次期米大統領の娘婿にして腹心、ジャレッド・クシュナーが語る激動の半生

写真拡大

今年の米大統領選で共和党陣営に劇的勝利をもたらしたドナルド・トランプの娘婿、ジャレッド・クシュナー。選挙運動での自らの役割をメディアに初めて語ったフォーブスの独占インタビューより、激動の青年期や、イヴァンカと交際時のエピソード、義父の問題発言に対する考えなど、当初伝えきれなかった内容を公開する。

自制を保ち、控えめで落ち着いた風格のクシュナーは、義父のトランプとはまるで正反対の性格とスタイルを持ち合わせている。ツイッターが顕著な例だ。トランプは1550万人のフォロワーに向けて衝動的な投稿を繰り返し、選挙運動中にはスタッフから携帯電話を取り上げられたこともあったと報じられているが、クシュナーは2009年4月に公認アカウントを立ち上げてから現在まで一度も投稿をしていない。

トランプのオフィスは、壁一面に自身の功績を示す品々が掲げられ、自尊心にあふれている。一方のクシュナーが経営するクシュナー・カンパニーズの本社はいたって地味な作りで、役員会議室に唯一ある装飾は第2次世界大戦でホロコーストを生き延びたユダヤ人祖父母の油絵だ。だが角部屋にあるクシュナーのオフィスに入ると、2人を結びつける2つの重要な共通点が目に入る。それは、不動産取引での実績を示す品々と、イヴァンカの写真だ。

トランプと共通するキャリア

クシュナーはビジネス関連の昼食会でイヴァンカと出会い、2007年に交際を始めた。結婚を意識するようになったクシュナーがトランプをランチに誘うまで、2人は数回しか会ったことがなかった。クシュナーが、イヴァンカとの将来を真剣に考え始めていると伝えると、トランプからは「本当に真剣に考えているんだろうな」と言われたという。

「ジャレッドと父は最初、私と不動産という2つの話題で意気投合したんです」。トランプ・タワーでシークレットサービスの警護員に囲まれながら取材に応じたイヴァンカはこう語った。「不動産開発業者としてのジャレッドと、駆け出しのころの父のキャリアには、共通点がたくさんありました」

クシュナーはトランプと同じく、マンハッタン郊外で育った。クシュナーの地元はニュージャージー、トランプはクイーンズだ。両者の父親はいずれも、地元での不動産取引で大成功を収めた人物だ。チャールズ・クシュナーは米北東部で2万5,000棟の集合住宅を管理する不動産王だった。

「父はサマーキャンプに反対で、代わりに子供たちを自分のオフィスに連れて行った。僕らは仕事や建築現場の様子を見て、本物の仕事とは何かを学んだ」

ニュージャージー州リビングストンの厳格なユダヤ人家庭で4人兄妹の最年長として育ったクシュナーは、私立のユダヤ系高校を卒業し、ハーバード大学に進学。さらにニューヨーク大学大学院で法務博士(JD)と経営学修士(MBA)を取得した。

父のチャールズ・クシュナーは熱心な民主党支持者で、2002年には民主党全国委員会に100万ドル、2000年の上院選ではヒラリー・クリントンに9万ドルを寄付していた。ジャレッドも同じく、民主党全国委員会に6万ドル、クリントンに1万1,000ドルを寄付している。

そして大学院在学中に一家を襲ったスキャンダルにより、彼の人生は大きく変わることになる。父チャールズは2004年、脱税と違法政治献金、証人への不当圧力の罪で有罪を認め、実刑判決を受けた。中でも全米の注目を集めたのが証人への不当圧力だった。チャールズは妹の夫が検察に協力していたことに怒り、わなにかけるため売春婦を雇って密会の様子を撮影し、そのテープを妹に送り付けた。

父の投獄により一家の柱に

父親が収監されたことにより、当時まだ24歳だった長男のジャレッドは突如として一家を支える立場に置かれた。平日は母親と過ごし、週末はアラバマへと飛んで刑務所の父親と面会する日々が続いた。またこの苦境の中、当時ハーバードに進学したばかりだった弟のジョシュとの間に強い絆が生まれた。ジョシュは、自分にとって兄のジャレッドは親友であり、「何があろうとも自分を導き、助けてくれる存在」だと語っている。

クシュナーはこの苦難により、「自分でコントロールできないことについてはくよくよしないということを学んだ」と語る。「自分がどう対応するかはコントロールできるし、物事が自分の思うように進むよう努力することもできる。望んだ結果が得られるように、全力を尽くすことに集中した。もし思うようにいかなかったら、次の機会でもっと努力すればいい」

