フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦、NHK杯の女子シングル。大会2連覇を狙った宮原知子は、ショートプログラム(SP)3位から、フリーでは順位をひとつ上げて総合2位となり、GPシリーズ上位6人が進むGPファイナルに、滑り込みの6番目で2年連続出場を決めた。宮原がフリーで意地の演技を見せたことで、日本女子は16季連続でGPファイナル出場を果たすことになった。

 シニアデビューシーズンを戦う期待のホープ樋口新葉は、SP5位でファイナル初出場のチャンスをうかがったが、フリーでは3回転ループが2回転になったり、回転不足があったりするなど、ジャンプで細かいミスが出て得点が伸び悩み、総合4位に終わった。また18歳の松田悠良は、SPもフリーもノーミスの演技を披露して7位となっている。

 優勝は、昨季の世界選手権銅メダルのアンナ・ポゴリラヤ(ロシア)。SP首位からフリーもトップに立ち、合計210.86で大会初制覇。遅咲きの18歳は、これで今季GP2大会連続優勝を果たし、好調ぶりが際立っていた。

 GP最終戦の結果により、ファイナルに進出するのはポゴリラヤ、NHK杯総合3位でファイナル初出場となるマリア・ソツコワ、そしてスケートカナダとフランス杯の2大会で優勝を飾った世界女王のエフゲニア・メドベデワ、中国杯優勝のエレーナ・ラジオノワのロシア勢4人に加え、初出場となるカナダの新鋭ケイトリン・オズモンド、そして昨季のファイナル銀メダルの宮原という顔ぶれとなった。

 ここ数年、ファイナルはロシア勢と日本勢、米国勢で覇権を争ってきたが、今季は特にロシア勢の活躍が目立つ結果となった。

 日本人でただひとりファイナル出場を決めた宮原だが、今季は苦しい戦いを強いられている。GP初戦のスケートカナダでは、以前からの課題だったジャンプの回転不足を厳しく取られたほか、エッジエラーの「eマーク」や「!マーク」をこれでもかとつけられ、さらにフリーではステップでレベルもつけてもらえない0点という衝撃のスコアを出される試練があった。

 2戦目のNHK杯でも、回転不足のジャンプがSP、フリー合わせて3つもあったうえ、フリーの3回転フリップでは「!マーク」がつけられた。SPでは、跳び急いだことで得意の3回転ルッツで珍しく転倒。一方フリーでは、回転不足にならないようにと考えすぎたことで、逆に力みすぎて回転不足を誘発してしまうミスが出た。

「ミス・パーフェスト」の異名通り、練習ではしっかりと回転しているジャンプを跳んでいるというが、試合では回転不足を取られないジャンプを意識するあまり、どうしても緊張して縮こまってしまい、回転不足になってしまうというのだ。

 シーズン前半戦を戦い終えた宮原は苦しい胸の内をこう語っている。

「今回のNHK杯は苦しい戦いではありましたが、フリーで何とかまとめられて、GPファイナルも出場できて、ひとまずよかったです。ファイナルではしっかり自分の演技をしたいと思っています。練習ではパーフェクトにきっちりジャンプを跳べるようになっているので、本番でどれだけ緊張しないで滑れるかという気持ちの問題だと思うので、(本番で)自分が変わるしかないと思っています」

 シニア4年目を迎えた今季、これまでの経験や実績をみれば、もっと自信を持って試合に挑んでもいい実力を持っている宮原だが、「まだメンタルの弱さがある」と濱田美栄コーチは指摘する。

 そこでシャイな18歳に、メンタル強化や自分の殻を打ち破るには何が必要かを聞いてみたところ、「どういうことをしたらいいかはあまりまだ分からないですけど、練習ではきっちりとできているので、試合で変に緊張せずに、力を出せるようにならないといけないと思います。(「ひと皮むけたか」との問いに対し)ちょっとだけ、むけつつあります」と、照れながら答えてくれた。

 さらに対戦相手について聞くと、「日本ではジュニアの上手な選手が出てきて追われる立場になっていますが、世界には自分よりも上手な選手がたくさんいるので、まだまだ追いかける立場だと思っています」と答えた。

 宮原が名実ともに日本の女子フィギュアを引っ張る存在になるためにも、そろそろメンタルの弱さを返上して、フリーのテーマのように「戦う強い女性」へと変貌することが期待される。宮原世代の活躍なくして日本女子の発展はない。その意味でも、強敵がそろうファイナルでは是が非でも表彰台を死守してもらいたい。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha