YouTubeより

写真拡大

 ジル・スタインという女性に注目が集まっています。

 スタイン氏は、トランプ氏が勝利したウィスコンシン州での投票結果再集計を正式に求めた人物。米国「緑の党」からの大統領候補だった人物です。ハーバード大学を卒業した医師でもあります。

 今年、スタイン氏に最初に注目が集まったのは8月。緑の党が大統領候補にスタイン氏を指名した時です。トランプ氏、クリントン氏、どちらにも投票したくないという人が多い中、スタイン氏を大統領にしてはどうか、と呼びかける人が出てきました。

 しかし、米国では、二大政党制が確立されてからというもの、共和党、民主党以外の党が政権を取った例が一度もありません。確かに一時期注目は集まりましたが、現実には勝てる見込みがほぼありませんでした。

 終盤はトランプ氏、クリントン氏の接戦に人々の関心が集まり、メディアもスタイン氏を取り上げる機会がほとんどなくなっていきました。スタイン氏は多くの人が予想した通り、敗れるという結果に。

 そんなスタイン氏に、今、再び注目が集まっています。

 きっかけは、いくつかの州でサイバー攻撃により、投票結果が操作された可能性があるという専門家からの指摘でした。

 これは不正選挙だったのではないか、そんな声も出始め、再集計を求める声が出てくる中、スタイン氏が動いたのです。

 再集計には手数料を支払う必要がありますが、スタイン氏はウィスコンシン州での投票結果再集計に際し、短期間で必要額を大幅に上回る500万ドル(約5億5000万円)ものお金を調達しました。その後、スタイン氏はウィスコンシン州にて、投票結果再集計を正式に申請しました。

 そんなスタイン氏ですが、仮に選挙の結果が覆っても、自身が大統領になれる見込みはゼロ。なのに、なぜこのような行動に出たのでしょうか。

 透明性のある選挙プロセスを目指すスタイン氏に、共感する人が多数いたのです。

 スタイン氏は、「透明性のある選挙プロセス」を目指しています。彼女は、民主主義というものを信じ、これがきちんと機能するようにしています。透明性がなければ、選挙結果は確証されない、それがスタイン氏の主張です。

「私は35ドル寄付した。スタインは正義の人だ。米国民のために動いている」

 こう語るのは、スタイン氏の今回の行動を評価する、著者の米国人の知人です。

「あなたも寄付できると思うよ。見てみたらどう?」

 そういわれ、寄付のウェブサイトを紹介されました。興味本位に見てみたところ、寄付のプロセスは簡単そうです。支払いたい額の入力、個人情報と支払い方法を入力するだけ。どこの国からでも寄付できそうです。

◆「ヒラリーはスタインにいくら払ったんだ」

 一方、今回のスタイン氏の行動を評価しない米国民もかなりの数で存在します。著者がスタイン氏の行動を支持しない米国民の知人グループに意見を求めたところ、下記のようなコメントが返ってきました。

「この再集計のためにクリントンはいくら払ったんだ」

「不正を糺そう正そうと思ったのに、カネ金に汚いクリントンが勝利すると、逆に不正が多くなるぞ」

「トランプが勝った3州だけで再集計という時点でおかしいと思わないか」

 事実かどうかは別として、クリントン氏がお金でこの再集計へとスタイン氏を動かしたのではないか、そんな考えを持つ米国民の声も聞こえてきます。「お金にクリーンではない」イメージがつきまとってしまった、クリントン氏の一面をここから垣間見ることもできます。

 今回、専門家含め、多くの人が、選挙結果が覆る可能性は低いとしています。しかし、英国のEU離脱やトランプ氏の勝利と、今年はいろいろサプライズが多い年。最後まで何が起こるか分からないので、万が一に備えておく必要はあるのかもしれません。

<文・岡本泰輔>

【岡本泰輔】
マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。
米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。