連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第8週「止まったままの時計」第48 回 11月26日(土)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎


48話はこんな話


ファッションショーは大成功。苦悩していた紀夫(永山絢斗)も自分のコンプレックスに打ち勝って、すみれ(芳根京子)のキアリスへの思いに理解を示す。

やっと やっとこれからが、いま、はじまろうとしています (語り/菅野美穂)

もう何度「これから」感出したかわからない「べっぴんさん」。ふいに赤い幕を出したり、戦争終わったり、疎開先から戻ったり、女子4人がやっとそろったり、何かと「これから」感を出しながら早くも全151話の3分の1を過ぎていた。それで「やっと やっとこれからが、いま、はじまろうとしています」では「これからこれから詐欺」と言われかねない。でも、いい話しなので「これから」を延々続けてくれても構わない。

そう、いい話なのだ。48話の主人公すみれの台詞なんて朝ドラの鑑のようだった。

「お店が、私の人生の喜びになっているということです。
世の中にはいろんなことがあるけれど仲間がいれば大きな力が生まれること。
ひとりではできないことも仲間といっしょならできること。
女の人もそんな夢を見ることのできる世の中になればと思っております。
ひとを信じることの豊かさと、夢を叶えていく姿を、私は、娘に見せてやりたいです」

仲間がいればなんでもできる。その成果がファッションショーだ。
すみれと良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)、明美(谷村美月)をはじめ、商店街の主婦たち、キアリスのお客さん、近江の実家の人たちまでが着飾って音楽に乗って生き生きとランウェイを歩く。
近江の本家の嫁(山村紅葉)とそのまた嫁(三倉茉奈)まで参加。田舎でくすぶっていた気持ちを発散させる。
外国人相手の水商売に身を落とした悦子(滝裕可里)は誰よりも洋服を着こなし、羨望のまなざしを一身に受ける。
参加できなかったゆり(蓮佛美沙子)がショーの後、ひとりで洋服を当ててみている姿も愛おしい。

登場人物の誰もが、道の途中、歩みを阻まれて戸惑っている。その先に進む方法や、そもそも、道すらわからない。そんな人達が、前方に小さな希望の灯りを見つけて、また歩き始める(ランウェイRunway ・・・まさに道を)。そんな様子が描かれている。戦争という未曾有の出来事で日本中の誰もが等しくそうなってしまった時代だからといえ、このドラマ、ほんとうに自信満々、順風満帆に生きている人がひとりもいない。

とりわけ、悩み苦しんでいた紀夫君が、ファッションショー当日、お手玉3つ投げをやって娘さくら(河上咲桜)を笑わせることができ、ようやく自信をもったことで、すみれの気持ちに思いを馳せる余裕が生まれる。

「自分だけ浦島太郎のような気になってたけどそれではあかんのやな」

抱き合うすみれと紀夫君。すみれの控えめな抱きつき方と、涙で上着を濡らしてしまったことを気にする動作も、紀夫君のこれまた控えめな頭ポンポンも萌える。
紀夫君がネジを巻いて、時計が動き出す。前から時計の音が効果的に使ってあったが、この場面から逆算していたのだとしたらすごい。

満ち足りた48話のなかで、ひとりだけ栄輔(松下優也)だけが退場していくのが悲しいけれど、身内を失って孤独だった彼も、ひととき潔(高良健吾)やすみれやさくらに癒やされて、自分の道を進むと思えば、美しい退場だった。いつか再登場希望!

9週も、これからこれから!
(木俣冬)