飲酒時は、人間の表情認識力が大きく変化する

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 忘年会シーズン到来ということで、お酒を普段より飲む機会が多くなる今日この頃。お酒を飲むと、嫌なことが「バ〜」っと無くなった気がして、楽しい気分が「パ〜」っと押し寄せて来て、ついつい飲み過ぎてしまいます。

 そして、次の日……

 財布の目減りの大きさに気付き、反省したり、
 二日酔いで気持ち悪くなったり、
 仕事を途中で投げ出して来たツケが回ってきたりと……。

 お酒の魅力と翌日の反省との格闘を日々、みなさん?少なくとも、私はしています。もっと綺麗にお酒と付き合いたいものですが、私の反省はさておき、本日はお酒と顔との切っても切れない関係について2つの話題をご紹介したいと思います。

 まず一つ目、

 お酒を飲むと、異性が美人・イケメンに見える!のです。

 それはなぜでしょうか?

◆お酒を飲むと異性が魅力的に見えるのはなぜか

 私たちの顔というものは、整形手術をしていない限り、微妙に左右非対称に出来ています。右と左の眉の位置が微妙に違うとか、唇の端(口角)が微妙に左だけ引き上がっているとか、左右で目の大きさが違うとか、人によってそれぞれです。

 このように私たちの顔は左右非対称なのですが、左右非対称であるがゆえに、と言うべきでしょうか、私たちは左右対称の顔を美しいと思う傾向にあります。顔が左右非対称であればあるほど、その顔を醜いと感じ、左右対称であればあるほど、その顔を美しいと感じる傾向にあることが知られています。

 左右対称の顔を美しいと思う理由にはいくつか説があるのですが、有名なものとしては、左右対称というのは優れた遺伝子を持っているシグナルだと言われています。

 私たちは左右対称の顔を見て、こうしたシグナルを無意識に受け取り、「美しい!」と感じるのです。そんなメカニズムとお酒がどう関係しているのでしょうか?

◆飲酒がもたらす顔補正機能とは

 私たちはお酒を飲むと平衡感覚を失います。それは当然、視覚にも影響します。

 つまり…

 左右非対称の顔を観る⇒普段なら何とも思わない

 ということなのですが、

 左右非対称の顔を観る⇒お酒を飲んで観る⇒視覚が歪む⇒左右非対称の顔が左右対称に補正される⇒美人・イケメンに見える

 ということなのです。よく「お酒の勢いで○○な失敗を!」「酔っていたから△△な失態を…。」という言い訳を聞きますが、これは顔・表情認知の世界から言うと、あながち的外れな言い訳ではないのです。そして、普通の顔が美女・イケメンに見えるくらいなら、まだ可愛いものなのですが、お酒の影響で私たちの表情認識力も影響を受けることがわかっています。

 中でも気を付けたい表情は、怒りと嫌悪との混合です。

◆酒を飲むと、「怒り」と「嫌悪」を区別できなくなる

 怒りは攻撃行動につながる危険な表情です。目の前の相手が怒り表情をしていれば、私たちは咄嗟に防御・逃走・闘争態勢を取ります。嫌悪は、不快なモノを体内に入れたくないという消極的な感情を意味するため、目の前の相手の嫌悪表情を見ても、私たちの身体は積極的な行動を取ろうとはしません。

 お酒を飲むと私たちの表情認識率が低下します。そうすると、一見似ている怒り表情と嫌悪表情とを取り違えて認識してしまう可能性があります。つまり目の前の相手が、本当は嫌がっているだけなのに(=嫌悪表情)、攻撃する意思がある(=怒り表情)と誤解してしまう恐れがあるのです。

 お酒の席でケンカが起きやすいのは気分が大きくなっているという理由もあると思いますが、こうした表情の読み間違いから来ている可能性もあるのです。折角の楽しいアルコールの席。あらぬ誤解で財布の中身も人間関係も台無しにしたくないですよね。お酒の及ぼす影響を頭の片隅に入れて頂き、楽しく飲んで頂ければと思います。

 さぁ、私はこれから飲み会に行ってきます。

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

<文・清水建二>
1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。