「逃げ恥」恋ダンスは、北朝鮮の律動体操っぽい【大ヒットの法則】

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 ドラマ『逃げ恥』こと『逃げるは恥だが役に立つ』の勢いが止まりません。先月29日放送の第8話の視聴率が16.1%と、番組史上最高をマーク。一部では“ガッキー(新垣結衣)がカワイイだけのドラマ”と言われていますが、それ以上の人気なのではないでしょうか。

 このブームに一役買っているのが、共演の星野源が歌うエンディング曲「恋」。ガッキーをはじめ、ドラマ出演者が披露するダンスが社会現象となっているのです。フィギュアスケートの羽生結弦選手も踊っていましたね。

◆実はスゴ腕を揃えている、「恋」のバンド

 そこで改めて「恋」を聴くと、音楽好きにはやたらタイトな演奏が嬉しい。MVを観て気付いた人もいると思いますが、バンドの豪華なこと。

 ベースは山下達郎からも絶賛されるハマ・オカモト。ギターの浮雲こと長岡亮介は椎名林檎などとも共演経験のあるスゴ腕。そしてドラムスには、桑田佳祐のツアーにも参加した大ベテラン河村智康の姿が。

 星野源による詞やメロディはおっとりとした歌謡曲テイストなのですが、そこに洋楽から多くを学んだ名手の技が加わることで、ハイブリッドなポップスとなる。牧歌的なのにシャープなのです。ありそうでなかった感覚で、楽曲の良し悪しはさておき、Jポップを別の段階に押し上げる力になりそうです。

◆決まりどおり手足を動かせば、みんな踊れる

 こうした楽しみとは別に、例の踊りに目を向けると実によく練られた振り付けだと分かります。つまり「恋ダンス」はカラダ全体を大きく躍動させるダンスではなく、手足のフォーメーションを細かく変化させていくお遊戯に近いのです。

 観ている人に何かを訴えかける舞踊ではなく、北朝鮮の律動体操のように内側へパーツを折りたたんでいく、ただの動きなのですね。
※律動体操…1990年代に金日成総書記(当時)が製作・推進したとされる。ダンス風でありながら、リズム感不要で全人民が踊れる点も「恋ダンス」と共通する

https://youtu.be/P0AgKK0t-HI

 これに応える演奏もシャレている。たとえば歌が終わった途中で入る、ギターのフレーズ(下の動画 https://youtu.be/jhOVibLEDhA)。ものすごく細々と素早い動きを繰り返すだけで、その音の並び自体にメッセージはありません。だけど、“ぱらっぱっぱらっぱっぱ”と口ずみたくなる音色がワケもなく楽しい。

◆いい意味で“魂が抜けている”

 楽曲としての「恋」と「逃げ恥ダンス」の動きからは、どちらも良い意味で“魂”が抜けているのです。これが人の心にすんなり入りこむ理由なのでしょう。

 音楽好きからすればハイレベルな演奏が楽しめ、それ以外の人はトリッキーな振り付けがきっかけとなる星野源の「恋」。この構図、どこかであったような……。

 そう、BABYMETAL(ベビーメタル)とよく似ているのですね。音楽では複雑な実験をする反面、目に見えるプレゼン方法は至ってシンプル。“なんでこんなのが流行ってるんだろう?”と思われるぐらいが、実は懐が深いのかもしれません。

 と言いつつ、やっぱガッキーがカワイイだけかもなぁと思ったりして。

※BABYMETAL=2010年に結成。ベテランミュージシャンによる本格的なメタルサウンドと、アイドル3人の歌・踊りという意外性がウケて大ヒット。星野源と同じアミューズ所属

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>