「Thinkstock」より

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 警視庁保安課は先月、東京・吉原の風俗店2店の経営者らを売春防止法違反(場所提供)の疑いで逮捕した。2店は“プロの”女優が在籍していると宣伝して人気を集めていた。

 インターネット上には「何を今さら」の声があふれている。個室の中で女性と客が本番行為をするのは常態化し、広く知られている。

 風俗情報サイトの編集長がこう語る。

「法律的な話をすれば、ソープランドはあくまでも『特殊浴場』です。よって、“ソープ=売春”ではないのです。売春ではなく、個室内での湯女との自由恋愛という建前になっています。とはいえ、本番行為も暗黙の了解です。だから警察が叩こうと思ったらどんな店でも叩けるのです」

 では、警察はどんなときに風俗店を摘発するのか。「明るい警察を実現する全国ネットワーク」の代表、清水勉弁護士は、一般論としてこう指摘する。

「大きくは、利権とノルマの2つがあります。いわゆる、暴力団への“みかじめ料”の支払いでトラブルになることがあるといわれています。暴力団は風俗店にみかじめ料を求めることがよくあり、その金額が大きい場合、使途不明金として税務署や警察に目をつけられることがあります。

 また、警察には『年に何軒摘発する』というノルマがあります。そういう警察の摘発に協力して、摘発されたフリをする店もあるといわれています。加えて、同業者の潰し合いというケースもあります。荒稼ぎして目立つと、他店が警察に密告するのです。法の建て前という意味では、風俗とパチンコは似ていて、パチンコ関連企業に定年後の警察関係者が再就職しているのも利権みたいなものだ」

 摘発された2店は、約7年で計約10億2900万円の売り上げがあったと報道されており、同業者の妬みになるほどの金額かどうか定かではないが、派手にPRしていたのは事実だ。目立ちすぎたということは考えられる。

 ちなみに、保安課が家宅捜索した際、女性計28人がスタンバイしていたが、うち7人がAV女優だったといわれている。

 なお、逮捕された経営者は芸能プロダクションも運営していたようで、そこから女優を引っ張ってきたという話もある。最近は「成人向けビデオ出演強要」が話題になり、ビデオ制作にかかわるプロダクションに対する風当たりが強くなっているため、警察はプロダクションの動きに目を光らせているといわれる。

●「売春防止法」とは

 清水弁護士は、今回の容疑が売春防止法違反であることに注目する。

「風営法違反は割と簡単に摘発しやすいので、警察は同法での摘発を狙うことが多いのが現状です。売春は立件が難しいので、今回あえて売春防止法違反容疑での摘発に動いたということは、行為とお金のやり取りの両方について押さえていると考えられます。つまり、警察がなんらかの証拠を得たか、もしくは店で働く女性が警察に情報を持ち込んだ可能性もあります」

 ここで、売春防止法がどんな法律なのか、簡単に紹介しておく。

 売春防止法が成立したのは1956年。終戦後の混乱から日本が抜け出し、高度経済成長期が始まったころだ。

 売春防止法では、売春をすることと、売春の相手方となることについては、禁止はされているものの罰則は設けられていない。つまり、売春の当事者たちは処罰されない。

 この法律で刑罰を科されるのは、「売春の勧誘や周旋をする行為」と「売春をさせるための契約をする行為」である。

 前者でいえば、人を騙して売春させたり、暴行・脅迫を用いたりして売春を行わせた場合も処罰される。後者でいえば、事情を知りながら売春の場所を提供すること(場所提供罪)、自己の占有・管理する場所または自分の指定する場所に人を居住させ、その人に売春させること(管理売春罪)も処罰される。今回2店が摘発されたのは、場所提供の容疑だ。
(文=横山渉/ジャーナリスト)