トランプ米次期大統領が選挙中の公約通り、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明。TPP発効が絶望的になり、新たな貿易の枠組みとして東アジア域内包括的経済連携(RCEP)が注目を集めつつある。

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2016年11月26日、アジア太平洋地域の新たな貿易の枠組みとして東アジア域内包括的経済連携(RCEP)が注目を集めている。米国のトランプ次期大統領が選挙中の公約通り、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を改めて表明。TPP発効が絶望的になったためだ。日本政府も中国と主導権を争うRCEPの交渉を加速させる構えだ。

13年に始まったRCEP交渉には日中韓3カ国と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10 カ国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの計16カ国が参加。今月初めにフィリピンのセブ島でRCEPの第2回閣僚中間会合が開催された。TPP参加12カ国中、日豪シンガポールなど7カ国はRCEPにも参加している。RCEP域内の人口は世界の半分の34 億人、国内総生産(GDP)は約3割の20兆ドルに上る。

ペルーの首都リマで20日閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、「世界の成長センター」とされる域内の経済統合をめぐり、日本と中国が主導権争いを繰り広げた。中国は地域全体の経済統合を目指す「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」構想の早期実現を提唱。RCEPを土台と位置付け、RCEPの妥結を優先すべきだと主張した。FTAAP構想の「交渉入り」も模索した。

これに対し、日本はAPEC閣僚会議で中国の提案をはねつけ、FTAAPの交渉開始を前提とする「事前調査」の着手も阻止。課題を整理する共同研究の継続にとどめた。首脳会議では安倍晋三首相はTPPを念頭に「FTAAPは腰を据えて質の高い協定を目指すべきだ」と発言、中国をけん制した。

しかし、肝心のTPP発効が困難となり、中国を含むRCEPの実現を望む声がASEAN加盟国などから一層強まるのは必至だ。TPP参加国のペルーはRCEPに参加するための協議を中国といち早く始めたことを明らかにしたほか、ニュージーランドのキー首相は「(米離脱時の)空いた場所は中国が埋める」と発言。シンガポールのリー首相も「アジア貿易圏の構築に中国が関与するのは適当だ」と述べた。

米国が抜けるとTPPの経済規模は、世界のGDPの36%から14%へ大幅に縮小。TPPの存在意義は薄れ、世界2位の経済大国である中国が加わるRCEPの魅力が一層高まる。中国は17年の交渉妥結を求めており、日本も交渉のアクセルを踏むかどうかの判断を迫られ、通商戦略の修正を余儀なくされた格好だ。

RCEPが実現すれば、TPPに劣らない巨大な経済圏となり、日本企業にとっても、部品供給網を構築したアジアを網羅するだけに関税の削減・撤廃、貿易規制や手続きの透明化などでメリットが見込める。TPPに代わる成長戦略の柱となる可能性もある。

安倍首相も米大統領選後の国会答弁で、米国のTPP離脱を想定し、「その場合は、RCEPに軸足が移る」と答弁。さらに首相は「RCEPでGDP最大の国は中国だ」とも述べ、地域の通商体制が米国を外して中国主導となりかねないとして、危機感を強めていた。(編集/日向)