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●日本に上陸して10年という節目
日本上陸10周年を迎えるクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンは今、大きな改革を行っている。店舗数は最大の時には64店舗まで拡大したが、現在は46店舗。行列もみかけなくなり、内情は苦しいのではないかと察せられたが、次に向けた布石とし、ドーナツだけにこだわらない新商品の展開とあわせ、同社は前向きな店舗戦略を進めている。

○日本上陸10周年

1937年にアメリカのノースカロライナ州で誕生したクリスピー・クリーム・ドーナツは、2001年にカナダに出店したのを皮切りに世界展開をはじめ、今では、27カ国に約1100店舗ある。

日本には、2006年に上陸。店舗の前に数時間待ちの長蛇の列ができ、ドーナツを食べながら待つ人の光景が、記憶に残っている人も多いだろう。東京・新宿区の1号店を皮切りに、関東、関西、東海、中国、九州など最大64店舗まで拡大したが、ブームから10年たち、今は行列を見かけなくなった。

○主力商品の開発

同社といえば、ふわふわの生地を砂糖でコーティングしたシンプルなドーナツ、オリジナル・グレーズドが最もポピュラーな商品。実は、1937年から続く秘伝のレシピを一度も変えることなく、作り続けられている。同社の歴史そのものといえる商品なのだ。人気なのは、「ふわ、とろ」な食感で、全世界で不動の1位、日本だけでも、今までに約1億3000万個が食べられている。

日本で、このオリジナル・グレーズドに次ぐ定番商品としたい2商品を、上陸10周年に合わせて、発売した。日本人の味覚にあわせた独自の商品だという。

実は日本上陸時には、すべてのメニューがアメリカで考案されたものだが、現在では国内のメニュー約8割が自国で考案されたもの。抹茶のドーナツのように、日本で考案された商品が、ほかの国のクリスピー・クリーム・ドーナツで採用されることも増えており、日本の開発力は高い評価を受けている。

●スイーツ市場で生き残るために
○競合は手土産にできるスイーツすべて

ドーナツの雄・ミスタードーナツやコンビニチェーンなど、ライバルが多いドーナツ市場だが、国内市場の規模は緩やかに縮小しているという。

日本の消費者は、スイーツに対する要求水準が高い上に、流行のサイクルが早いと危機感を持っている同社は、ドーナツだけに固執することなく、ほかの商品展開を、実はスタートさせている。それは、ラスクだ。

同社のドーナツの弱点は、日持ちしにくく、土産に不向きなこと。一方で同社のドーナツといえば、ポップな色合いのものが多く、目で見ても楽しいことが特長。弱点を克服しつつ、特長を生かすものはなにかと考え、行き着いたのが、ラスクだという。ラスクは乾燥しているから日持ちし、表面の砂糖のコーティング部分はカラフルにすることができる。ドーナツ形のラスクをつくり、ドーナツではないものの、同社のドーナツを少しでも楽しんでもらえるようにしたのだ。

土産需要を見込んで、羽田空港で販売されているが、今後ほかのところでも取り扱いしていく可能性はあるという。同社の若月貴子副社長は「競合はドーナツだけでなく、手土産になりそうなスイーツ全部だと思っている」と話し、今後ラスク以外のスイーツの販売も模索していく考えを明らかにした。

○店舗閉店の理由

ラスクのような商品開発と平行して、店舗戦略の見直しも行っている。

同社は、日本に上陸してから積極的な地方進出を進め、2015年度には、64店舗まで拡大したが、現在では、46店舗と減少している。そうなると、業績悪化による閉店だろうか、という疑問が生まれてくるだろう。

「確かに、行列ができたころから比べれば、売り上げは下がってないとはいえないです。しかし、そういうことではなく、10年日本で生き残ることができたのだから、この先も長く生き残るために、出店戦略を見直したということです」(若月副社長)。地方の店舗を中心に閉店させ、関東や関西などの大きな消費地に集中する戦略に切りかえた。

地域を絞って、その地域にあわせた店舗をつくる。今まではアメリカと同じような店舗づくりだったが、例えば、その地域にファミリー層が多ければ、キッズスペースを設け、ベビーカーが通れるようなスペースを確保し、子どもが楽しめるメニューを作るといった、その店舗の周辺環境に合わせた最適化を進めていく。

●日本市場での生き残りをかける
○裾野を広げる展開も

また全く別の展開も進めている。輸入生活雑貨店「PLAZA」のオリジナルブランド「in private(インプライベート)」とコラボレーションし、同社のドーナツをモチーフにしたグッズを販売(すでに販売終了)。食べるだけでなく、日ごろから持ち歩いてもらうことで、ブランドをさらに広く知ってもらい、愛着を持ってもらう狙いがある。

さらに、まだ一店舗のみの展開だが、デリバリーサービスをスタートした。これにより、今まで買いに行けなかった人も手軽に購入できる。このように、今までより、多くの消費者との接点をつくり、裾野を広げる試みも進められている。

○新しい成長軌道に乗せられるか

なぜ、このように、様々な布石を打つのか。日本のスイーツブランドの流行廃りのサイクルは早いため、同社は、“話題のスイーツ”から早く脱却し、日本人の“定番”の店になる必要があると考えているのだ。そのためには、アメリカからそのまま持ってくるのではなく、日本人の生活様式や、多様なニーズに合わせた店舗や商品作りをし、愛されるブランドにしていかなくてはならないとの思いが同社にはあるのだ。幸いなことに、世界中のクリスピー・クリーム・ドーナツの中でも、日本は商品の開発力には定評がある。開発力を武器に、日本に愛されるブランドづくりを進める。同社は、まだまだこれからも模索の余地があるとみている。

同社の戦略をみていると、アメリカから日本に入ってきて、定着したマクドナルドが思いだされる。価格の手ごろなところはクリスピー・クリーム・ドーナツと共通で、似たようなターゲットが想定できるのではないだろうか。ファミリー層狙った子ども用のスペースについては、マクドナルドは、昔から一部の店舗で設置しているし、商品展開への考え方もなども、マクドナルドが歩んできた道に、ヒントがあるかもしれない。今後同社が、今までのイメージを変え、長く日本で生き残る成長軌道に乗せられるか。1つ1つの戦略の舵取りにかかっている。

(経営・ビジネス取材チーム)