東京〜岡山間の距離に相当する平壌〜恵山(ヘサン)間を走る1列車。時刻表通りなら23時間で走破するはずだが、北朝鮮の深刻な電力事情のせいで10日以上かかることすらあった。その救世主として登場したのが、ディーゼル機関車を使った特別列車だ。

ところが、この特別列車が最近、運行できなくなってしまったと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

朝鮮戦争の休戦後、故金日成主席は次のように教示した。

「我が国は電力が豊富なので必ず電気鉄道を敷設しなければなりません」

当時の北朝鮮は、世界最大級と言われた水豊ダムを擁し、石炭などの燃料も豊富だったこともあり、鉄道の電化工事が経済発展に結びつくと考えられたのだ。その結果、北朝鮮の鉄道の電化率は80%に達した。

しかし、90年代からは発電施設の老朽化、燃料不足、そして深刻な経済難により極度の電力不足に陥る。そして、高い電化率がアダになり、鉄道がマヒ状態に陥る。

その解決のために2014年に登場したのが、中国製の中古ディーゼル機関車を使った特別列車だ。

平壌と恵山を12時間で結ぶこの列車は、特別だけあって運賃も非常に高かった。電気機関車がけん引する一般列車は1200ウォン(約14.4円)だが、ディーゼル列車は9万2000ウォン(約1100円)。それがダフ屋の手に渡ると150元(約2470円)に跳ね上がる。

庶民にはとても手が出ない値段設定だが、商売人にとっては非常に便利な交通手段となっていた。また、出張で平壌へ向かう市や郡の党委員会の課長クラス、人民委員会の副委員長クラスの幹部は無料で乗車できた。

そんな「夢の超特急」が最近になって運行停止に追い込まれた。

RFAの咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は語る。

「水害復旧に動員された機関車は、まともな整備を受けられないまま、酷使されたせいで当面運行できないようになってしまった。また、2台は衝突事故で廃車となった」

情報筋によると、事故が起きたのは11月2日の午前のこと。会寧(フェリョン)市松鶴里(ソンハンリ)で、水害復旧に使う石と貨物を乗せていた列車同士が、カーブで衝突し、機関士が死亡し、機関車は大破した。

また、延社(ヨンサ)郡では、山崩れの土砂を運び出す作業を行なっていた機関車が転覆する事故が発生した。

こちらは部品を取り寄せて修理すればなんとかなる程度だが、何らかの事情で入手が困難なようだ。

当分の間、鉄道の運行が非常に困難になる見通しだが、バスを使えば全国どこにでも行ける。ただし、料金はかなり高く、庶民の手には届かない。交通ビジネスに新興富裕層であるトンジュ(金主)が続々と参入する中、相対的に以前より便利になったという声もあるが、まだまだ改善すべき余地がありそうだ。

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