小沢尚美アナウンサー

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 昨今、「女子アナ」という単語をニュースで目にしない日はないほどに、女子アナの注目度は高まっている。

 この11月に入ってからだけでも、『TBS内定発表女子アナ 記者直撃にも物怖じしない大物感』(11月7日付「NEWSポストセブン」)、『元ミス近大の女子アナが「週プレ」グラビアに再登場』(11月7日付毎日新聞)、『高橋真麻、プロ野球選手との結婚「女子アナからはいかない」』(11月1日付デイリースポーツ)など、女子アナに関する話題が日々溢れている。

 その女子アナの世界が変わりつつある。テレビ画面のみならず、雑誌やウェブサイトといった文字媒体の世界に進出し、ライターとして活躍する現役女子アナが増えつつある。

 マイクを持ちなれた手で、時々ペンも握る。話し手ならではの話術と放送業界で培った取材力を武器に健筆を振るう“女子アナライター”たちは、今や出版業界で育った書き手たちをも凌駕する存在だ。そんなライター業もこなす現役女子アナのひとりである、小沢尚美アナウンサーに密着した。

●宣材写真撮影に向けて1カ月で5キロのダイエット

「よろしくお願い致します。今日の撮影のためにダイエットをしてきたんですよ。だからちょっとひもじいです」

 10月某日。待ち合わせ場所に現れた彼女はアナウンサーらしくはきはきと、それでいて茶目っ気たっぷりに話し、記者を和ませる。この日は女子アナにとって看板ともいえる宣材写真撮影のため、ノーメイクでの登場だったが、やはりすっぴんでも華がある。渋谷の雑踏がその綺麗さをより際立たせている。

 大学卒業後、局アナとしてテレビ山梨に入社した小沢アナは、報道からバラエティと番組のジャンルを問わず活躍後、フリーアナになった。『JNNニュースバード』(TBS系)や、経済番組のキャスターも務め、経済に明るいアナウンサーとして知られている。日経平均株価や主要経済動向を毎日ノートに記録するなど、地道な努力ぶりは業界関係者の間でも評判だ。

 そんな彼女だが、今でも新人同様、発声練習はもちろん、社会の動きもアンテナを高く伸ばして情報収集に励む。局アナと違いフリーは、「社員以上の結果を出して当たり前」という世界だ。いつ何時でも気を抜くことは許されない。常に視聴者とベストな状態で向き合うことが要求される。そのプレッシャーは、私たちの想像をはるかに超えるものがある。

「宣材写真は1年から2年に1度のペースで撮影します。多くの人の目に触れる宣材写真ですので、見苦しい姿で写るわけにはいきません。だから女子アナはいくつになっても、どんなに忙しくても日々、体型維持のための運動とダイエットに余念がありません」

 聞けば、週3日から4日、3時間程度ジムで汗を流すという。今回も撮影のために1カ月で5キロのダイエットを敢行したという。

 撮影スタジオでメイクを受けながら鏡越しに語るその小沢アナの話に、記者はもちろん、メイク、ヘアメイクのスタッフたちも引き込まれていく。何気ない日常の話でも人を惹きつける話術は、女子アナの面目躍如といったところか。

●女子アナライターが表に出てこない理由

 こうした女子アナならではの話術に、取材を受ける側はついつい口を滑らせてしまう。その結果、大事件の端緒を掴んだり、スクープ記事につながることも珍しくないという。時にはわざと取材対象を怒らせて話を引き出すという旧来からの取材手法を取る百戦錬磨の新聞記者や雑誌ライターが、女子アナライターを恐れる理由がここにある。

 だが、小沢アナにみられる現役女子アナライターの活躍が世に知られていないのはなぜか。出版業界関係者が、その事情を次のように明かす。

「報道、バラエティを問わず、出演している放送局への配慮です。たとえば、A局でレギュラー番組を持つ女子アナが、ライバル局であるB局と関連が深いC出版社でライターとして取材に来ると、取材の受け手は驚き、視聴者や読者も混乱することがあるからです」

 こうした背景から、女子アナがライターとして仕事をする際、その多くは筆名(ペンネーム)で執筆し、顔出しはNGというのが通例となっている。つまり、女子アナとは「別人格」での誌面参加となる。そんな例に漏れず、小沢アナもペンネームや無署名でライター活動を行っている。

 現在、インターネット媒体を中心に「数多のヒット原稿を連発中」(担当編集者の川村洋氏)という小沢アナには、書籍の執筆依頼が引きも切らないという。優れた伝え手は、同時に優れた書き手でもある。それを彼女が証明した格好だ。

「ライターの経験は、アナウンサーの仕事にもいい影響を与えてくれます。いわば“シナジー効果”です」

●新聞・放送・出版の垣根が低くなった

 200カットの撮影、2度の衣装替えをこなした小沢アナは、疲れた様子を微塵も見せずに記者と周囲に対して声を掛けた。

「宣材写真が200カットくらいあるのですが、どの写真がベターか、よろしければ一緒に選んでいただけますか。大勢の方のご意見を伺いたいので」

 この200カットの中から「ベストの1枚」を選ぶ。幼稚園から高校まで私立の一貫校で学んだという育ちの良さが日頃からにじみ出ている彼女が、唯一、厳しい表情を見せた瞬間だ。それもそのはず、このたった1枚の写真がフリー・アナウンサーとしての今後を左右しかねないからだ。

 今、マスコミは、新聞・放送・出版の垣根が崩れつつある。そうした時代にあって生き残れるフリーランスはマイクとペンを使い分けられる技を持っている。その技を向上させるためにたゆまぬ努力を続けているからこそ、女子アナで居続けられるという現実があるのではないだろうか。
(取材・文・写真=佐津川遼)