これからの季節、浴室やトイレなど、暖かい部屋から冷たい部屋に移動した際に、心臓突然死、脳神経疾患などを発生する人が急増する。いわゆる“ヒートショック”と呼ばれるものだ。
 10月22日、俳優の平幹二朗さんが東京都内の自宅の浴槽で倒れているのを発見、死亡が確認された(享年82歳)。この死因も、ヒートショックによるものと見られている。

 冬になると、暖房が効いた居間と、脱衣所や浴室などの温度差が10℃以上になることはよくある。そんな中、鳥肌を立てながら浴槽へ急ぎ、さらに熱い湯船へと一気に浸かることもあるだろう。
 しかし、このごく短い移動、小さな動きで、急激な温度変化が身体を襲い、それが血圧の上昇や下降を引き起こす。それが“ヒートショック”だ。
 この症状は、人体に非常に大きな負担をかける。特に入浴中に起こる突然死の大きな要因だ。

 日本大学医学部附属板橋病院・脳神経科担当医は、こう注意を喚起する。
 「熱い湯船に急に入ると、血圧が上昇した場合は脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などで死亡する恐れがあります。逆に、急激に血圧が低下した際は脳貧血を起こして浴槽でめまいを生じ、湯船で溺れる危険性もある。12月過ぎから1月は、1年のうちで入浴中の突然死が最も増えるので、特に注意が必要です」

 ヒートショックで亡くなる人は年間約1万人で、何と交通事故死の2倍にも上る。そのうち浴槽内での溺死者の8割は、65歳以上の高齢者。今年の冬はとりわけ厳しい寒さになるとされ、事故が増えそうな気配だ。
 「ヒートショックという言葉は、医学事典を探しても載っていない用語。医療よりむしろ、建設業界で使われてきた言葉で、最近になって医療現場で使われるようになったのです。ひと昔前の家の場合、暖かいのはコタツの中ぐらいで、部屋は均一に寒かった。つまり、温度差がないことからヒートショックなどというものは起きなかったのですが、やがて暖房器具の発達から、事故が話題になり始めたのです」

 冬場の一般的な住宅内の室温は13〜18℃。しかし、ファンヒーターが入っている室内は23℃程度まで上昇する。そんな室内でくつろいでいた高齢者が、入浴やトイレに立って行くと、温度差に身体がついていけず“事故”を起こす。
 「最近の高気密の住宅はともかく、1980年以前に建てられた断熱性能の弱い木造家屋ほど、室温差が発生しやすいとされる。暖かい部屋では血圧、脈拍が安定していても、寒い浴室脱衣所で服を脱ぐと、急激に血管が収縮し、血圧が上昇する。さらに浴室も最初は温度が低いので、血圧は一層上がってしまう。加齢とともに血管がもろくなってくると尚更のことです」(医療ライター)