「Thinkstock」より

写真拡大

 雑誌の保険特集などで必ずといってよいくらい目にするのは、「医療保険は必要ない」とする内容の記事である。私も多くの記事を読んでいるが、こうした医療保険不要論の根拠の多くは、次の3点に集約されているように思う。

(1)高額療養費制度があるから、医療費の負担がそれほど大きくなることはない
(2)女性特約や健康祝い金など無駄なものが多い
(3)保障対象外などで給付金がもらえない、もらえても少額なことがある

●高額療養費制度があるから医療費はカバーできる?

(1)で挙げた高額療養費制度とは、同一月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分を、健康保険あるいは国民健康保険で負担してくれる制度である。自己負担限度額には収入による区分があり、3万5400円から26万円程度とかなり幅がある。会社員で税込年収600万円の場合、通常は自己負担限度額が9万円程度の区分になる。

 さらに、健康保険組合によっては自己負担額をさらに減らしてくれる「付加給付」の制度を設けているところもあるため、人によって実際に自己負担する金額は大きく異なる。

 また、手元のお金にどの程度の余裕があるかは人により差が大きく、医療費負担というリスクへの許容度が人により大きく異なることも考える必要がある。金融広報中央委員会が行っている2016年の「家計の金融行動に関する世論調査」(2人以上世帯調査)では、金融資産がないと回答した世帯は30.9%にも達している。収入が高い人が多い私の相談客のなかでも、貯蓄ゼロ世帯は珍しくない。従って、一律に医療保険の要不要を判断すること自体に無理があり、個別に判断すべき内容である。

 そして、不要論の多くは現在の高額療養費制度に基づいた判断を示しているが、高額療養費制度は直近でも06年10月と15年1月に改定され、自己負担限度額は徐々に高くなってきている。さらに、自己負担限度額とは別に支払いが必要な費用の改定もある。たとえば入院時の病院の食事代は1食260円だったのが、16年4月から360円になり、18年4月からは460円になることが決まっている。

 高齢化や財政の問題から自己負担しなければならない金額が、今後も高くなっていくことには疑う余地がなく、そのような視点からの判断も必要ではないだろうか。

●医療保険の無駄な特約や保障対象外の問題

(2)で挙げた「女性特約や健康祝い金など無駄なものが多い」は、商品や特約の“選択”の問題であり、医療保険そのものを否定するのは論理の飛躍といえるだろう。そのような手厚い保障はパッケージプランの例にすぎず、大部分の医療保険は入院と手術の保障だけというようにシンプルな設計でも加入できる。

 また、(3)の「保障対象外などで給付金がもらえない、もらえても少額なこともある」は、保険が契約である以上、あらかじめ定められた通りに支払われるのは当然なことともいえる。保障内容の理解が不充分で加入の判断が歪んでいるということであれば、販売側の説明の問題を議論すべきだが、医療保険そのものの要不要とは別の問題だ。

 また、たとえば医療保険の手術給付金は、以前の医療保険では保険会社が定める88種類の手術のみを対象としており、公的医療保険制度で手術と認められるものでも対象外となることがあった。しかし、現在販売されている医療保険のほとんどは公的医療保険制度で手術と認められるものを手術給付金の対象とするように変わっている(一部例外もある)。保障対象をよりわかりやすくする改善も継続的に行われているのだ。

 保険は保険料から運営コストが費消される分、確率的には加入者が損をする可能性が高いものであり、なるべく加入しないに越したことはないのは事実。「医療費の自己負担が将来的に増加する可能性も考慮した上で、貯蓄で充分対応できるのであれば加入する必要性は低く、それが難しければ医療保険に加入せざるを得ない」というのが妥当な結論ではないだろうか。
(文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)