共同通信社外信部次長が「プーチン外交と日露関係」と題して、東京都内で講演した。12月のプーチン大統領と安倍首相との会談について、プーチン側が外交的には一枚上手であると指摘。「領土問題、平和条約などでの進展はない」と語った。

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2016年11月25日、モスクワでの取材経験が豊富な共同通信社外信部次長が「プーチン外交と日露関係」と題して、東京都内で講演した(新聞通信調査会主催)。12月のプーチン大統領と安倍首相との会談について、北方4島での『共同経済活動』を呼びかけたプーチン側が外交的には一枚上手であると指摘。「領土問題、平和条約などでの進展はない」との見通しを示した。発言要旨は次の通り。

ウクライナからのクリミア半島編入でG8から追放されたプーチンのロシアは、ウクライナ東部への介入に加え、2015年9月に開始したシリアへの軍事介入が長期化し、シリア・アレッポ空襲で欧米から批判を招いている。欧米との対立は今後も続く見通しだ。

プーチン外交の基本姿勢は(1)現実を直視した実利主義=イデオロギーのために損はしない、(2)国連中心主義=常任理事国としての立場・権限(拒否権)を100%利用する、(3)多極化した国際秩序の追求=「米国中心」「一極集中」に対抗し生き残りを図る―など。

この外交路線は、旧ソ連圏や中国、インドなども含めた全方位外交=「ユーラシア主義」を引き継いだもの。米国の「単独行動主義」に反対。2003年のイラク戦争で米国への不信感高まった。2007年のミュンヘン安全保障国際会議でプーチンは「NATO(北大西洋条約機構)の拡大によって欧州大陸を分断する線が引かれ、壁が築かれようとしている」と欧米を非難した。

北方領土問題でのロシアの真意は、1956年の日ソ共同宣言は履行するが、領土問題は最大限引き延ばしすることだ。プーチンはリマでの記者会見でも「信頼醸成が必要であり、その手段として(北方4島での)『共同経済活動』が必要」と呼びかけたが、安倍首相は(ロシアの主権を認める)共同経済活動に言及できなかった。プーチン発言には“期待値”を沈静化する意図があり、外交的には向こう(プーチン)側が一枚上手である。

クリミア半島編入後に愛国心が鼓舞され、領土返還に世論は反対。経済協力でロシア国民に恩恵が感じられて初めて引き渡しの条件が整う。プーチンはリマで「日ソ共同宣言には(2島返還について)どんな条件で引き渡すか、主権がどうなるか書かれていない」とトーンダウンした。

12月にプーチン大統領が来日し、山口県・長門市で安倍首相と会談するが、領土問題、平和条約などでの進展はないだろう。

米国で次期大統領にトランプ氏が就任することをロシアは歓迎、米ロ関係改善の契機になると見ている。米露関係が改善されればロシアの対日政策が厳しくなるとの見方もあるが、日露関係への影響はあまりない。(八牧浩行)