【専門誌では読めない雑学コラム】
■木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第82回

 2020年東京五輪のゴルフ会場問題についてですが、小池百合子都知事になって風向きが変わるのではないかと、大いに期待したものです。しかしながら、都知事は豊洲市場移転問題をはじめ、ボート・カヌーの競技会場など他の五輪会場の問題、さらにはリボンの騎士のコスプレなどで忙しく、手が回らないみたいですね。

 そんなわけで、都知事にもわかるように、まずはゴルフの会場問題について解説させていただきましょう。

 要点は、3つあります。

(1)会場決定のプロセスが不透明
(2)真夏に埼玉県の内陸部でゴルフをやることが「おもてなし」になるのか?
(3)「レガシー」としての会場とは?

(1)の会場決定のプロセスですが、当初、安倍晋三首相がぶち上げていたのは、「コンパクトな会場」ということで、東京・新木場にある若洲ゴルフリンクスを会場とする素案があったのです。それが、誰かに押し切られたのか、「予備として36ホール必要だから」という謎の屁理屈をつけられ、気がつけば埼玉県の名門・霞ヶ関カンツリー倶楽部に決まってしまったのです。

 暗躍したのは、名門倶楽部の集まりや、名門大学のOB連中と言われていますが、はっきりしたことはわかっていません。簡単に言えば、ゴルフ界のお偉いさんが、伝統と格式のある名門倶楽部でオリンピックをしたかったのでしょう。

 この霞ヶ関CC案に、真っ向から反対しているのが、日本ゴルフ改革会議(大宅映子議長)です。メンバーには知り合いが多数いて、そこでは会場を当初の案だった若洲GLに戻そうと、東京都にも申し入れているそうです。しかし、いまだ動きはあらず、です。

 水面下では「ボート・カヌー会場の次はゴルフだ」と言っているようですが、バレーボール会場の問題などが決着せず、こう着状態が続いています。ゆえに、様子見のままなのでしょう。

 じゃあ、なんで霞ヶ関CCじゃあダメなのか。そうした意見が上がるのは、問題の(2)があるからです。

 7月末から8月中旬となると、気温が35℃を超えることも考えられ、埼玉県内陸部のゴルフ場では、おそらくグリーンの表面温度は40℃を超えます。ミラー効果というのか、グリーンの上は結構照り返しが強くて、相当暑くなります。そんな炎天下に半日いるのは、欧米系の選手にとっては、かなり酷なことしょう。それが、はたして「おもてなし」と言えるのか? 一番の問題はそこです。

 そんなことはお構いなしに、霞ヶ関CCを選んだ連中は、以前、カナダカップ(ワールドカップの前身)を行なった国際級の会場だし、有名な設計家のチャールズ・アリソンや井上誠一が設計・改修しているし、何が問題なの? と言いたげです。

 日本を代表する立派なコースですから、霞ヶ関CCにしたい気持ちはわかりますが、それはあまりにもコース至上主義に陥っていませんか?

 試合会場は、プレーヤーにとって条件が一緒であれば、ほどほどのコースで十分です。それ以上に、選手村からのアクセスはもちろん、気象、気温、風向きなどの面を十分に考慮すべきかと思います。

 若洲GLにすると、「とんでもないスコアが出ちゃうから」と文句をつける輩がいます(1996年の男子ツアー、ポカリスエットよみうりオープンが若洲GLで開催され、優勝スコアは4日間通算18アンダーだった)。けどそんなのは、ラフを長くして、フェアウェーを狭くすれば、問題ありません。

 若洲GLでやれば、選手村から近いし、海風が吹くからさほど暑くないし、ほんといいことずくめですよ。

 最後の(3)の問題は、霞ヶ関派が強くアピールする部分です。「日本を代表する名門コースでやるからこそ、真のおもてなしができ、レガシーも継承されるのだ』と。

 いえいえ、霞ヶ関CCは、すでに十分なレガシーとなっていますから、今さら輪島塗みたに、レガシーの重ね塗りをなさる必要はないかと思います。

 むしろ、都民のためのパブリックコースで五輪競技が開催されるからこそ、新しいレガシーが生まれるんじゃないですか。「ここでオリンピックが行なわれたんだぞ!」って。「松山英樹とロリー・マキロイの一騎打ちとなって、それぞれの第1打はこんなところまで飛んだんだぞ」とかね。五輪のあとにそういう話ができて、みんながオリンピックの思い出を共有しながらプレーできるコースのほうが、いいんじゃないですかね。

 現在、駒沢に住んでおりますが、ジョギングしに駒沢公園にしょっちゅう行っています。『ラーメンショー』でも行きますが。ここで、1964年の東京オリンピックが行なわれたかと思うと、感慨もひとしおです。記念館などもあって、そこにはいろいろなものが陳列されています。これぞ、レガシーじゃないですか。

 一部の金持ちしか行けない霞ヶ関CCでやっても、なんら都民のレガシーになりません。ビジターは、メンバー同伴じゃないとプレーできませんからね。

 小池都知事、忙しいとは思いますが、今一度、東京五輪のゴルフ会場の見直しを検討してみてはいかがでしょう?

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa