からしたら、営業時間のど真ん中をとられて1回転分の売上しか見込めないよりも、2回転できる予約は大歓迎なので、お客さんのわがままを聞いたりイレギュラーな内容を相談されても、その予約を確保したくなります。繁盛店になると、効率性を重視して予約できる時間帯を最初から設定しているお店もあります。さらに時間帯のほかに「曜日」という要因も、お店にとって重要です。そのお店の立地によって予約が入りにくい曜日のほうがリクエストを聞いてくれやすくなります。

 このように希望の予算や内容が通るか通らないかは、「時間帯」や「曜日」「人数」に関係しています。週初で時間が早めでしたら大歓迎されることでしょう。いろいろわがままも言ってみてください。逆に週末金曜日の19時〜はお店にとって一番のかき入れ時なので、お店は強気です。金曜日にこだわらなければ月〜木曜日をお奨めします、またはオフィス街の土曜日も狙い目です。

●人数変更

「人数」といえば、慣れた幹事さんは「ちょっと少なめ」の人数で飲食店を予約しています。幹事さんにとって悩ましいのは、当日人数が減ったときにキャンセル料をどうするかです。会社で予算が組まれている忘年会なら、仕事で来られなくなった人の分を支払っても誰の懐も痛まないので、最初から出欠が不確定な人の分まできっちりお店に人数を告げておけばいいと思います。

 一方、プライベートの宴会の場合、キャンセル分を自分が被るのも嫌ですし、参加してくれたメンバーにお願いするのも気がひけます。お店の中には「1〜2人分くらいならいいですよ〜」と言ってくれるような優しいところもありますが、実際に原価や手間をかけてお料理を用意しています。最低限材料費は欲しいというのが本音ですし、来なかった人の飲み放題分は免除となっても、当日の宴会開始後のキャンセルでしたら料理代全額を取るお店も多いと思います。ですので、前もってキャンセルの扱いについてはお店に相談しておきましょう。

 そして、キャンセル料をきっちり取られるお店を予約する場合は、確実に来られる人の人数だけ告げて、不確定要素のある人は頭数に入れないことをお奨めします。ただし、出席の可能性がある人の分は、お誕生日席やちょっと詰めれば座れる程度の人数にとどめておかないと、当日に席や料理が足りないという事態が発生しますので、少なすぎる人数申告は要注意です。

 多少の当日追加ならお店側はある程度対応可能ですが、予約の際に確定人数で予約し、不確定人数や当日増える可能性も告げておくとスムーズにいき、トラブルも回避できるでしょう。お店の本音としては当日の人数変更はできるだけしてほしくないですが、当日に人数が減るより増えるほうがお店にとって売上が増えるので、心情的に前向きになれます。

●貸切

「貸切」も人気があります。一体感がありますし、周りのお客さんを気にしなくてもいいので気兼ねなく騒げます。貸切予約について、お店の「席数」「客単価」が食べログなどのインターネット情報でわかりますが、これが重要になります。

 たとえば、席数30席のお店で客単価が4000円となっているお店では、通常営業して満席になった場合、4000円×30席×80%=9万6000円の売上が望めます。ちなみに「80%」は利用されている席の割合です。4人掛けのテーブルを3名平均で使えば75%となります。お店のテーブル配置によりますが、平均して70〜80%くらいになります。

 つまり、このお店は10万円くらいの売上になるなら貸切を受けてくれるはずです。もし忘年会の予算が5000円/人なら、20人でもお店の売上は通常営業の満席と同じです。極端な話、1万円/人予算なら10人でも通常営業の満席時の売上と同じになります。30席あるお店を貸切できるかは、人数でなく「通常営業をした場合とどちらが得か?」となるはずですので、お店に相談してみましょう。

 お店としても、通常営業で4000円/人の客単価でアラカルト中心のオーダーを24人(=30席×80%)こなすよりも、5000円/人であらかじめ決めたコースを20人分こなしたほうがオペレーションも楽なはずです。

 ちなみに、私が10年間定期的に主催している「1人1本持込ワイン会」や「1人1本持込日本酒会」は、ドリンクを持込する代わりにそのお店の客単価を聞き、それにできるだけ近い金額のフードをお願いすることによって客単価を維持し、お店が損しないことを前提にお願いしています。

●キャンセル

 最後に「キャンセル」についてですが、飲食店業界の者としてみなさんにお願いです。やむを得ず全面キャンセルや一部キャンセルとなる場合は、できるだけ早めに飲食店に連絡してください。キャンセル問題で悩んでいるお店はとても多く、売上に深刻なダメージを与えてしまいます。

 特に無断キャンセル(ノーショウ)は精神的にもダメージが大きく、人間不信に陥る真面目なオーナーさんもいます。貸切のような大きな宴会で当日になってお客さんが来ないとき、「用意した料理はどうすればいい?」「丸々空いているこの空間に今からお客さんは入ってくるのか?」など、頭の中がパニック気味になります。予約した幹事に電話を入れますが、通常は出ませんし、その後もダンマリを決めてバックレようとします。その後の対応も心身共に疲れます。一部人数の減少についても2〜3名以上人数が減ると、用意するテーブル数やそれにともなう料理の皿数も変わってきます。来るか来ないかわからない人を待つことによって当日使われないテーブルが発生するということは、客単価4000円のお店なら1テーブルあたり1万円くらい売上が減ってしまいます。

 飲食店側の動きとしては、通常なら前日に仕入業者に発注をして当日仕込むケースが多いと思います。しかし、料理の内容や他のお客さんの予約状況によってこのスケジュールは繰り上がっていきます。早めに発注して前日や前々日から仕込みをするときもあります。

 また、特別な仕入のためにかなり早くから業者さんに予約発注している場合もあります。仕入業者さんに発注してしまうと実損が発生する可能性が高まります。当日キャンセル分の食材を他のお客さんの料理やお薦めメニューに回すこともできなくはないのですが、もともとは予約したお客さん用に仕入れていますので、すべてをロスなく使い切ることは難しいと思われます。このように宴会当日に向けてお店も動いていますので、トラブル防止も含めてキャンセルは早めでお願いします。

 さて、幹事でお店の予約を任されたみなさん、お店の本音を推察しながら予算、時間、人数などをお店に各種相談してみてください。お店によっては理屈や数字ではなく、気分や感性でリクエストを受けてくれない場合もあるでしょうが、「店側が損しない」提案でしたら理解してくれるでしょう。

 お店とお客さんは「お互い様」、いい協力関係が築ければ、お店は気持ちよく幹事さんに協力してくれることでしょう、当日満足してもらって忘年会後だってお店を利用していただきたいはずですから。参加者も幹事さんもお店も、気持ちよく年末を締めくくりたいものです。
(文=江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部代表)