今夜9時より日本テレビ系列「金曜ロードShow! 」で放送される映画「ハリーポッター 秘密の部屋」(2002年)、先週のシリーズ一作目「ハリーポッターと賢者の石」(レビュー) から続く第二作目である。
今後、敵との戦いは激化し、どんどんシリアスになっていく。「秘密の部屋」は、よくも悪くも、これぞ、THEハリーポッター。学園生活を軸とした「部屋(秘密の)と魔法と私(ハリー)」。そんな平松愛理的な回の見どころを探ってみた。


カットシーンを予想する


時間に制約のあるテレビ放送では宿命のシーンカット。なにせオリジナルではシリーズでもぶっちぎりの176分、本来なら2週にわけても放送できるほど超大作。ノーカットで放送するには総CM時間を30分としても、日付またいで0時半までかかってしまう(23時24分までだった前回放送でも50分ほどカットされていた)。
どう編集されるかは毎回気になるところ。予想してみた。

●ロンの家の暖炉の中でフルーパウダーを使って「ダイニャゴ横丁」に間違ってワープするくだり。

●またしてもハリーの割れた眼鏡を前回同様ハーマイオニーが「オキュラス・レパロ」で直すくだり。

●ウィーズリー家の車が暴れ柳に、クレージゴンのように破壊されるくだり。(この際にロンの杖が折れてます!)

●マンドレイクの叫び声で、ミスター被害者ことネビル・ロングボトムがぶっ倒れたり、ドラコが指を噛まれるくだり。

●ハグリッドの家にて、ナメクジを吐くロンや、ヘイトスピーチを受けたハーマイオニーの「ロンハー」コンビが励ましてもらうくだり。

●ダンブルドアの部屋に行くための階段が現れる厳かなシーンの呪文がなぜか「レモンキャンデー」で、若干「?」な気持ちになるくだり。

●石化から戻ったハーマイオニーが、ハリーに躊躇なく抱きつき、しかしロンには抱きつかず、これはどっちが本命だ?と わたしが邪推しちゃうくだり。

放映後、DVDなどで確認すると2度美楽しめます。

いつものダーズリー家のシーンからスタート


「男はつらいよ」冒頭の寅次郎の夢のシーンのようなもの、あるいは「ドリフ大爆笑」の、長さんの語りの様なもの(本編とは関係なく見ても見なくてもいい)そう思っていた。
若いころは、早く「魔法」とか出てこいよと思っていたのだが、40を超えたあたりから、このシーンが味わい深くて仕方がない。

バーノン・ダーズリーおじさんは、「魔法」を使うハリーをはじめ、非日常的なものを決して認めようとせず、強く憎んでいる。だが決してハリーを追い出したりはしない。なんなら、悪しき魔法から守るために、絶海の、まるで「沖ノ鳥島」のような岩礁だけの孤島に家族全員で引っ越してまで、ハリーを「魔法」から遠ざける。映画では一度だったが、原作では何度も引っ越す。

結局さまざまな方法でハリーは家から脱出し、なんやかんやホグワーツにたどり着き、暴れて、おさめて、学期末には、また家に戻ってきている。双方のメンタルのためにはもう戻らなければいいのにと思ってしまうが(肉親の元にいた方がいい理由はのちに語られるのだが)、映画の冒頭はいつもダーズリー家のドタバタからだ。ここだけいつか「よしもと新喜劇」で舞台化して欲しい。ハリーがホグワーツに旅立ってしまった後、日常に戻って案外寂しそうな3人目線の普段の生活も観てみたい。

大統領に似すぎのクリーチャー


「秘密の部屋」初登場のドビー。このクリーチャー、既視感を感じるのではないだろうか。そうです。まもなく来日するロシアのプーチン大統領です。

イギリスBBC放送で、似てるか似てないかの投票を行った結果、似てるが過半数を越え、ロシア側の弁護士グループが訴える準備を進めていると一時噂されたほど。
前に、14才の頃の少年プーチンにネットで出会ったことがあるが、実に似ていた。次はピーター・バラカンに訴えられないように気をつけていただきたい。

