「べっぴんさん」物語の行方を制作統括・三鬼一希氏に聞く!/(C)NHK

写真拡大

現在放送中の連続テレビ小説「べっぴんさん」(朝8:00-8:15NHK総合ほか)。第9週の11月28日放送から、物語では終戦から3年の月日がたち、すみれ(芳根京子)も仕事に子育てに奮闘している姿が描かれている。これまで、すみれが夫・紀夫(永山絢斗)の帰還を信じ、戦後の混乱期を仲間と共に子供服作りを生きる糧にして生き抜く姿を描いてきた「べっぴんさん」だが、第9週放送を境にこれまでの物語と雰囲気が明るく変わっていく。制作統括の三鬼一希氏に、これまでの物語展開の狙いと、本作の今後について話を聞いた。

ブログも話題の芳根京子

――ここまで、「べっぴんさん」の物語展開が大分静かに描かれてきたように見えます。第9週は時間が経過し、雰囲気が変わりましたが、戦後をここまでじっくり描いたのは何か意図があるのでしょうか。

戦争をドラマのどこで描くかという問題はあると思いますが、私たちのチームでは、戦争中を大きなうねりにしようとはあまり考えていませんでした。先が見通しにくい今、連続テレビ小説を作るならば“戦争が終わった後の混乱し、世の中の常識が崩壊した世界”の中でも、未来を見据えて生きていく人々の姿を描きたいという思いがありました。

ですから、戦争中の大変さを前提にした上で、ドラマでいうと3週目以降ですが、戦後のいろいろな人々の生き方というものを“たくさん、丁寧”に描いていたいと思ったのです。

戦後を生きる人たちが歯を食いしばって生きてきたからこそ、立ち上がっていく人の姿というものがこの先に見えるんじゃないかなと。視聴者の方からの反響で、そのことを感じて見ていただいている方もいらっしゃったのは良かったなとうれしく思っています。

――ヒロインのすみれの立ち位置的は基本的に受け身で、五十八、潔、明美ら周りにいる人たちが代わりに代弁をしていて、その代弁がほとんど正論です。主体的に動くヒロインでしたらそのヒロインの行動に対しての視聴者からのツッコミもあると思いますが、そこがないので、意外と文句のつけようのないドラマになっているように思えます。

活発で、常に前向きに生きているヒロインというのも見ていて痛快だとは思います。ただ、実際そういった人生を送れる人はほんの一握りで、みんなで手に手を取って協力し合って生きていくヒロインがいてもいいのではないかな、と思います。

何者でもないヒロイン、すみれが自分の仲間と一緒に、俗にいう男の社会の中で、なにかしら打って出る。「打って出るぞ」というより、「そっち行った方がいいんじゃない?」と周りに勧められたからそこに来ました、といった方が正しいのかもしれません。

今回の作品のモチーフとなる資料を読んでいたら、70年前の何もないところから事業をやり始めている方がいて。制作スタッフとみんなで、もしかしたらこの方たちは、戦争によって失われた青春をもう一回やっているんじゃないかなと話をしていました。

戦争で社会のルールが全部変わってしまったから、生きるために起業したのですが、事業にこの上ない楽しさを見いだしていたのかな、というように感じました。

物語の中でも、これが生きがいと思えることをやっていくのが幸せなんじゃないかとすみれが気付きます。元来、好きなことだし、「好きなことから逃げない芯の強さが、次の扉を開く」というヒロインの物語を紡いでいけたらすてきなのではと思いました。

――すみれが大急百貨店の出店を巡り、珍しくそこで意見を主張しますが?

そこもかなりスタッフ間で議論をした部分です。物語を作る上でいうと主人公が能動的な方が作りやすいですし、共感も得られやすいのかもしれません。それこそ、ヒロインが行動することで物事が動くというのが作劇の基本だと思いますが、今まで作ってきたすみれというキャラクターが、いきなり主張し始めると、どうなんだろう?と立ち止まって考えました。

今まで見ていただいた視聴者の方がすみれに違和感を覚えるようなことはしたくありません。ただ「べっぴんさん」は、まだ“見上げた時に虹がかかり始めている”状態です。時代が明るくなっていくにつれ、これまで以上にヒロインやその仲間たちの成長を楽しんだり、応援していただけるようなステージへと移っていきますのでご期待ください。

【「べっぴんさん」制作統括に今後の展開を聞く!(後編)に続く】