ドナルド・トランプ次期米大統領とメラニア夫人(The New York Times/アフロ)

写真拡大

 来年1月に発足する次期米政権の主要閣僚人事などで連日、ドナルド・トランプ次期米大統領の動静が報じられているが、このところめっきり影が薄くなっているのが、次期ファーストレディのメラニア夫人の存在だ。

 遊説期間中の集会やテレビ討論、あるいは当選時の勝利集会などで、トランプ氏と微笑んだり、手をつないだり、抱き合ったりと仲睦まじい様子が頻繁に報じられていたが、このところぱったりと姿を見せなくなったからだ。

 しかも、トランプ氏と安倍晋三首相のニューヨークの自宅での非公式会談には、メラニア夫人ではなくて、長女のイバンカ氏と夫のクシュナー氏が登場し、ファーストレディ役をイバンカ氏にとられた格好だ。さらに、メラニア氏はトランプ氏の大統領就任後も長男バロン君の通学のため、ニューヨークの自宅にとどまり、当面はホワイトハウスに移らないようだ。まるで、トランプ氏の“メラニア夫人隠し”といった様相を呈している。

 実はメラニア夫人には、いくつもの「ファーストレディに不適格」な理由が取りざたされているのだ。

●高級コールガール説

 まず、もっともスキャンダラスな理由は、ずばり「高級コールガール説」だ。英紙デイリー・メールが今年8月、メラニア夫人の出身国スロベニアの雑誌報道を引用するかたちで、メラニア夫人が1990年代に所属していたニューヨークのモデル事務所が、富裕層向けの性的サービスを提供していたとする噂を報じたものだ。

 これに対して、メラニア夫人側は「報道内容は100パーセント事実に反する」として、同紙などに1億5000万ドル(約170億円)の賠償を求める訴えを起こした。同紙はこの記事を取り消している。

 メラニア夫人は1970年4月26日、当時のユーゴスラビア生まれで46歳。その後、同国は民族間の紛争により内戦状態になり、メラニア夫人の生まれ故郷は現在、スロベニアとして独立。メラニア夫人がウェブサイト上で発表した学歴では、スロベニアのリュブリャナ大学で建築学の学位を取得したとなっている。その後、メラニア夫人は20代の90年代半ばに渡米し、その美貌を生かして、ニューヨークのモデル事務所に所属していた。この高級コールガール説は、所属事務所が富裕者向けの性的サービスを提供したとの情報が独り歩きしたものとみられる。

 実は、高級コールガール説が流れる背景には、きっかけがあった。メラニア夫人が25歳だった当時の95年、メラニアさんと北欧の女性モデルがともに全裸で、ベッドの上で抱き合っている写真がフランスの男性誌に掲載されたことがあるからだ。この写真が大衆紙ニューヨーク・ポストで報じられた。

 トランプ氏は写真について、「メラニアは最高に美しいモデルだ。欧州ではこのような写真は非常にファッショナブルで常識的だ」などとコメントしている。

 メラニア夫人は98年、トランプ氏とパーティーで知り合い、05年1月に結婚。これを機にメラニア夫人はモデルを辞め、翌年には米国籍(市民権)を取得し、良妻賢母を演じてきた。

●不法就労疑惑

 だが、トランプ氏が米共和党の次期大統領候補に決まるころから、メラニア夫人に関する良からぬ噂話が報道され、そのなかには高級コールガール説などファーストレディとしての資質を疑われるような情報もあった。

 追い打ちをかけるように、今年8月には、メラニア夫人が米市民権を取得する前にモデルとして不法就労していたとの疑惑が報じられた。米政治サイト「ポリティコ」の報道では、初めて渡米した際に受けた滞在許可には労働は含まれておらず、入国管理局に虚偽の申請を行っていたのではないかというものだ。

 メラニア夫人は「事実関係をはっきりさせておきます。私は過去に入国管理法に抵触したことは一切ありません」との声明を発表し疑惑を否定している。トランプ氏は「米国へのあらゆる不法入国を一掃する」ことを公約として、前面に押し出して選挙運動を展開してきたことから、疑惑を認めるわけにはいかないだろう。

 さらに、学歴詐称の疑惑も浮上している。さきに紹介したように、メラニア夫人はスロベニアのリュブリャナ大学で建築学の学位を取得したことになっているが、実は1年で中退していたというものだ。

 これに対して、メラニア夫人側は問題のウェブサイトを閉鎖する行動に出た。メラニア夫人はツイッター上で「問題のサイトは2012年に開設されたもので、自分の現在の事業や関心を正しく反映していなかったので閉鎖した」と釈明している。

●演説盗用疑惑
 
 また、メラニア夫人が共和党の次期大統領候補を決める同党全国大会で行ったトランプ氏への応援演説の内容が、ミシェル・オバマ大統領夫人の演説内容と酷似しており、ミシェル夫人の演説を盗用したのではないかとの疑惑が持ち上がったのも、記憶に新しい。さすがのメラニア夫人も、この疑惑についてはだんまりを決めこみ、沈黙を守っていた。その代わりに、演説の草稿を書いたトランプ氏の側近が非を認め、辞意を表明したものの、慰留されており、トランプ陣営は疑惑を認めたかたちだ。

 トランプ氏も米大統領としての資質を疑問視されている向きもあるが、メラニア夫人の「演説盗用」や「学歴詐称疑惑」、さらに「不法就労疑惑」といった3つの疑惑はわずか3週間のうちに相次いで報じられており、高級コールガール説やヌード写真も合わせると、「アメリカのファーストレディとして、国際舞台で活躍できるような資質が欠如しており、不適格」というのはいい過ぎであろうか。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)