開発者は「若い人たちにも高齢者と同じ体験を」(shutterstock.com)

写真拡大

 まるで現実のように作られた仮想映像の中に飛び込んだり、仮想空間に潜入して現実にはない感覚を体感できるVR。その映像が、エンタメ、モノづくり、教育、医療などの分野にどんどん広がっている。近未来、VR、AR(拡張現実)、3次元CGが合体し、あらゆる産業分野を進化させていくかもしれない。

 そしてついに、高齢者にとっては大きな悩みの一つである「尿失禁」を、VRの技術で体験できる装置が話題になり評価されているという――。

失禁時に起こる現象をVRで再現する超リアル感

 niftyニュース(2016年10月14日)によれば、電気通信大学のロボメカ工房VR部隊「失禁研究会」が開発した失禁体験VR装置が、経済産業省のイベント「Innovative Technologies2016」で栄えある特別賞(human賞)を受賞した。

 失禁体験VR装置とは何か? 研究会によると、失禁体験VR装置は、腹巻き型デバイス、椅子型のデバイス、ネッククッションで構成され、膀胱の圧迫、排尿の暖かさ、体温低下などの失禁時に起こる現象をリアルに再現するVRツールだ。

 電気通信大学は、名実ともに失禁VRのパイオニアとして世界的に名を馳せるが、当初は「若い人たちに高齢者と同じ体験をしてほしい」という願いを込めて学園祭イベント向けに開発したものだ。

 その後、教育や医療への応用を目ざして研究がにわかに加熱。IVRC(国際学生対抗VRコンテスト)で堂々の総合3位。日本科学未来館で開催されたDCEXPO2016や、ニコニコ超会議2016の実演デモでも高い再現性が評価を受け、大いに気を吐いて来た。

 経済産業省の「Innovative Technologies2016」は、ユニークで卓越したコンテンツ技術の発掘が目的だ。選考委は「宇宙空間での排尿は大変な作業。宇宙旅行の時代が来れば、失禁VR体験や訓練が必要となるのではないか」と失禁体験VR装置のポテンシャリティに熱い視線を注いでいる。
「より生々しい失禁体験ができた」

 さて、実際に失禁VRを体験してみよう。

 失禁VR体験は、まず水をひと口ふた口、飲んだところからスタート→マスクの上から酸素吸入マスクとアイマスクをきちっと装着する→座面の下にある温水の入った水袋で尿の暖かさを体感する→腹巻き型デバイスと腰に着けたベルトの空気袋が膀胱を圧迫して尿意を煽る→首筋のネッククッションとファンが首筋を冷やす→排尿時の寒気や体温低下を感じる→酸素吸入マスクから匂いが届く......。

 まさに失禁感を科学的かつリアルに漏れなく再現していることが分かるだろう。

 研究会は、男性だけではなく女性の体験者も多く、全身の五感すべてを使って失禁を体験してもらえたと胸を張る。ある体験者は「視界が遮られているので、より生々しい失禁体験ができた」と実直な感想を漏らしている。

 失禁体験VR装置――。今後、医療、介護、福祉、教育などの現場でどのように役立つか期待しよう。「宇宙旅行に行く前に失禁体験VR!」も夢物語ではない。
(文=編集部)