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税務署などが主催する年末調整の説明会が全国で開催されています。私も先日税務署主催の説明会に参加してきましたが、源泉徴収義務者である多くの事業者が参加し、広い会場がほぼ満員になる盛況でした。税務署から「年末調整のしかた」「法定調書の作成と提出方法」、都税事務所から「給与支払報告書の作成と提出について」と順に説明があり、今回からマイナンバー欄が設けられた書類についてはどの欄に誰のマイナンバーを記載しないといけないのか、など丁寧な説明がありました。

こうした説明会に参加されている事業者の方々が、これから本格利用が始まるマイナンバーについて、どこまで準備ができているのかは分かりませんが、皆さん熱心にメモをとりながら説明を聞かれていました。

今からでも間に合うマイナンバー対策、前回はマイナンバーの収集もこれからという場合の、収集前の準備についてみてきました。今回は、実際にマイナンバーの収集をどのように行えば良いのかを見ていきましょう。

○従業員などからマイナンバーを収集する

いよいよ年末調整本番間近ですが、12月は従業員個々人について年末調整の計算とその結果により生じる過不足額を今年最後の給料等で還付または追加徴収し、本人に源泉徴収票で通知するまでの事務を行うことになります。ここまでの事務ではマイナンバーの記載が必要な書類はありません。マイナンバーの記載が必要となるのは、来年1月末までに税務署などに提出する源泉徴収票や支払調書などの法定調書、市区町村に提出する給与支払報告書などの書類を作成する際ということになります。

これからマイナンバーを収集する場合、まず、誰のマイナンバーが必要になるのか、いつまでに収集するのか、収集はどのような方法で行うのか、などを整理してからマイナンバーの収集にあたらなければなりません。

誰のマイナンバーが必要なのか

書類別に必要となるマイナンバーを整理すると以下のようになります

[表1]

「給与所得の源泉徴収票」は提出の条件として所得要件もあり、すべての従業員について提出するわけではありませんが、「給与支払報告書(個人別明細)」は、ほぼすべての従業員分を提出することになりますので、従業員からは本人およびすべての扶養親族のマイナンバーを収集しなければなりません。 「退職所得の源泉徴収票」は受給者が法人の役員の場合にかぎり提出する必要がありますので、該当するケースがなければ必要ありません。ただし、該当するケースがある場合は、退職者本人のマイナンバーを取得しなければなりません。 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」、「不動産の使用料等の支払調書」などの支払を受ける者が個人事業主の場合はその個人事業主のマイナンバーを取得しなければなりません。

いつまでに収集するのか

従業員の給与所得の精算業務である年末調整事務ではマイナンバーは使用しませんので、マイナンバーは来年1月末の提出期限に間に合うように収集すればよいことになります。とはいえ、年末から1月にかけてはどのような企業も慌ただしい状況にありますし、中小企業から年末調整や法定調書の作成を請け負っている税理士事務所も、この年末調整からその後の所得税の確定申告へと進む繁忙期に突入することになりますので、通知カードをきちんと保管できていない従業員などにより収集が遅れることも考慮して、はやめに収集できるようにスケジュールを組むことが大事です。

前回書いたように「マイナンバーを紛失、漏えいしないこと」をポイントに準備を整えることができたら、できるだけはやめにマイナンバーを収集することをお勧めします。

どのような方法で収集するのか

これまでの連載でもマイナンバーの収集方法については何度か触れていますので、ここでは、マイナンバーを電子データとして管理することを前提に、クラウドのマイナンバー管理システムを利用する場合とオンプレミスのマイナンバー管理システムを利用する場合の収集方法について、注意点も含めてみていきましょう。

なお、以下の方法では従業員などのマイナンバーを収集するにあたって扶養控除等申告書に従業員がマイナンバーを記載して収集する方法は考慮していません。これはマイナンバーを記載した書面を電子データとは別に管理することで、管理対象を増やさないようにするためですが、扶養控除等申告書にマイナンバーを記載しなくても良いようにするための方法については、別途次回以降触れることにします。

クラウドのマイナンバー管理システムを利用する
クラウドのマイナンバー管理システムを利用するマイナンバーの収集方法の特徴は、マイナンバーの持ち主である従業員などが直接クラウドのマイナンバー管理システムへ本人および扶養親族のマイナンバーを入力できることです。この機能を活かせば、自宅にいながらスマートフォンなどで入力することができますので、通知カードなどを持ち歩くことによる紛失リスクもなくマイナンバーを収集することができます。この場合、通知カードや免許証などをスマートフォンなどで撮影してアップロードしておけば、入力・アップロードされたマイナンバーや本人確認書類は中小企業の担当者とも共有することができますので、担当者はパソコンからオンラインで本人確認することができます。支払調書で必要となる支払先の個人事業主の場合も、同じ方法をとることができますので、マイナンバーを提供する個人事業主にとっても、より安心してマイナンバーを提供できる方法となります。

