J2の千葉と東京ヴェルディが、来シーズンの監督を海外から招聘するようだ。

 千葉の新監督就任が濃厚とみられるのが、アルゼンチン人のファン・エドゥアルド・エスナイデルだ。1991年に行なわれたワールドユース代表のひとりで、当時のチームメイトには現トッテナム監督のマウリシオ・ポチェティーノ、現アラベス監督のマウリシオ・ペジェグリーノらがいる。
 
 現役時代はポチェティーノやペジェグリーノと同様に、リーガ・エスパニョーラを主戦場とした。最初に在籍したレアル・マドリーではほぼ活躍できなかったが、レアル・サラゴサ、アトレティコ、エスパニョールなどでそれなりの輝きを放った。パワフルなプレースタイルと気性の激しさで知られたストライカーで、相手DFや主審といつもやり合っていたような印象がある。
 
 監督としてはサラゴサB、コルドバを率い、9月まで2部のヘタフェで采配をふるっていた。この43歳のアルゼンチン人に、日本との結びつきはほとんど見当たらない。とはいえ、指揮官としてのキャリアは、ビッグクラブへ立ち向かっていく立場で統一されている。その意味では、J1昇格というターゲットを思い描きやすいかもしれない。
 
 ヴェルディが新監督に迎えたミゲル・アンヘル・ロティーナは、母国スペインで豊富な経験を持つ。どちらかといえば中小規模のクラブで結果を残してきた59歳は、エスナイデル以上にJ2というカテゴリーに馴染めそうだ。
 
 2016年のJ2リーグで、外国人が監督を務めたクラブは横浜FCだけだった。スロベニア人のミロシュ・ロスが体調不良で辞任してからは、22チームすべてが日本人監督によって率いられていた。J2リーグという舞台は日本人監督が経験を積む場所となっていると同時に、経営的な視点も欠かせないだろう。年俸、住居、車、通訳、家族のケア、右腕となるコーチングスタッフ……諸々のコストを合計すると、外国人監督は費用対効果が読みにくい。「お金はかかったけれど結果は」ということにもなりかねず、その場合の経済的ダメージは深刻だ。
 
 千葉もヴェルディも、日本リーグからの名門である。だとしても、J1昇格プレーオフに絡めなかった今シーズンを考えれば、思い切った方針転換と言っていい。より直接的な言い方をすれば、大胆な投資ということになる。
 
 その要因には、Jリーグが結んだ巨額の放映権料があると考えられる。各クラブへの分配金が増えることで、外国人監督や外国人選手を獲得する動きが活発になっていくかもしれない。

 クラブの資産規模を大きくするには、J1昇格が何よりの近道だ。とはいえ、昇格してもすぐにJ2へ逆戻りするようでは、経営の安定化は実現しない。

 リーグ戦形式のプロスポーツは、選手を獲るクラブと引き抜かれるクラブに別れる。これはもう必然だ。即効性を見込む投資をするクラブがある一方で、先行投資をするクラブがあっていい。「我々は育成組織にお金を注ぎこみます」というのも、クラブ経営としての在りかたのひとつだ。

 大切なのは、自分たちの立ち位置を見失わないことである。手にしたお金をどのように使うのかで、5年後、10年後のクラブの立ち位置が変わっていく。