【眠り病】寄生虫に睡眠周期を乱されて死ぬ!?アフリカ睡眠病

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「眠り病」と呼ばれる病気を知っていますか? そのネーミングは「眠り姫」を想起させ、なんとなく可愛らしいですが、実はかなり恐ろしいもの。眠り病は、毒リンゴや糸巻きではなく血液中に侵入した寄生虫によって引き起こされる病で、年間約4万人もの死者が出ているのだとか!
Fuminners(フミナーズ)読者のみなさんは「もっとぐっすり眠りたい!」と望む人が多いかもしれませんが、眠り病には気をつけて…。

「眠り病」の原因はアフリカのハエ

「眠り病」と呼ばれる病気は、アフリカのサハラ砂漠以南に多くみられる風土病(=ある一定の地域に限定して流行する病気)である「アフリカ睡眠病」です。人にも動物にも感染する病気(人獣共通感染症)で、アフリカではなんと年間4万人もの人がこの病気で命を落としているといいます。
感染経路は、アフリカだけに生息している体長5弌1冂度の「ツェツェバエ」と呼ばれるハエ。ツェツェバエは、主に日中の暖かい時間帯に吸血して栄養を吸い取ることが分かっており、このハエに吸血されると「トリパノソーマ」と呼ばれる原虫が体内に侵入し、アフリカ睡眠病に感染してしまうのです。

アフリカ睡眠病は、トリパノソーマの種類によって「ローデシア型」と「ガンビア型」の2つに分けられます。

ローデシア型

原虫はアフリカ南部・東部に分布し、サバンナに多く生息するハエが媒介
約1〜3週間の潜伏期間を経て発症

ガンビア型

原虫はアフリカの中央部・西部に分布し、川のそばに生息するハエが媒介
潜伏期間が長く、数ヶ月から数年間も無症状のこともある

アフリカ睡眠病の症状と経過

ツェツェバエに吸血され、眠り病の症状が急激に現れる「急性期」には、悪寒、頭痛、筋肉痛などが症状として現れ、刺された部分に発疹ができる場合もあります。また首の裏側にできるリンパ節腫も眠り病の特徴のひとつ。急性期が過ぎると「慢性期」となり、中枢神経にまで原虫が入り込むことで、日中の強い眠気、過食、頭痛をはじめ、精神不安、錯乱、精神障害などが起こります。そして眠り病が末期に至ると、患者は昏睡状態に陥り、そのまま眠り続けることに…。最終的には食事もとれなくなり、全身が衰弱して死に至るといいます。
とりわけローデシア型は病の進行が早く、無治療だと1〜3ヵ月で死に至ります。またガンビア型も、無治療であれば数年後には同様の結末を迎えるのだそう…。小さなハエに刺されただけで死んでしまうとは、何とも恐ろしい病気ですよね。

残念ながらこのアフリカ睡眠病には、完全な予防方法や、有効なワクチンなども見つかっていないそう。流行地域には行かないこと、ツェツェバエに刺されないようにすることくらいしか、予防法がないのが現状です。また治療することも難しく、現在眠り病の治療に使用されている薬剤の多くには副作用があることが分かっているため、安全な治療薬の開発が待たれています(※1)。

シマウマのシマ模様とアフリカ睡眠病の豆知識

ちなみに、サバンナに生息するシマウマとアフリカ睡眠病にまつわる、ちょっとしたエピソードも存在しています。

シマウマはなぜあんなに綺麗なシマ模様を持つのでしょうか? この問題について、120年以上もの間、たくさんの生物学者が研究を続けており、いくつかの仮説も生まれています。例えば「敵から身を守るため」とか「体温調整のため」といった説が主流ですが、カリフォルニア大学の研究によると、実はこのシマ模様は、アフリカ睡眠病の媒介元であるツェツェバエを寄せ付けないためのものだというのです。

シマウマは他のサバンナに生息する動物に比べアフリカ睡眠病にかかりにくく、またツェツェバエの血液の中にも、シマウマの血液がほとんど見つかっていないそう。さらに、ツェツェバエをはじめとする吸血バエは、シマ模様を避ける傾向があることも分かっています(※2)。

6日間も眠り続ける不思議な事象も…睡眠にまつわる怪奇現象

もう一つ、「眠り病」と呼ばれる事例があります。カザフスタンのカラチ村では、住民が最長6日間も眠り続けるという不思議な事象が報告されています。最初にこの眠り病が発生したのは2013年。一旦収まり、また流行るといった不定期な流行を繰り返しているそう。近年では2014年5月に流行し、約60人の住民が眠り続けたことが報告されました。
症状は、ただ眠り続けるだけで身体に異常は認められません。いまだに原因は解明されておらず、鉱山から発生する天然ガスによるものという説が有力視されているのだそう(※3)。

アフリカ睡眠病以外にもこのような事例があるということは、世界にはまだ他にも「眠り病」と呼べる事例があるのかもしれません。

眠れず悩んでいる人や、睡眠時間が足りずに嘆いている人にとっては、6日間もぐっすり眠り続けられるカラチ村の眠り病はうらやましく感じてしまうかもしれません。一方で、眠るどころか死に至ることすらあるアフリカ睡眠病は、非常に恐ろしいですよね。
いずれにしても、正常な睡眠ではありません。病気のせいで眠るのではなく、自分の意志で眠り、気持ちよく朝を迎えられるのが一番ですね。

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※1 死に至る睡眠病?!アフリカ睡眠病について理解して危険を避けよう
※2 アフリカ睡眠病|社会問題でもある顧みられない熱帯病について
※3 The skin is a significant but overlooked anatomical reservoir for vector-borne African trypanosomes

photo:Thinkstock / Getty Images