ユニクロの店舗(撮影=編集部)

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 ユニクロなどを展開するファーストリテイリングが、「2020年度に5兆円」という売上目標を3兆円に下方修正した。16年8月期の連結決算においては、最終利益が前年同期比56.3%減の480億円とのことで、約2年ぶりの減益になった。

 これだけみると「ファストリらしくない」と感じるのだが、国内ユニクロの客数が減っているものの客単価が増えたこともあり、売上そのものは同約6%増えている。20年度の3兆円という売上目標値も、16年8月期の売上から約6割、1兆2000億円の増となり、決して弱気の数字ではない。

 10月17日付「日経MJ」に興味深い記事が載っていた。柳井正会長はこれまで製販一体のSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)といわれるビジネスモデルを推進してきた。

 従来SPAは米国GAPが始めたコンセプトで、製品開発から製造を経て小売までの一連の流れを垂直的に統合するものだ。これにより、サプライチェーンの各ステップにおいて効率化でき、価格設定も自社でできるといったメリットがあった。日本でもユニクロ以外に、無印良品がこのビジネスモデルを採用している。

 しかし、H&MやZARAなどSPA第2世代の台頭などもあり、競争はますます激化している。同記事で特集されていたのが、SPAをさらに一歩進めて、「情報製造小売業」をキーワードにするということだった。ITの限りない進歩のなかで、広い意味で顧客とのコミュニケーションを「デジタル化」するというもの。柳井氏の言葉を借りれば、「顧客中心主義」と「情報の商品化」ということになる。

 これまでの垂直統合をさらに一歩進め、顧客の行動をビッグデータ分析し、それをまた製品開発に生かすという、これまでとは「逆の」方向に各ステップ間が動くのだ。この記事ではそれを、「顧客を中心にループ&放射線状」につながる、と表している。言い得て妙だ。

 これにより、顧客ニーズや潜在需要をただちに把握できるので、商品開発のスピードも早まるし、ニーズに即した商品開発も可能になる。巨大企業で本来は動きも遅いはずなのに、このコンセプト確立とそのスピードの速さは、「さすがファストリ」といったところか。

●常に新しい価値を想像する

 ファストリと柳井氏から学びたいのは、「常に新しい価値を想像すること」を目指している点である。ひとつの例が、このビッグデータの活用である。大量のデータの購買履歴と行動から仮説を立て、次の一手を打つ、というのがいわゆるビッグデータ分析である。分析の結果を事業の運営や施策に反映することはあるが、自社のビジネスモデルに組み込み、さらなる収益好転を目指すという、事業レベルの一段上の企業としてのビジネスモデル活用に入り込んでいるところが画期的だ。

 これは、柳井氏が言及するように、新しい産業を創り出すことに等しい。こういった大局的な見地に立って物事を見ることができる視点が、画期的な仕組みの創造につながるのだ。現状の売上に満足していたり、既存の価値観のなかで物事を考えていると、このような発想すら出てこない。

 中小企業こそ、既成の枠にとらわれない視点で、社会や自社を取り巻く環境を踏まえて、自社の取り組みを考えたいものである。
(文=理央 周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長)