次世代が集うFIFA U-20女子ワールドカップ準決勝で日本はフランスと対戦し、延長戦の末、1−2で惜敗した。"世界一"を目標に掲げてきたが、決勝への扉を開くことはできなかった。

 ベスト4に進出したのは日本、フランスのほか、北朝鮮とアメリカ。ここまで来れば、どこが勝ち上がってきても必然といっていい。日本の相手となったフランスの両サイドとトップには、勢いに乗らせたら最後と、覚悟を決めなければならない選手がそれぞれいた。日本がやるべきことは"スピードに乗らせない守備"だった。

 準決勝までの4日間、簡単に飛び込まず、パスコースを消す守備を徹底して体に叩き込んだ。その成果はすぐに現れる。フランスの左サイドハーフのレジェにボールが入ると、右サイドの三浦成美と宮川麻都(ともに日テレ・ベレーザ)がプレスをかけて前を向かせない。右の曲者であるカスカリーノは左サイドの長谷川唯(日テレ・ベレーザ)と北川ひかる(浦和レッズL)が請け負った。

 トップの籾木結花(日テレ・ベレーザ)と上野真実(愛媛FC)も前線から絶え間なくプレスをかけ続けた。その動きに引き寄せられるように、ボランチが連動し、日本の真骨頂である"連係"は作られていく。

 ところが、フランスも日本をくまなく研究していた。中盤の素早いチェックはもちろん、日本のゴールを阻むのはCBのシッソコ。171cmの長身を生かした空中戦だけでなく、長いリーチで日本のシュートやラストパスをことごとく掻き出していく。それでも、隙間から裏を取ろうとする籾木の動き出しに合わせて、長谷川があうんの呼吸でシッソコの頭上を越す浮き球を配給するなど、せめぎ合いが続く。

 互いのよさを消し合いながら、そこから生まれるわずかな好機を見逃すまいとする駆け引きがピッチ上には溢れていた。

 日本に大きな誤算が生じたのは29分、フランス陣営に仕掛けていた宮川が接触プレーで右手首を負傷。交代を余儀なくされた。「サッカーではよくあること」と受け止めた高倉麻子監督だったが、宮川はグループステージ第3戦で抜擢されて以降、ようやくフィットしてきた右サイドバックだ。

 宮川がハマったことで右サイドが活性化し、両翼の攻撃力も整っていた。対フランスの守備においても、この4日間で、守備面を受け持つ大部由美コーチが入念に宮川へ落とし込んだ。「不安ばかりだったけど、やっとやれると思えるようになった」と宮川本人が自信を掴んだのは前日練習を終えた後のこと。この交代は宮川だけでなく、チームにとっても手痛い誤算だった。

 さらに59分には、上野もブラジル戦で痛めた右足を再び痛めて交代。この段階で2枚のカードを使うことになってしまう。

 日ごろより、誰が入っても遜色のないチーム力を築いてきた高倉監督。控え選手のコンディションには特に目を配る。メンタル、フィジカルを見極め、控え選手のモチベーションを引き上げてきたからこそ、当初の青写真と異なる展開になろうと、動じることがないのだろう。

 日本は大きく崩れることなくこの局面を切り抜けていたが、ゴールを奪うこともできない。90分を終えてもスコアは動かず。日本は今大会初めての延長戦に足を踏み入れた。

 延長戦に入ると一気に試合が動く。99分、右サイドを駆け上がってきたカスカリーノにマークについたのは北川。しかし、大外からはロマネッリが上がってきており、そこのケアが遅れた隙にクロスを上げられ、マテオに頭で合わされた。ここまで長谷川と北川が抑え込んできた右サイド。この日ただ一度、マークの受け渡しがズレた瞬間をフランスは見逃さなかった。

「ずっとうまくハメていて、特に2番(マロネッリ)は抑えていたのに......」とクロスを上げさせたことに悔しさを隠せない長谷川。しかし、事態はこれで収まらなかった。

 直後、今度は左サイドを破られ、一度はクリアしたもののこぼれ球は非情にもフリーとなったジャトラの前へ。日本は大きな2失点目を喫してしまった。109分、籾木が強気にペナルティエリアに切り込んだ末に得たPKで1点を返すも反撃はそこまで。

 ホイッスルが鳴った瞬間、長谷川はピッチに崩れ落ちた。「前半は攻めていたのでそこで決めきれなかったことが心残り」と悔やんだ。

 今大会の長谷川のパフォーマンスにはムラがなく、この日も豊富な運動量で攻撃から守備までピッチを所狭しと走り回った。得点シーンのみならず、チャンスメイクの陰には長谷川の絡みが多く見られる。

 あまり敗戦を知らないこのチームの中で、個人として振り返れば、長谷川は苦労人のひとりだ。15歳で選出された2012年のFIFA U-17女子ワールドカップ(アゼルバイジャン)では、実感もないままにベスト8で大会を終えた。

 飛び級で挑んだ翌年のAFC U-19女子アジアカップでは、まさかの4位に終わり、世界大会の出場権すら逃した。そんな経験を経て、2014年のFIFA U-17女子ワールドカップ(コスタリカ)で本来の世代に戻ってきた長谷川は"世界一"を体験することになるのだが、19歳の若さで、頂点の喜びと、敗退の悔恨の双方を知る長谷川の存在は大きい。

「負けはしたけど、前半の戦い方はしっくりきていた。次はあれを90分やり続けたい」とチャンスメイカーはすでに前を向いていた。

 フランスは、大会屈指のスピード攻撃と鉄壁の守備力を兼ね備えたチームだ。日本のパスサッカーとの対決は、随所に戦術のぶつかり合いがあり、見るものを楽しませ、また選手たちも互いの駆け引きを心から楽しんでいるように見えた。

 確かに、フィジカルの差による問題を打開し切れていないことも事実だが、それを含めて「高い技術、戦術眼、判断力を上げていけば十分に対抗できる」と、指揮官は確かな手応えをつかんでいる。

 日本が乱れた2分間で勝負を決したフランスの試合巧者ぶりには脱帽だ。しかし、これだけバランスの取れたフランスが24ものファウルを犯さなければならないほど、日本の攻撃や守備は脅威だったと言える。願わくば、このカードを決勝の舞台で見たかった。そう思えるほど、見応えのある120分間だった。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko