1次リーグA組の第3戦で錦織圭を破ったマリン・チリッチ(クロアチア)【写真:Getty Images】

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第1セットは「特にストローク戦で優位に」

 ロンドンで行われているATPツアー・ファイナルで世界ランキング5位の錦織圭(日清食品)が1次リーグA組の第3戦で同7位のマリン・チリッチ(クロアチア)に6-3、2-6、3-6と逆転負けした。10月のスイス室内決勝に続いてチリッチに連敗を喫した錦織だが、敗因はどこにあったのか――。プロテニスプレイヤーの綿貫敬介(明治安田生命)に聞いた。

「今回の試合は前回のバーゼルの決勝戦の内容から対策はしっかりとできていた印象があります。前回はチリッチ選手が打ってきた深く、鋭いストロークに対して差し込まれることが多かったので、今回はセカンドサーブをリターンする際に、後ろに下がってラリー戦に持ち込む選択が多かったと思います。

 前回対戦ではチリッチ選手のセカンドサーブで前に入ることが多かった。一方、今回はセカンドサーブでもベースラインまで意図的に下がっていました。ラリー戦の時には自らポジションを下げて、ラリーのテンポをあえてスローにしている印象もありました。そこの対策は見事だったと思います。ファーストセットでは特にストローク戦で優位に立っていました」

 さらにサービスでも修正が見受けられたという。

「サーブの配球も修正していました。今回はボディサーブが多く、あえてサイドに散らさないようにしていました。チリッチ選手の手の届く範囲で中途半端にコースを突くと、鋭いリターンが返ってきます。ボディ狙いで、サービスのスピードも意図的に上げていなかった印象です。ファーストサーブの場面でセカンドサーブのようなスピンサーブを打つ場面もありました。前回の試合の修正はしっかりとできていました」

敗因は「はっきりしている」

 そんな錦織は勢いに乗り、第1セットを6-3で先取。しかし第2セットから崩れ、そのまま逆転負けを喫した。敗因はどこにあったのか。

「はっきりしています。ファーストセットはハイクオリティでした。楽天ジャパン・オープンでチリッチ選手が見せていたコート中盤での処理という課題もしっかりと突いていました。第1セット3ゲーム目の最初のブレークと、第1セット第9ゲームのセットポイントもチリッチ選手の中盤でのボールの処理ミスでした。相手のミスを誘発していた錦織さんの高い集中力が、セカンドセットの2度目のサービスゲームから欠けてしまった。疲労もあるでしょう。2日前のマレー選手との激戦の影響もあったと思います」

 一方で、チリッチの戦略も見事だったと綿貫は言う。

「チリッチ選手が最初から最後まで同じことをやり続けた。サービスに関して長いスパンで戦力を組み立てていたように思います。第1セットではファーストサーブはワイドを狙うものが多かった。錦織さんもそれに対抗していましたが、セカンドセットからサービスのコースを展開していた。錦織さんは完全にサイドを意識させられて、リターンが苦しくなっていた印象を受けます。第1セットのワイドを狙い続けた戦略が完全に布石になりました。立ち上がりからファイナルセットまでやることも、クオリティも変えない。自分のプレーができるまで我慢を続けました」

 ミスが目立った錦織。対するチリッチも強烈なサービスを軸に反撃に出た。結果、逆転負けを喫してしまった錦織だが、2年ぶりの4強入りは果たした。準決勝の相手は世界2位のジョコビッチ。1次リーグ2連敗から立て直せるか。錦織の巻き返しに期待したい。

◆綿貫敬介(わたぬき・けいすけ) 明治安田生命所属 世界ATPランキング1135位、ダブルス1024位(2016年6月時点)。埼玉県春日部市のグローバル・プロ・テニス・アカデミーの常任コーチを務めながら、世界ジュニアランキング2位の弟・陽介のツアーコーチも兼務。ジュニア時代には世界ランク5位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)ら実力者と対戦した経歴を持つ。

◆グローバル・プロ・テニスアカデミー 綿貫3兄弟を育て上げた父・弘次氏が校長を務める、世界を目指すタレントを育成するジュニア育成のアカデミーと一般のスクールを併設。レッスンは午前9時から午後9時まで。住所・埼玉県春日部市下蛭田2-1。電話番号048-755-5370。公式サイトは、http://www.global-sports-planning.com/