何の恨みもないのに、見ているだけでいらついてしまうドビー。
かっこいい見せ場もあるし、のちに欠かせない存在になるのだが、とにかくイライラする。
「スター・ウォーズ」でいうところの「ジャージャービンクス」なのだが、彼がただのドジで、不人気なりにムードメーカーなのに対して、ドビーは全てを良かれと思ってやっている、確固たる信念をがある。善意の押し売りキャラ。バカに刃物、ドビーに信念だ。そして失敗すると派手目の自傷行為で暴れ、かまってほしがる。
だが、なぜか人気も高い。ある意味シリーズ1の問題児だ。

サザエさんパートを見逃すな


地上波の魅力といえばもちろん吹き替え版での放送。主役の子どもたちと近い年齢の声優陣でういういしい芝居を観せて(聴かせて)くれるぶん、脇をかためる声は実に豪華だ。

ダンブルドア校長を演じるリチャード・ハリスは今作が遺作となった。中の人・永井一郎も2014年に亡くなった。永井一郎といえば「サザエさん」の磯野波平でおなじみ。そして今作では「波平とフネ」のやりとりが一瞬だけ蘇るのだ。医務室の校医、マダム・ポンフリー演じるのが麻生美代子なのだから。オールドサザエさんファンにはたまらない絡みが一瞬観られるはずだ(おそらく21:55〜22:00あたり)。磯野夫婦がポリジュース薬を飲んで演じていると思い込んで観よう。

ちなみに変身上手なマクゴナガル先生はムーミンママ(「楽しいムーミン一家」)の谷育子だ。

女子トイレで暮らす幽霊実写版「トイレの花子さん」こと、なげきのマートル。耳に残るその声は、「となりのトトロ」のメイちゃんでお馴染み坂本千夏。「少年アシベ」や、懐かしいところでは「グーニーズ」のチャンクもこの人だ。

マートルの外側の女優(シャーリー・ヘンダーソン)は撮影当時35を過ぎてて、ハリーたちの倍の年齢。人間はシリーズごとに歳をとってもおかしくないが、幽霊が成長してはまずい。改めてシャーリーの若さに驚く。

本作のキーマンとなるトム・リドル。イケボ垂れ流しのその声は石田彰、「エヴァ」の渚カヲルくんだ。5thチルドレン丸出しなその存在感で、登場した瞬間から只者じゃない感を撒き散らして、終盤を締める。

ハリーを目の敵にする学校の管理人ミスター・フィリチ。今回も飼い猫のミセス・ノリチ(ネーミングセンス!)を殺されたと思い込み、ハリーをなじりまくる。その声は、悟飯を守るピッコロ大魔王そのもの。2010年に亡くなってしまった名優青野武だ。

関係性はドラえもん?


たよりなくてダメ男のロン・ウィーズリー、かわいくて成績優秀のハーマイオニー・グレンジャー、そして伝説の男ハリー・ポッター。さらに金や家柄を駆使して嫌がらせをするドラコ・マルフォィ。
この関係、なにか落ち着くと思ったら「ドラえもん」の黄金パターンなのである。

ドジで失敗ばかりのロンはのび太、ハーマイオニーはもちろんしずかちゃん、強いだけじゃなくて、誰よりも「のび太」をわかってくれてる自慢の友人ハリーが、さしずめドラえもんだ。いやみなドラコはもちろんスネ夫で、ジャイアンが不在であるが、ドラコのいいなりで図体がでかいけどかなり抜けてる手下のクラップとゴイルは、口をぽかんと開け、スネ夫のしもべのようだった、やたら凶暴化する前の初期ジャイアンを思わせる。

