留学や仕事でせっかく北京に来ても、「中国人の友達がなかなかできない」、「定番の中華料理ばかりで、もっとディープな中国を知りたい」という人は多いのではないだろうか。

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留学や仕事でせっかく北京に来ても、「中国人の友達がなかなかできない」、「定番の中華料理ばかりで、もっとディープな中国を知りたい」という人は多いのではないだろうか。今回は人民大学卒業後、仕事の傍ら食や文化に関する日中交流イベントを自ら企画・運営している馬鴻志さんをご紹介したい。(北京滞在歴8年)

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馬さんが初めて中国に訪れたのは、北京オリンピックが開催された2008年。日中ハーフの彼は中国人の父親の姓を名乗っているが、生まれも育ちも日本で、以前は中国語が全くできなかったという。そんな矛盾から決意した中国留学。1年間の語学留学で中国に魅了された彼は北京の人民大学に進学して4年間国際政治を学び、在学中から積極的に中国人学生や留学生たちとの交流をはかったという。卒業後は、仕事との兼ね合いもあり、なかなか新しい友人との出会いがなかったり、日本から友人が遊びに来て、もっとディープな中国を知ってほしいと思いながらも、結局は北京ダッグや火鍋のような定番の場所に案内するという日々だったという。

そんな現状を打破しようと馬さんが考えたのが「友人の輪を広げていくことで、新たな情報を入手する」というもの。第1回目の「食べ会(中国語名:吃会)」は友人に友人を紹介してもらう形で開催。その後も中国で広く使われているSNSの微信(WeChat)を活用し、新たに加わったメンバーからさらに友人を紹介してもらい「食べ会」の輪を広めている。参加メンバーは国別で中国人が7割、日本人が2割、その他の国が1割程度だという。

現在「食べ会」は毎週1回のペースですでに30回以上開催されており、リピーターも少なくない。大勢で円卓を囲んで食べるカジュアルなスタイルのため、参加者側にとっても参加のハードルは比較的低い。

日本語教室で馬さんと知り合い、食べ会に誘われたという華さん(ペンネーム)は、今回で参加は3回目。食べ会に参加してよかった点は「今まではあまり関わりを持てなかった性別や年齢、国籍が異なる様々な人たちと楽しく食事をしながら、異文化交流ができること。それに、美味しいものも食べられるのがとてもうれしい」ことだという。

また最も印象深かった点は「食べ会に参加した時、馬さんが広い交友関係を持ち、さらにそれを広げようと様々なイベントを企画していることにとても感銘を受けた。」そして、華さんもこれをきっかけに色々な人と交友関係を持ちたいと思ったそうだ。このように交流の輪が広がっていくところを目の当たりにできるのもこの食べ会の魅力のようだ。

また食べ会以外にも、馬さんは月に一度「日本文化サロン」を開いている。日本文化に興味のある中国人向けに、普通の日本語教室では教えないようなディープな日本文化を紹介する会だ。

今回のテーマは「日本のお酒」。参加者たちは「木苺(きいちご)」や「口噛み酒(くちかみさけ)」などあまり耳慣れない単語を馬さんに続いて復唱し、積極的に学ぼうとしていた。特に日本酒のラベルの見方に関する説明は、日本旅行へ行った時の参考にするのか、たくさんの質問が飛び交った。休憩時間には日本酒と軽食を提供し、試飲体験を行うという内容の充実さに参加者も非常に満足した様子。日本語を習い始めたばかりの参加者はもちろん、日本に留学経験があり、日本文化をさらに深く知りたいという参加者にとっても、有意義な活動と評判だ。馬さんは「このサロンを通じて、外国から伝わった文化を独自の形として進化させることができる日本の良い点を知ってほしい」とその目的を語ってくれた。

こうして人の輪を広めている馬さんだが、ハーフゆえの葛藤が無いわけではない。「国籍はどこなの?」「なぜもう一つの国の言葉をネイティブレベルで話せないの?」。「ハーフ」や「クォーター」、「帰化者」は周囲からのこうした質問に対し、反応に困った経験が少なからずあるのではないだろうか?

馬さんも中国人の父親の姓を名乗っているが、生まれた時から日本で暮らしているため、留学前は中国語を話すことができなかった。周囲からは「中国人じゃないの?」、「(中国人の姓なのに)なぜ中国語を話せないの?」といった質問を何度もされるたびに相手が自分以上に自分の国籍にこだわっていることを窮屈に感じたという。

留学して様々な国や生い立ちの人々と出会い、欧米諸国などでは国籍にそこまでこだわらないことが見えてきたと馬さん。ハーフが大半を占める欧米などでは、ハーフでも周囲からどちらか一つの国籍を「強制的」に選択させられるようなことがないからだ。それに比べるとアジアでは国籍にややこだわる傾向があるというのが馬さんの見解だ。仕事や交流をする際、周囲はどうしても「日本人としての自分」を求めてくるため、敢えてそれを表に出して行動することもあるという。

アジアでは「アイデンティティが沢山ある人」を受け入れることにやや抵抗感があるため、「どちらか一方」にこだわりたいのかもしれない。中国で日本を紹介する。ハーフという二つの国にルーツがあるというを強みを生かして交流の輪を広げる馬さん。食べ会ではより多くの人々に情報を発信できる方法として、SNSの公式アカウント開設を進めている。また日本文化サロンでも、今後も様々な日本文化を紹介していく計画だ。次回のテーマは日本の「祭り」を予定。食べ会も文化サロンも、日本に行きたくなるようなイベントを目指し、今後さらにこの活動の輪を広げ、さらに規模を大きくしていきたいという。(提供/人民網日本語版・洪東実)