この考えは、父親から引き継いだ事業の経営についても同じだった。クシュナーが心機一転のスタートを切るため標的としたのは、40年前のトランプと同じ、競争が激しいが大きな利益が見込めるマンハッタンだった。

だがこのタイミングは、これ以上にないほど最悪だった。クシュナー・カンパニーズのCEOとして最初に買収した物件となった高層ビルに過去最高額の180億ドルを支払ったが、2007年に取引が成立した翌年にリーマンショックが発生。賃料は下落し、財源は消え去った。

クシュナーは破産を避けるため、ビルの小売スペースの49%をカーライル・グループなどに5億2,500万ドルで売却、できる限りすべてのローンを組み直し、目先の負担を軽くするためには長期的な支払いの増加もいとわない姿勢を見せた。こうして最終的にクシュナーは、トランプが1990年代に行ったような破産を避け、事業存続に成功した。

教訓を得たクシュナーは、ニューヨークの最高級物件を追い求めるのをやめ、将来性があるマンハッタンのソーホーやイーストビレッジ、ブルックリンのダンボといった地区に焦点を移した。「ジャレッドは若い視点と革新的な考え方を、70歳の男性たちが牛耳るとても古風な産業に持ち込んだんです」(イヴァンカ・トランプ)

トランプの問題発言への立場は

ジャレッド・クシュナーの存在は、パラドックスにあふれている。彼は選挙戦で、開放性や寛容さを重んじるシリコンバレーの価値観を、厳しい国境管理や保護主義的な貿易政策、宗教に基づいた入国管理を掲げるトランプ陣営に持ち込んだ。また、民主党の大口資金提供者だった父を持ちながらも、共和党の大統領候補の選挙運動を指揮した。

ホロコーストの生存者の孫でありながらも、戦争難民の受け入れ拒否を訴える男の下で働いている。事実に基づき行動する弁護士だが、彼の支持する候補は、地球温暖化をでっちあげと呼び、ワクチンは自閉症の要因だと主張し、オバマ大統領の出生地に疑問を呈していた。また大手メディアの発行人でありながら、偽ニュースによって勢いづく選挙運動に参加。敬虔なユダヤ教徒でありながら、極右運動やクー・クラックス・クラン(KKK)の支持を得る次期大統領の顧問を務めている。

クシュナーはこうした矛盾に対する答えとして、自分にはドナルド・トランプに対する揺るぎない信頼があると語る。そしてその信頼は、十数年にわたる関係で蓄積してきた「データ」によって裏付けられているのだという。

「自分が良く知っている人について、誰かが『あいつはひどい人間だ』と言ったとしても、自分の考えを変えたりはしない。自分には経験やそれに基づいたデータがあり、そうした人々よりもはるかに多くの知識がある」

トランプの世界観については「米国の大統領を選ぶ選挙で、米国を第一に優先し、グローバル主義者ではなく国家主義者になるという立場を示すことが、それほど問題だとは思わない」と語る。

では、イスラム教徒やメキシコ人、女性、戦争捕虜といった人々を中傷・強迫してきたトランプの問題発言についてはどうか。「批判の多くが、事実とは異なっていたり、誇張されたりしている。僕は彼の人柄を知っている。そうでなかったら、支援はしない。国民が彼にチャンスを与えてくれれば、彼が憎悪に満ちた言動を容認しないということが分かるだろう」

自身の政治的立場についてはこう語る。「まだ決めていない。変化しているところだ。民主党に賛同できない点はあるし、共和党にも賛同できない点はある。政界は既存の枠に人々を当てはめようとする。トランプは自分自身の枠を作っていると思う。良いところを掛け合わせ、駄目なところを捨てて」

今後の進む道は

友人の中には、自分の価値観を脅かす候補者を支援するクシュナーに対し、怒りのメッセージを送ってきた人々もいたという。「どの政治家を支持するかによって友人関係やビジネス関係を解消するような人は、人格者とは言えない」「自分が信じることは、たとえ不人気だとしても、突き通さなければだめだ」

トランプ陣営を勝利に導き、次期大統領の腹心となったクシュナーの元には今後、こうした友人の多くが手の平を返して戻ってくるだろう。その力をどう使うかは、本人次第だ。だがクシュナーは今のところ、控えめな態度を保っている。

「たくさんの人から、もっと公式な立場で関わってほしいと頼まれている。それが家族や事業にどう影響するのか、いろいろな意味で正しい選択であるのかを考えなければいけない」