前作「賢者の石」の終盤、ここ一番というところで、チェスの大勝負を仕掛け、見事敵を撃破するロン名人は、射撃に秀でる早撃ちのび太を思わせるかっこよさであった。

一度でいいから、「ドラえもん」声優陣(できたらレジェンドメンバー)での吹き替えを観てみたかった。

愛すべき悪役たち


さきほどのダーズリー家のバーノンおじさんや、学校の管理人ミスター・フィリチ、そしてドラコ・マルフォイなど、とにかくハリーを嫌うひとは多い。ハリー自体に問題があるのではないかと、うがった見方をしてしまいそうなほどだ。しかし、憎々しげに発せられる彼らセリフは面白い。

「今度音を立てて見ろ? 生まれたことを後悔させてやる!」

ダーズリー家の長であるバーノンおじさんが、物音を立てるハリーを叱る時に言った一言。いくら大切な取引先との商談中とはいえ、肉親である12歳の甥に向かって言っていい言葉ではない。神谷明が言えばまんまケンシロウだ。

「学校で会おう」

父親のルシウス・マルフォイが本物の悪人感を強く出しつつ「おたくは落ちるところまで落ちたと思ったがねえ……役所でまたいずれな」とロンの父親を脅して帰ったあとに、ドラ息子ドラコが出せる範囲のせいいっぱいの悪人顔でハリーを脅したつもりのセリフ。ルシウスの発した本物のドス黒い雰囲気が、突然、ただの子供の挨拶になる落差がたまりません。

「字が読めたのか?」

「なぜメガネをかけてるんだ?」と怪しまれ、「本を読んでたんだ」とごまかす、子分のゴイル(実はハリーが薬で化けている)に向かって、ドラコ・マルフォイが率直に疑問を呈した一言。素直に笑いつつも、なぜここまで蔑んでくるチビに付き従わなけりゃいけないんだ、グレゴリー・ゴイルよ? と思ってしまうシーン。薬で気絶してるはずの本人を思うと健気すぎて泣けます。

ちなみにこのゴイル役のジョシュア・ハードマンは現在ムキムキの総合格闘家になっている。今ならきっとドラコの首を決めて、簡単に落とせるはず。

「現行犯だな」

廊下で倒れている生徒をたまたま発見したハリーがいるところに、これまたたまたま現れたミスター・管理人・フィリチ(この人は現れてほしくない時に必ず現れる。しかもわりとすぐに)が、その状況を一目見て1秒で発した一言。そもそもの決めつけもひどいし、まったくもって「現行犯」にも当たらない。この時の殺したいほどの憎悪の炎は、下手したら宿敵ヴォルデモートよりも強いのではないか?

ハーマイオニーは世界一の「美女」に


2002年の公開から14年の時がたち、それぞれが大人となり活躍中の元・子役たち。

すっかり、ただの美女と化した「その後の一人勝ち」ハーマイオニーことエマ・ワトソンは、撮影中はドラコ役のトム・フェルトンが初恋の人で片思いであったと、後に語っている。あれだけ「穢れた血」だとドラコに罵られていたのに……。テラスハウスで純情な関係をカメラ前で見せていた人たちが、カメラ裏ではヨロシクやってたっていうアレみたいだ。

「スター・ウォーズ」のキャリー・フィッシャー(レイア姫)とハリソン・フォード(ハンソロ)も不倫関係だったとキャリーが暴露してた。ゴシップを知ってから作品を観るとちょっとしたもやもやが楽しめる。

エマ・ワトソンは、来春に「美女と野獣」の実写版の公開をひかえ、名実ともに「美女」に。先日も予告動画の再生数が世界記録を樹立したばかり。

何をやっても失敗するが後に劇的に成長する「もう一人ののび太」ことネビル・ロングボトムを演じたマシュー・ルイスが、ドラコに負けないくらい最近イケメンになっていたり、ハリーの声優・小野賢章がこの作品の後、声変わりを迎え苦労してたり。
公開時の2002年は、外の人も中の人も、まだあどけなかった。2016年の暮、いろんな角度で味わい尽くしたい、
(アライユキコ)