欧米の投資マネーの流入により、年始からの金価格の上昇は約20%。価格急騰の裏側では、インドや中国などの買いは見送られていた。特にインドの落ち込みが大きい。その背景にあるインド固有の金を取り巻く環境とは…。

厳しい輸入規制が敷かれているインド。金需要には復活の兆し

今年の前半に大きく値を上げたドル建て金価格。買いの主役は、欧米の投資マネーだった。価格の急騰は、インドや中国の「実需」と呼ばれる現物買いを手控えさせ、両国はともに金需要が大きく落ち込んだ。上半期はインドが 30 %減の247トン、中国は10 %減の444トンと、インドの減少が際立っている。これまで圧倒的な需要を誇ってきたインドで、何が起きているのだろうか。

インドの金保有の慣習は、農村部を中心に広く見られ、宗教的な背景もあり余裕資金は宝飾品や地金・金貨で保有するのが一般的。宝飾品も24金(純金)あるいは 22 金(純度 91 ・7%)以上で、身を飾るとともに資産価値を重視している点がファッション性重視の日米欧とは異なる。

インドといえば、かつての新興国ブームが陰る中で、今なお年率7%台後半の高成長を続けている国。しかも個人消費が成長を支えていることでも知られる。多少の価格上昇もはね返すくらい、金購入に勢いがあってもおかしくはない。もともと価格には敏感なお国柄で、値上がり時には様子を見ることで知られているが、インド政府による輸入規制が金需要を抑えている。

インドの輸入品を金額ベースで見ると、最大が原油だ。これは人口大国であり産油国でもないので納得できる。金額には差があるものの、第2位はなんと金だ。インドは貿易赤字国であり、経常収支と呼ばれる海外との資金のやり取り全般で見ても昨年までは赤字大国だった。そんな状況にもかかわらず、経済には何の足しにもならない金の輸入に資金が回ることが疑問視されたのが2012年のこと。当時の中央銀行ラジャン総裁を中心に輸入規制論議が巻き起こった。その結果、貴金属全般の輸入関税が引き上げられた。金については輸入した20%を宝飾品などに加工したうえで輸出しないと次の輸入は認めないという規制まで敷かれた。さすがに、この再輸出条件は撤廃されたが、現行では 12 %の税が課され、厳しい規制は維持されている。この結果、当然ながら金輸入は減少したが、その一方で密輸がはびこり、インドの金需要は実態が見えにくくなった。

ところが最近になって状況に変化の兆しが出てきた。それは、原油価格の下落によりインドの経常収支の赤字が減り、4〜6月期はGDPの0・1%と9年ぶりの低水準となったことに表れている。すでに規制緩和に向けた動きも出ているとされ、10 月に入って以降の相場の調整局面入りもあり、インド需要には復活の動きが出てきている。

マーケット・ストラテジィ・ インスティチュート代表

亀井幸一郎 KOICHIRO KAMEI

中央大学法学部卒業。 山一證券に勤務後、日本初のFP会社であるMMI、金の国際広報・調査機関であるWGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆・講演など 幅広く活躍中。