共同開発したネスレヘルスサイエンスの中島昭広氏(右)とマルコメの小川浩司氏

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栄養補助食品メーカー・ネスレヘルスサイエンスと、みそ食品メーカー・マルコメは、高齢者でも安心して飲める「とろみ付き」即席みそ汁を共同開発した。

背景には、医療・介護食として用いられる「とろみ食」を、自宅で誰でも簡単に、おいしく作れるようにしたいという思いがある。

汁物が気道に入ると深刻な病気につながる

「とろみ生活 料亭の味」は、おわんに入れてお湯を注ぐだけで、とろとろのみそ汁が出来上がる。ペーストよりは液体に近い。30年以上続くマルコメのみそ商品「料亭の味」をベースにしており、赤みその風味と、かつおだし、昆布だしがブレンドされた口当たりの良さが特長だ。

とろみをつけたのは、高齢者を中心に飲み込む力が弱まっている人でも安心して飲めるようにするためだという。記者が実際に食べてみた。確かに、口に含んでみると、ひとかたまりのまま比較的弱い力で飲み込んでもスムーズにのどを通っていく。うっかりむせてしまうといった心配は少なそうだ。

ネスレヘルスサイエンスのカンパニー・プレジデント、中島昭広氏は2016年11月29日の新商品発表会でこう説明した。飲み込む力が弱まると、汁物のように流動性の高いものを食道ではなく誤って気道に入れてしまう「嚥下(えんげ)障害」になる可能性が上がる。これが「誤嚥(ごえん)性肺炎」の原因になり、最悪の場合死に至る。

日本人の肺炎の死者数は1980年ごろから増加を続け、2011年には脳卒中を抜いて3番目の多さになった。さらに中島氏が示したデータによると、肺炎患者に占める誤嚥性肺炎患者の割合は、年齢が上がるほど高くなる。50代は25%ほどだが、60代で5割、70代は7割、80代は8割にのぼる。

嚥下障害で恐いのは肺炎に限らない。「十分に食事ができないと栄養が足りなくなるため、免疫力や筋肉量が落ちる『負のスパイラル』に陥る」(中島氏)という。

家庭では毎回同じとろみを付けるのが難しい

嚥下障害になると一般的に、飲料や液状の食品にはとろみをつけて飲み込みやすくする。病院や介護施設では嚥下調整食が提供されるが、家庭では粉末状の「とろみ調整食品」を混ぜてとろみ付けする。ところが、中島氏によると「みそ汁の場合、使うみその量が毎回微妙に異なるため、いつも同じとろみを付けるのが難しく、勘や経験で作られる場合が多い」。とろみ調整食品を使う場合も、「入れてからしばらく放置しないと全体にとろみが付かない」ため、時間がかかってしまう。

そこで、ネスレヘルスサイエンスの技術を活用し、誰が作っても簡単に一定のとろみになる即席みそ汁の開発を企画した。商品は、おいしくなければ食べてもらえないという考えから味の良さも追求し、みそメーカーの代表格であるマルコメに協力を求めた。マルコメのマーケティング本部長・小川浩司氏は、開発の話を聞いた時「みそ汁を飲みたくても飲めなかった方々の役に立てるなら」と快諾したと明かす。

新商品は2016年11月30日の「いいみその日」に、まず病院や介護施設向けに発売された。17年3月から全国のスーパーでも販売される予定だ。