「空腹時の血糖値が正常でも、食後に調べたところ高血糖だったというケースは少なくありません。糖尿病ではない人の中に、食後の短時間だけ血糖値が急上昇するという現象が起きていることが最近分かってきました。いわば、糖尿病の前段症状。これこそが、血糖値スパイクなのです」
 こう語るのは、山梨医科大名誉教授の田村康二氏である。

 健康診断で正常と言われた人でも、約30%が血糖値スパイクに見舞われているというデータもあるという。つまり、診断結果だけで胸を撫で下ろすのは早計ということだ。
 「血糖値スパイクは老若男女、誰にでも起こりうる問題です」
 と、田村氏は警鐘を鳴らす。

 特に忙しいビジネスマンは朝食を食べないことが多い。寝ている間は血糖値は下がっているものの、朝起きて朝食抜きで活動すると、体内はインスリン拮抗ホルモン(血糖値を上げるホルモン)が働き血糖値が下がらないように維持をする。そこへ昼食時、丼ものやラーメンを摂ると、血糖値が通常より高くなるのだ。
 「それを毎日、繰り返していると、血糖の反応が大きくなり血糖値スパイクが起きてしまう。健康診断では正常なのに、その30%に血糖値スパイクが起きているのは、不規則な現代人の食生活を如実に表していると言えます。血糖値スパイクは、簡単に言えば血糖値がジェットコースターのように食後の2時間で急激に上昇し、急激に下がる状態。食後、血糖値の数値が140㎎/dlを超えるようであれば、やや問題ありとなります」(健康ライター)

 我々の身体は、糖分を摂ると、胃や腸でブドウ糖に分解、吸収する。その後、血管に入ると、インスリンが分泌され血糖は脂肪などに変化したり、細胞の中に入る。すると血糖値は下がり、インスリンの分泌が収まる。しかし、糖分の大量摂取や、朝食を抜いたり、食事の間隔を空けすぎると、当然、血糖値は上がり、大量のインスリンが分泌されて血糖値を下げようとする。こうした流れが、血糖値スパイクになっているわけである。
 「血糖値の乱高下は、糖質の摂りすぎによって起きています。糖質は、砂糖やご飯、パンなどの炭水化物。これらの中で問題なのは、腸管から吸収しやすい白米、白パンです。理想を言うと、白米より玄米、白パンより黒パンの方がいい。吸収がゆっくりだからです。さらに言えば、一緒に野菜を食べること。それによって糖分が野菜でくるまり、腸管での吸収が緩やかになるからです」(前出・田村氏)

 では、この血糖値スパイクを放置しておくとどうなるのか。
 「血糖値スパイクが続くと、血管が傷んでボロボロになります。糖尿病の前段症状と言いましたが、様々な疾患も出てくる。血管が傷つけられ、動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが増加し、がん、認知症などの危険も考えられます」(同)

 血糖値が急激に変動すると、活性酸素が作られやすくなることも分かっている。結果、血管の壁が傷つきやすくなり、それを修復しようと集まった免疫細胞によって、血管が塞がってしまうのだ。これが心臓の血管で起きれば心筋梗塞になるし、脳の血管で起きれば脳梗塞ということになる。
 日本人はすでに1000万人以上の成人が血糖値スパイクを生じている可能性があるというから、決して他人事ではない。