女子プロルファーの申ジエ【写真:Getty Images】

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申ジエもジュニア時代に“スパルタ教育”経験、韓国“国家代表”に見る育成法の変化

 韓国ゴルフ界の“国家代表”制度はジュニアゴルファー約3600人から正規メンバーの12人に絞られる狭き門であり、その多くがトッププロとなる世界にも例を見ない育成システムだ。そこでは現在、どのようなトレーニングが行われているのだろうか。

“国家代表”合宿の1日の練習スケジュールはどんなものなのかをのぞいてみよう。朝は早い。午前6時から1時間半の体力トレーニング。その後、朝食を摂る。9時からは2時間半ほどバランストレーニングが続く。内容はゴルフに必要な体力、筋力、柔軟性、集中力、瞬発力、平行能力を高めるためのものが主。そこには専門医の物理治療師が帯同し、選手たちの理論と実戦教育を支えている。

 午前練習の後は昼食を摂る。選手たちはここでようやくクラブを握り、練習場とコースに向かう選手に分かれるのだが、ここで特別な指導はなく、練習は自主的に行うという。

 韓国ゴルフ協会関係者が語る。

申ジエは5年間「20階建てのアパートの階段を毎日7往復」

「合宿における選手たちの目標はスイング作りではないので、自主的に練習をさせています。ただ、本当に悩んでいる選手の質問に対しては、しっかりスイングの指導を行います」

 そのほかにも、ゴルフ生理学、コースマネジメント、ルールとエチケット、教養としての英語、そしてメンタル強化のための心理相談などのカリキュラムが用意されている。

 今年、申ジエにジュニア時代の話を聞いた時、こんなエピソードを教えてくれた。

「子供のころは体力トレーニングをたくさんしました。20階建てのアパートの階段を毎日7往復させられていました。途中で歩いていたら、エレベーターで父が確認してきて、怒るんです(笑)。これを中高の約5年間続けました」

「今は時代が変わった」、変化する育成法

 申が話すように韓国のゴルフの練習というと、スパルタ教育を想像しがちだ。だが、近年は大きく変化した。男子国家代表チームのキム・ボンジュコーチがこんなことを語っている。

「今は時代が変わりました。過去には成果を出すことを重視したトレーニングを行っていましたが、今は専門的なゴルフ教育とゴルフを心から楽しみ、長くゴルフを続けるゴルファーを育成することが目的とならなければいけません。そうすることで、選手層が厚くなり、将来的にはオリンピックで金メダルを取れる選手が出てくると思います」

 韓国ゴルファーの強さの下地となるメンタル、体力の強化だけでなく、真のエリートゴルファーを誕生させる教育も怠っていない。実際、今年8月のリオ五輪のゴルフ競技では、朴仁妃(パク・インビ)が金メダルを獲得した。

 次から次へと、世界を驚かせる選手が韓国で誕生するのは必然なのだろう。今のところ、韓国ゴルフに死角は見当たらない。

金 明碰●文 text by Myung-wook Kim