中小企業から年末調整や法定調書の作成を請け負っている税理士がクラウドのマイナンバー管理システムを利用している場合も、先に述べたように従業員など本人のマイナンバー入力、企業担当者による本人確認を経たマイナンバーを(図1) のように税理士事務所もクラウド上で共有することができます。事業者と税理士間でマイナンバーを受け渡す必要ありませんので、それだけマイナンバーを紛失・漏えいするリスクが軽減される仕組みとなります。

ただし実際には、従業員や支払先が自らパソコンやスマートフォンからマイナンバーの入力ができないケースもあります。従業員の場合は、本人の通知カードや扶養親族のマイナンバーを書いたメモ(あらかじめ書式を決めておくと良いでしょう)などを封筒などに入れて事業所まで持ってきてもらい、会議室などにパソコンを持ち込んで、担当者が一人ずつ本人確認をしながら入力すると良いでしょう。この場合、マイナンバーを持ち運ぶ本人が紛失等しないように十分注意すること、マイナンバーを記載したメモなどは入力後破棄すること、などが「マイナンバーを紛失、漏えいしないこと」のポイントとなります。

支払先の場合は、本人に直接面談できる場合、はパソコンとインターネットに繋ぐためのモバイル装置を持って行き、その場でクラウドのマイナンバー管理システムにマイナンバーを入力、本人確認をすれば、パソコン上にマイナンバーが登録されるわけではありませんので、紛失などのリスクもなく、支払先のマイナンバーを取得できます。本人に直接面談できない場合は、国税庁の「国税分野における番号法に基づく本人確認方法」で例示されている、「例4 個人番号の提供を依頼する書類を活用した本人確認」を活用すると、マイナンバーの取得と本人確認が同時に行えるので、より有効な方法となります。ただし、この場合は書類を郵送してもらうことになるため、担当者が必ず受け取りを確認し、担当者・責任者以外が開封等しないように徹底しておく必要があります。また、この場合もマイナンバー入力後は、書類を破棄して書面でマイナンバーを残さないようにすることが「マイナンバーを紛失、漏えいしないこと」のポイントとなります。

オンプレミスのマイナンバー管理システムを利用する
中小企業が自社内に設置したパソコンなどでマイナンバーを管理する場合、マイナンバーを収集する方法は、前項で従業員や支払先が直接クラウドのマイナンバー管理システムに入力できないケースで示したような方法で収集することになります。従業員の場合は、前項で提示した注意すべきポイントに留意して収集に当たればよいですが、支払先にパソコンを持ち込んで入力するケースでは、パソコンにマイナンバーを登録した状態で持ち運ぶことになりますので、担当者がパソコンを紛失しないように十分に注意する必要があります。

また、税理士に年末調整や法定調書などの作成を依頼している場合は、中小企業が収集したマイナンバーを税理士事務所に提供する必要があります。税理士事務所の利用しているシステムにもよりますが、マイナンバーを電子データで提供するのか、書面で提供するか、いずれかの方法によることになります。いずれの方法をとる場合でも、税理士事務所には一時期に関与している中小企業から大量のマイナンバーが集まることになりますので、事務所の担当者のみがマイナンバーの受け渡しを確実に確認できる体制が作られているか、確認しておく必要があります。また、税理士事務所では集まってきた中小企業の従業員などのマイナンバーを、事務所で利用しているシステムに入力することになります。この際、担当者以外の所員にマイナンバーを見られることのないように、パーテーションなどで入力作業をする場所を区切るなどの安全管理措置を講じる必要があります。また、マイナンバーを入力するために集めたデータや書面は入力が完了したら破棄することも、「マイナンバーを紛失、漏えいしないこと」のポイントとなります。

マイナンバーの取り扱いにおいてマイナンバーの収集は、マイナンバーの持ち主から中小企業等へマイナンバーを受け渡すことになるため、安全管理の面から見ても大きな関門となります。今回改めて収集方法について整理しましたが、マイナンバーの管理はマイナンバーの収集方法から見ても、クラウドのマイナンバー管理システムの方がよりリスクの少ない方法でマイナンバーを収集することができます。今時点でマイナンバーの管理システムについて検討段階にあるのであれば、クラウドのマイナンバー管理システムを利用されることを推奨いたします。

著者略歴

中尾 健一(なかおけんいち)
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役
1982年、日本デジタル研究所 (JDL) 入社。30年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。マイナンバーエバンジェリストとして、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。

(中尾健一)