トヨタの4代目プリウス(「Wikipedia」より)

写真拡大

 トヨタ自動車の新型プリウスPHV(プラグインハイブリッド車)は、家庭用100Vコンセント、200Vの専用コンセント、急速充電器など、さまざまな方法で充電が可能だ。この便利さが充電に関するさまざまな誤解を生む根源だが、「PHV急速充電反対論」もある。

 HV(ハイブリッド車)であるPHVは、エンジンだけでも走れる。一方、EV(電気自動車)は絶対に充電しないと走れない。したがって、ロングドライブでは高速道路や道の駅などの急速充電設備での充電が必須だ。

 そうした急速充電施設に、電欠ぎりぎりで到達したEVユーザーがいざ充電しようとしたら、充電器にPHVがつながれている。しかもドライバーはいない。急速充電器のメーターを見ると、すでに充電は終わっているが、いつまで待ってもPHVのドライバーは帰ってこない。これで腹の立たないEVユーザーは珍しいだろう。EVユーザーに言わせれば、「PHVは充電しなくても走れるのだから、早くどいてよ」ということなのだ。

 一方、PHVのユーザーは、「(常にそうだとは限らないが)急速充電を繰り返すと燃料代が安い」「電気モーターだけで走れるので、静かで振動が少なく快適だ」といった理由で急速充電がしたい。そこで、PHVとEVのユーザーは言い合いになる。さて、どうするか。

●譲り合いの精神が必要か

 一部の急速充電施設では、まだ充電器の数が少なく混み合うことがある。こうした混み合う施設では、複数台の充電器が設置されるようになった。電池や充電器を改良して充電時間を短くするといった自動車メーカーと施設側の対応が求められるが、現状では譲り合いの精神が求められる。

 EVにしてもPHVにしても、使用環境は居住地の周辺であるのが普通である。そうした範囲の使用では、自宅で充電すれば不便はない。高速道路や道の駅で充電するケースは滅多にない。次世代車ユーザーの大半がこうした使い方をしているので、「充電インフラが整備されていないからEVは普及しない」という、かつて賑わった議論は成立しない。

 だが、私用ではなく業務でこれらの次世代車を使う場合、あるいは私用でも年に数回のロングドライブでは、急速充電が必要になる。充電で込み合うケースもあるので、しばらくは「充電待ち」という我慢をしなければならないだろう。

●技術で譲り合いの心を不要にする

 現在の急速充電器の出力は、大半が50kWである。これを馬力に直すとおよそ68馬力である。ターボの付いた軽自動車並みのエンジンをアクセル全開で回した場合の出力だ。

 たとえば日産自動車のリーフの旧型には24kWhの電池が搭載されている。50kWの充電器で最高出力で充電すると30分で満充電できる計算だが、実際はそうではない。電池や施設の都合で、急速充電器は常に最高出力で動いているわけではないからだ。

 急速充電をすると電池の温度が急速に上昇する。一方、電池は走行直後には温度が高い。高速道路のように高速で走った後はとくに温度が高くなる。こうした高温状態で急速充電すると、電池の寿命が短くなりやすい。そこで、それぞれの電池の特性とそのときの状態に合わせて、急速充電器の出力を調整する。これは充電時間を調整するということだ。

 電池の温度が上昇するのは、電池そのものの電気抵抗(内部抵抗)による。近い将来に実用化が期待される全固体式リチウムイオン電池は、内部抵抗が少ないので温度上昇も少なく、充電のスピードも速くできる。

 そうした電池の進歩に合わせて、たとえば急速充電器の最高出力を150kWにすれば、充電時間は現在の3分の1 以下になる。

 そうなれば、プリウスPHVでは空の状態からで3分30秒、三菱自動車工業のアウトランダーPHEVで4分42秒、あるいは米テスラモーターズのモデルSでは30分で、500km走行分の電気を充電できる。充電希望者同士のトラブルも少なくなり、譲り合いの心という美徳も不要というわけだ。

 こうして技術の進歩は生活を便利にはするのだが、生活から潤いをなくしもする。寂しい限りである。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)