楽天グループ本社ビル「楽天クリムゾンハウス」 photo by 掬茶  CC BY 3.0

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 4年間で総額257億円を支払って、スペインの名門サッカークラブ・バルセロナの新スポンサーとなることが決まった楽天。

◆世界的な認知度アップの足掛かりに

 ソフトバンクやディー・エヌ・エーなどIT系の同業他社と比べて格安で球界参入を果たし、球団の躍進とともに国内における「楽天」の知名度を確固たるものとした同社は、今度はサッカーを使って世界的な認知度を上げ、世界展開を進めたいという思惑を持つ。

 9月には国内のフリマアプリ大手の「フリル」を手がけるFablic社を推定数十億円規模で買収するなど、成長のために惜しみなく資金を投じるイメージのある楽天の経営状態はどうなっているのか。決算書から読み解いた。

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 オンラインショッピングをはじめとするインターネット事業と、テレビCMでおなじみの楽天カードなど金融事業を多数手がける楽天は5000億円を超える豊富な現預金を有する。ただ、ほとんど自己資本が占めることが多い一般的なIT企業とは少し変わった資産構成になっている。

◆普通の企業なら危険水域すれすれ

 総資産に占める負債以外の割合を示す自己資本比率は15%前後で推移しており、これは通常の企業であれば危険水域すれすれの低水準である。例えばオンラインショッピングにおける競合であるヤフーは70%ほどあるし、ディー・エヌ・エーなどは80%にものぼる。楽天の見かけ上の借金がとても多くなっている理由は、同社における金融事業の存在感がとても大きいためだ。

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 収益だけで見ればいまだにインターネット事業が一番大きいが、最近流行に乗って「Fin Tech」事業と名前を改めた金融関連が、利益ベースでは同社最大のものとなりつつあることがわかる。従業員1人あたりの売上で見ると、「楽天カード」「楽天証券」「楽天銀行」「楽天生命保険」などのFin Tech事業が圧倒的に大きい。メガバンク各行も自己資本比率は10数%であり、金融業者はバランスシート上に占める負債の割合が大きくなるのは一般的である。

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 金融事業がもはや本業となってきた楽天は増収を続けており、利益率もここ数年高い水準にあるが、懸念がないわけではない。昨年度期は久しぶりに最終減益に陥った。

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 その理由は、海外事業における巨額の減損損失である。本業で稼いだキャッシュによって積極的な海外企業の買収を行っているが、予定通りの事業成長を達成することができず、昨年度期は400億円近い減損を計上した。今期においてもそのリスクは払拭されておらず、四半期報告書でも減損認識の可能性が示唆されている。

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◆楽天の命運を握る「Viber」とは?

 何しろ楽天は海外企業の買収に伴って、被買収企業に支払うプレミアムである「のれん」をたくさん計上しており、その総額は4000億円近くにものぼるのだ。

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 これらの資産が焦げ付いてしまえば、楽天は一気に赤字転落してしまうほどのリスクを常に抱えている。とりわけ、1000億円近くと最大規模ののれんを計上しているのは’14年に買収したコミュニケーションアプリの「Viber」を手がけるViber社。同社の動向は気になる。

 同サービスは、ダウンロード数では世界で8億回という桁違いの規模を誇るが、「LINE」などのコミュニケーションアプリは、継続的に使われるものは首位に限られるという傾向がある。

 日本とタイ、台湾、インドネシアはLINEが強く、その他のアジア各国では中国のTencent社が手がける「Wechat」が、北米などではFacebookの「WhatsApp」がデファクトスタンダードとなっており、Viberが割って入るには、ビジネス向けに特化するなどかなりの工夫が必要だ。買収が行われた’14年後半以降、ダウンロード数の伸びもじわじわ鈍化していることが見て取れるのも気がかりである。

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 このサービスに、楽天が支払った約9億ドルの価値があるのか、これから真価が問われていく。スマホでのフリマ業界に参入すべく買収した「フリル」のFablicにしても、国内の圧倒的首位はメルカリであるように、楽天は業界2位以下のサービスを買収することが多い。

 放っておくと業界首位に市場を押さえられてしまう企業なだけに、楽天が本業のユーザー基盤を使ったり、自社の優秀な人材を投入するなどして成長に導けなければ、減損のリスクは案外すぐに顕在化してしまう。

 金融事業の拡大を糧に成長を続ける楽天にとって、買収した資産を目減りさせずにいられるかどうかがこれからも肝であり続けるのだ。

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok