金正恩氏

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北朝鮮では今年も、粛清の嵐が吹き荒れた。

韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は10月19日、国会情報委員会の国政監査で、北朝鮮の金正恩党委員長がしばらく自制していた粛正を再開し、今年は9月までに64人が公開処刑されたと明らかにした。2011年12月に正恩氏が最高指導者になって以降では、処刑された朝鮮労働党、政府、朝鮮人民軍の幹部の数は100人以上に達するという。

人間をミンチに

一方、聯合ニュースは8月、北朝鮮内部の消息筋からの情報として、公開処刑のいくつかの事例について報じた。

それによると、北朝鮮当局は今年2月初旬、脱北者の家族やブローカー数十人を「スパイ」の罪で処刑。4月にも中朝国境の街である両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)で脱北ブローカー約10人を銃殺した。恵山では同じ時期、韓国の映画やドラマなどを視聴した住民数人を銃殺し、7月には江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)などで違法薬物を使用した住民や売人など約10人を処刑したという。

また、聯合は言及していないが、4月に中国で発生した北朝鮮レストラン従業員らの集団脱北を巡っても、公開処刑が行われたとの情報がある。

金正恩体制による公開処刑の情報は余りにも頻繁に聞こえてくるので、何ら珍しくない「当たり前のこと」のように感じられるほどだ。

しかし、感覚がマヒしないよう踏みとどまり、情報を分析してみると、最近になってからのいくつかの特徴が見て取れる。

ひとつは、金正恩体制が庶民に対して容赦なく牙をむいていることだ。正恩氏の叔父である張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長の処刑や、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)前人民武力部長を「ミンチ」にするような残忍な方法で殺した件は、権力闘争の一環だったと見ることもできる。

だが、外国のドラマを観ただけの庶民を銃殺するとは、あまりに残忍すぎる。また、銃殺まではされずとも、拷問や投獄などの虐待を受けている人の数ははるかに多いだろう。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

もうひとつの特徴は、正恩氏が抱えるコンプレックスが垣間見えることだ。

国情院は、「金正恩氏が残忍な粛正を続ける理由は、その多くが『無視されたから』だった」 「忠誠心の表し方が期待外れだったり、一部幹部の傲慢な態度などが28歳で権力を握った金正恩氏の『年齢コンプレックス』を刺激したようだ」と分析している。

ちなみに、韓国語で言う「無視する」という言葉には、日本語と同じように「シカトする」との意味があるのと同時に、「バカにする」「軽く見る」との意味もある。

いずれにしても、正恩氏が「自尊心が傷ついた」と感じる場面が多くあったのかもしれない。

しかし、このように手を血で汚してしまった人物が、国家の指導者として成長することはできない。指導者には国民の支持が必要だが、恐怖をもって本物の忠誠心を得ることはできないからだ。

正恩氏は、自分の手で自分の未来を閉ざしているも同然なのだ。