写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●ウイルス付着場所への接触が危険な感染源
冬になると、「感染性胃腸炎」や「ノロウイルス」というフレーズを一度は耳にしたことがある人もいるのではないだろうか。感染性胃腸炎は毎年、インフルエンザにやや先んじて流行する感染症なのだが、インフルエンザに負けずとも劣らないほどの脅威を秘めている。

本稿では、千駄ヶ谷インターナショナルクリニックの院長・篠塚規医師の解説を元に、ノロウイルス由来の感染性腸炎の原因や症状などを紹介する。

○ウイルス感染から数時間で発症する場合も

感染性胃腸炎はウイルスや細菌などの病原体が原因となり、さまざまな消化器症状を引き起こす感染症。細菌は「黄色ブドウ球菌」「カンピロバクター」「サルモネラ菌」が、ウイルスは「ノロウイルス」「ロタウイルス」がそれぞれ主な原因だ。

症状としては下痢やおう吐、腹痛、発熱(微熱)などがある。細菌由来の胃腸炎(食中毒)は主に夏場に発生している一方で、ノロウイルス由来の胃腸炎は通年で起こりうるが、特に毎年冬季に流行している。ロタウイルスは乳幼児(特に1歳以下)でみられるが、ノロウイルスは年代を問わずに発症する。

「ノロウイルスによる感染性胃腸炎は症状が激しく、何の前触れもなくいきなり吐くことがあります。また、ウイルスの体内での潜伏期間(感染から発症までの時間)も短いです。入ったウイルスの量と宿主(感染者)の抵抗力も関係してきますが、通常は24〜48時間で発症して早い人ならば数時間程度で症状が出始めます」。

おう吐や下痢などのつらい症状が1〜2日続くと、その後は快方に向かうのが一般的。突然訪れ、甚大な被害を与えるがすぐに消え去る――。ノロウイルスによる感染性胃腸炎の所業は、まるで竜巻のようだ。

○主な感染パターン

潜伏&発症期間の短さのほか、「感染力の強さ」もノロウイルスの特筆すべき特徴に挙げられる。感染経路の大半は経口感染で、主なパターンを以下にまとめた。

■ノロウイルスが大量に含まれるふん便・吐しゃ物……感染者の吐しゃ物やふん便を片付ける際、爪の間などにウイルスが入り込み、その手で食事をすることなどによって感染する。篠塚医師は「おう吐物などを処理する際は必ず使い捨てタイプの手袋を着用し、処理した物はビニール袋などで密封して捨てるようにしてください」と助言を送る。

■飛沫(ひまつ)やウイルスが付着した物(場所)……感染者のくしゃみなどで飛沫が飛んできたり、ウイルスが付着した机やドアノブ、床などを触ったりと、直接的・間接的にウイルスに接触することで感染するケースも多い。特に後者は人を介さず、知らないうちにウイルスに接触している可能性が高いため、症例としても多いのではないかと篠塚医師は推測している。

■食品取扱者や食材そのもの……飲食店などで調理をする人が感染していた場合、その人が触れた食材もノロウイルスに汚染されることになる。また、食品そのものでは二枚貝や井戸水などがウイルスに汚染されていたケースが明らかになっている。これらの飲食物を口にしても当然、発病につながる。

●旅行中のノロウイルスが脅威な理由
篠塚医師は旅行医学にも精通しているが、旅行時に利用する飛行機や船といった移動手段は人が多いうえに空間が限定されているため、感染性胃腸炎患者が爆発的に増加しやすいと警鐘を鳴らす。

例えば、飛行機内でノロウイルスが原因で吐いた人がいたとしよう。その周辺にいた人の手には、目に見えないサイズの飛沫が飛び散り、その手で機内食のパンを食べれば当然、体内にウイルスが入り込んでしまう。

「ノロウイルスはクルーズ船で集団発生すると昔から有名です。食材や調理する人、給仕する人がウイルスを保有しているなどし、船内で大量発生します。クルーズ船内だとウイルスからの逃げ場がないですよね。さらに人が行く場所も食堂や船医室、船内のミニバーとかに限られてくるので、そういった場所で感染が広がってしまうんですね」。

実際に千駄ヶ谷インターナショナルクリニックには、同じ船に乗り合わせた複数の患者が感染性胃腸炎を主訴として訪れることが多いという。

○子どもからの家庭内感染に注意

そのほかでよく見られる感染のパターンは、「集団生活の場での感染し、家庭内で二次感染させる」というもの。例えば、保育園や小学校などの場で子どもがノロウイルスに感染し、そのウイルスを家族へとうつしてしまうケースが想定される。

「保育園や小学校では子ども同士で一緒に遊ぶなど、社会人に比べて体を接触させることも多いでしょうから、ウイルスが感染しやすいと考えられます」と篠塚医師は話す。そして子から親へ、その親から大人同士が集う会社へと感染が拡大する恐れがある。

家庭内での二次感染を防ぐため、感染性胃腸炎と思(おぼ)しき症状を家族が呈していた場合は「吐しゃ物やふん便を流すトイレの掃除をきちんとする」「使用するタオルを別にする」「感染者にはお風呂に最後に入ってもらい、使用後は念入りに浴槽などを洗う」といった行動をとるようにしたい。

※写真と本文は関係ありません

○記事監修: 篠塚規(しのづか ただし)

千駄ヶ谷インターナショナルクリニックの院長。千葉大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学医学部勤務、医療法人社団松弘会三愛病院副院長・外科部長を務めた後、日本旅行医学会を設立。2013年5月 WHOの「INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH(ITH)」の編集会議に編集委員として参加するなど、日本における旅行医学の第一人者として活躍する。

(栗田智久)