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エボラやマラリアのように大きなニュースにはならないものの、寄生虫や細菌などによる病気「NTD」は10億人以上に感染しており、患者や周辺のコミュニティーは貧しい生活を余儀なくされていると言われます。ビル・ゲイツも撲滅のために取り組んでいるというNTDとは一体何なのか?ということについて、わかりやすい解説ムービーがYouTubeで公開されています。

The Most Gruesome Parasites - NTDs Explained - YouTube

1014年、ビザンツ皇帝のバシレイオス2世はブルガリアの兵士1万5000人を捕虜にしました。



バシレイオス2世は捕虜を殺すことができましたが、あえてその選択をしませんでした。それは寛大さからではなく、「敵対国をこれから数十年にわたって弱体化させるアイデア」を考えついたため。



ヴァシーリー2世は100人の捕虜のうち99人の両目をつぶし、盲人状態にしました。



100人のうち残り1人は片目だけつぶされ……



あとの99人を率いてブルガリアに戻されました。



このことによって、多くの兵士たちが残りの人生を盲人として過ごすことになり、周囲の人間やコミュニティは数十年にわたって彼らのケアを行うことになったわけです。



2016年現在、ヴァシーリー2世と同じことをやっているのが「NTD」です。



地球上の人間のうち、7人に1人がNTDに苦しめられています。



これはヨーロッパ全体の人口よりも多い数です。



NTDは個人を肉体的に苦しめるに留まらず、毎年10億ドル以上の人々の収入を奪い、コミュニティを弱体化させ、社会の発展を遅くさせます。



まるで映画の中で街をめちゃめちゃに破壊するモンスターのような「NTD」とは一体何なのでしょうか?



その答えは「Neglected Tropical Diseases(顧みられない熱帯病)」



NTDは細菌・アメーバ・寄生・ウイルスなどによって引き起こされ、症状はさまざまです。



例えば、鉤虫は本来であれば子どもの脳や体に送られるべき栄養を横取りし、子どもの発育を妨げます。



また、人を失明させるNTDが存在したり……



人を寝たきり状態にさせ、内臓にダメージを与え、寿命を劇的に短くさせるものも存在します。



さらに、NTDによって奇形になることもあり、その場合は精神的なダメージを負ったり見た目を理由として職につけない人もいます。



ではどのようにしてNTDに感染するのか?ということで、ギニア虫症の場合を見てみます。



ギニア虫症は、ギニア虫の幼生に感染したケンミジンコの入った水を飲むことで人に感染しますが、感染した人は感染したという事実に1年ほど気づきません。



しかし、1年たったある日、感染者は自分の下肢に水疱ができていることに気づきます。



成長したギニア虫は水疱を突き破って宿主の体外へ出てきます。



この時点でギニア虫は1メートルほどの長さに成長しており、体外に排出するには数週間かけて1センチずつゆっくりとギニア虫を出していくしかありません。



このようなNTDを2020年までに根絶やしにするため、WHOはさまざまな取り組みを行っています。



その取り組みのおかげで、1985年には全世界で350万件も報告されていたギニア虫症は……



2015年には年間22件の報告だけになりました。



99.999%のギニア虫症が駆逐できたのです。



1つの寄生虫を完全に根絶やしにする日も近いと言えます。



NTDはエボラやマラリア、結核といった感染症のように大きな関心が向けられていないので、ニュースの見出しになることはありませんでしたが、これは非常に大きな出来事です。



さまざまな種類があるNTDですが、共通することが1つだけあります。



それは、「一番近い医療施設から500キロメートル離れていて、施設に向かうための道が整っていない」というような、孤立したコミュニティなど、自分の身を守ることができない人を狙いやすいということ。



この場合、例え治療薬があったとしても、実際に感染症にかかっている人が薬を得ることが難しくなります。



実際のところ、現存する全てのNTDが予防・治療可能ですが、治療を行うには、危険な場所にいる感染者1人1人に投薬していく必要があります。



政府や保健機関だけではインフラが整っていない地域などに薬を届けることができなかったのですが、問題を解決するため、製薬会社13社、アメリカ、イギリス、UAE、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などさまざまな分野の組織が一丸となってNTD撲滅に取り組むことに。NTDを根絶やしにするまで治療薬を無償で配布し続けるという製薬会社も登場しました。



「NTDに関するロンドン宣言」では、2020年までに180億ドルの薬が無償で配られることが約束されました。この額は、薬の寄付額としては過去最大もの。



しかも、ただ薬が寄付されるだけでなく、必要とされているところにちゃんと薬が届けられているかを確認することも忘れられていません。



大規模な取り組みによって2015年だけでも8億5000万人以上の人々が治療を受けられました。これはEUとアメリカの人口を足した数に等しいとのことです。



この種の「いい話」は新聞の見出しにはなりませんが、悪いニュースがあれば、人道や慈悲が生み出すいいニュースも、実は常に生まれているのです。