『UNIVERSAL MUSIC JAPAN』公式サイトアーティストページより

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 またしてもこの人か──。今年のリオ五輪閉会式の「フラッグハンドオーバーセレモニー」の演出を務めた椎名林檎が、今度は自民党の「文化伝統調査会」の会議に出席し、講演を行った。

 椎名は28日に開かれた同会に、おなじみの和装で参加。講演は報道陣には非公開で行われたが、朝日新聞が掲載している出席者によるコメントだと〈椎名さんはトランペット奏者の三宅純さんやダンスユニットのアヤバンビを挙げて「日本文化は世界で最も旬なものとして受け入れられている」と話した〉らしい。

 日本文化は世界の最新トレンド──。「ニッポン大好き」な自民党の議員方はさぞ椎名の言葉で悦に入ったことだろう。実際、同会に参加した片山さつき参院議員は〈実はmy遊戯場歌舞伎町♪のCD持ってます!〉と浮かれた様子でツイッターに投稿、片山が椎名と同会の会長である山谷えり子に手を回した仲睦まじい写真をアップした(現在は削除)。

 椎名といえば、前述した「フラッグハンドオーバーセレモニー」で日の丸と君が代を過剰なドラマティックさで演出し、"安倍マリオ"というオリンピックの政治利用の一翼を担ったが、今回、椎名が自民党の政務調査会にまで出席したことで、安倍政権との蜜月が浮き彫りになったかたちだ。

 しかも、これはたんに"オリンピックに関わったミュージシャンが講演に呼ばれただけ"という話ではない。

 まず、椎名に関しては、オリンピック以前からナショナリスティックな表現が話題を集めていた。たとえば、2014年サッカーW杯のNHKテーマソング「NIPPON」では、〈この地球上で いちばん 混じり気の無い気高い青〉〈our native home〉〈我らの祖国〉といった純血思想や国家への帰属意識を肯定するような歌詞が賛否を呼んでいる。

 また、同年11月に発表した5年半ぶりのアルバム『日出処』でもジャケットに配されたデザインが旭日旗に見えると指摘する声があがり、同じように旭日旗をモチーフにしたと思われる小旗をツアーグッズとして販売。昨年の「FUJI ROCK FESTIVAL '15」ではオーディエンスがその旗を振る光景が「まるでネトウヨアイドルみたい」と話題になっていた。

 ただ、こうした椎名の表現は、デビュー時からの"懐古趣味"の延長線上にあるもので、ナショナリズムの危険性など大して深く考えることもなく、なんとなく作品に落としこんできただけではないか、と考えてきた。しかし、今回の「文化伝統調査会」への出席は、椎名にとってかなり危険な問題を孕んでいると言わざるを得ない。

 一体、何が危険なのか。それはこの「文化伝統調査会」の歴代の会長の顔ぶれを見ればあきらかだ。

 そもそも、この「文化伝統調査会」というのは、自民党が06年11月に「文化伝統創造調査会」として発足させたもので、07年10月に現在の名称に改称。末松信介国交副大臣が過去にHP上で寄せた文章では、同調査会についてこう説明がなされている。

〈これまで文部科学部会・文教制度調査会の下に置かれていた文化政策特別委員会を調査会として独立させ、安倍総理が掲げる「美しい国」創り推進の中核を担う〉

 つまり、「文化伝統調査会」は、安倍首相が第一安倍内閣発足時に掲げたスローガン「美しい国」のために立ち上げられたものであり、事実、現在の同会会長である山谷参院議員は、今回、椎名が参加した会議の模様を28日の自身の公式Facebookで報告し、そのなかでこう綴っている。

〈「文化」は私たち日本人の遺伝子の中に豊に組み込まれていて、ご先祖さまが多様で奥深い文化をつなげてくださって今日の私たちがあります〉

 文化発信の必要性を語るのに、なぜか飛び出す「日本人の遺伝子」「ご先祖さま」というワード。さすがは先の参院選でも日本会議に大々的な推薦を受けていた極右議員なだけはあると思うが、これは山谷氏に限ったものではない。山谷の前に「文化伝統調査会」の会長を務めた中曽根弘文参院議員は、07年の日本会議10周年のメッセージにおいて、このように綴っているからだ。

〈私も日本会議国会議員懇談会の一員として、また自民党の文化伝統調査会の会長として日本会議の皆様とともに、良き日本の伝統を守り、日本の心を青少年に伝えていくために引き続き全力で取り組んでまいりたいと思います〉

 日本会議の皆様とともに──。この言葉が象徴するように、「文化伝統調査会」とは、排外思想を露わにする極右団体と結びついた自文化中心主義の議員がトップに君臨してきた組織なのだ。

 国際的に自国文化をアピールする上では、まず異なる文化への深い理解と多様性の尊重が求められる。しかし、むしろ山谷や中曽根から感じられるのは頑迷な国粋主義である。

 そんななかで、純血思想や帰属意識を歌う椎名が同会の会議に出席したという事実は、"無自覚な懐古趣味"がいよいよホンモノの国粋主義に利用されはじめたことを意味するだろう。しかも、当の本人も乗り気だという末恐ろしい展開で、だ。

 ミュージシャンが国威発揚に加担する。今年の夏には「音楽に政治をもち込むな」という議論が巻き起こったが、椎名の場合は「政治に音楽がもち込まれた」と言うべきで、こっちのほうこそ大問題だと思うのだが、なぜか大きな論争にはならない。そう考えると、すでにこの国は安倍首相主導のプロパガンダに慣れきってしまっているのかもしれない。
(編集部)