短縮競技となったが池田の強さが見えた一戦だった(撮影:岩本芳弘)

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「カシオワールドオープン」は最終日が降雨によるコースコンディション悪化のため中止となり、54ホールの短縮競技で決着。3日目終了時の結果で順位が確定し、賞金ランキング1位を走る池田勇太が今季3勝目を挙げた。最終日中止という大会としては不本意な結果に終わったものの、「締まった良い試合だった」と語るのはラウンド解説でコースにいたプロゴルファーの田島創志だ。普段から練習ラウンドを共にするなど親交のある池田と大学の先輩である正岡竜二が入った最終組にフォーカスした。
3日目に大学の先輩である正岡竜二とラウンド
■2人で流れを作ったフロントナイン
「正岡選手は初の最終組というのもあるし、シード争いもあって緊張感も半端じゃなかったと思う。いくらいつも一緒にいる池田選手が一緒だったとはいえ、リズムを組み立てるまでが、本人の中で一つの課題だったと思う」。シード争いの崖っぷちにいる正岡は、序盤セーフティにグリーンセンターに打ってリズムを作っていく。序盤を冷静に入ったことで、一気にスコアを伸ばした後半への流れができた。
一方の池田はバーディが2つ先行するも、5番、6番と連続ボギーを叩くなど落ち着かない立ち上がりとなった。しかし、スコアを伸ばせずにいた2人にとってここからが前半のキーとなる。「池田選手は7番を獲って、8番ではスライスラインをしっかり入れてバーディ。その内側につけていた正岡選手も決めることができて、2人の流れが良くなった」。
■終盤、2つのスイッチが入った瞬間
後半は10番、13番と池田が着実にスコアを伸ばしていく。ここで池田と会話をかわしながら和気あいあいとプレーしていた正岡のプレーに変化が起きたという。「自分のゴルフをしていた正岡選手が変わったのは15番。10メートルちょっとのパットを1.5メートルくらいオーバーして、返しをしっかり沈めることができた。それでゾーンのスイッチが入った」
「その時の状況を正岡選手のキャディさんに聞いたら“ちょっと右手が入り始めていた”と言っていた。飛距離も出ていたし明らかにいつもより高揚していたと思う」。16番でフェアウェイ真ん中から2メートルにつけてバーディ。17番では奥からの下りのパットをねじ込んだ。「あの場面はケネディ選手が先に良いアプローチをして、ボールスピードが自分の中でシンクロしたと思う。本人も寄せるつもりで打ったのが入って、完全にゾーンの真っただ中に入っている。イメージがクリアになっている中で具現化したバーディだと思う」
それを見た池田のスイッチも、ここで入った。池田にとっては正岡は先輩ながら実績では下回る相手。17番は2.5メートルのパーパットを残す場面。「あそこでバーディ、ボギーだと並ばれる。仮に外すと流れが向こうに行くのもわかっている。自分が正岡選手を引っ張ってる以上は、リードするのは許さないと感じたパーパット。あれを入れたのは見事。口には出さないけど、“負けねぇぞ”という見せた場面。正岡選手にしてみたら“勇太やっぱりすげー”と思わされた場面だったと思う」
■凝縮された池田勇太の底力と人間味
3日目だったため、優勝争いという雰囲気にはならなかったが、池田の勝負師としての一面が見えた上がり2ホールだった。17番で主導権を渡さなかった池田は、18番でも先に正岡にアプローチを寄せられるも、きっちりバーディを奪って1打リードを保ったままフィニッシュして見せた。「あそこでダラッとしないのが、賞金王という立場を自覚している選手の素晴らしいところ」。年間を通じてそうしたプレーを貫いてきたことが現在の結果にも表れている。
シードがかかった正岡を盛り上げたい気持ちと、負けられない意地。「池田勇太の人間味が色濃く出た試合だったと思う。正岡選手を引っ張っていかないととか、いろんな思惑が渦巻いていた中、しっかり1つ1つ処理しているのが見事だった。池田選手は不器用だけどゴルフ界のことをものすごく考えているし、人間としても成長していると思う。表現の仕方は上手くないかもしれないけど、純粋だと思う。そういうところがすごく良いと思う」池田の底力と人間味が凝縮された今季3勝目だった。
【解説・田島創志/1976年9月25日生まれ。ツアー通算1勝。2000年にプロ転向し、03年『久光製薬KBCオーガスタ』で初日から首位を守り、完全優勝。青木功JGTO(日本ゴルフツアー機構)体制では、トーナメント管理委員会 コースセッティング・アドバイザーを務める】

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