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 日本最大規模の免税店を経営するラオックスは、中国人観光客による「爆買い」の恩恵を最も受けた企業の1つだろう。旅行代理店などと組んでツアー客をしっかり押さえることで、昨期は売上高が前年比で約2倍、純利益は約7倍という驚異的な数値を記録した。

◆爆買いの終了で売上高は?

 ところが、今年に入って「爆買い」の終焉がささやかれるようになった。中国人旅行客が日本の店舗のぼったくりを敬遠するようになったことなどが理由だと言われている。すると、ラオックスはそのあおりを受けて売上高を急減させた。5、6、7月は前月比40%以上減、8、9月はなんと前年比で50%以上も減った。

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 8月に高額請求が話題となって利用者やマスコミから非難が相次いだPCデポや、絶不調が指摘された昨年のマクドナルドでさえ、前年比はせいぜい20%減だから、その凄まじさが窺い知れる。

 だが、ラオックスはこうした状況下でも積極的な店舗拡大を続けている。’15年1月には17店舗だったのが、’15年末には33店舗に。売上減が明らかになった今年も9店舗を増やして合計42店舗となった。強気な攻めの姿勢を保っていても大丈夫なのだろうか?

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 具体的な数字を見ていき、ラオックスの全体像を掴みたい。まず、ラオックスの売上の内訳は、国内・海外とその他事業に分かれる。

◆国内店舗事業が収益の柱

 海外は中国での販売が中心だが、これは売上・利益ともにここ数年減衰傾向にある。最新の決算では、約17億円の売上に対して、5億円近い損失を出している。

 収益の柱はやはり国内だ。第3四半期では売上が473億円、利益は22.6億円ある。海外事業で大幅な赤字を出しているのも吸収して全体でも黒字を保っている国内事業の収益力には目を見張るものがある。その底強さの理由は何だろうか?

 そもそも冒頭で述べたように昨年比で売上高50%以上減という異常な数値を叩き出しているが、一昨年と比較すれば、各月ともにプラスである。

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 ある意味、昨年が特需だったとも言える。

 Googleマップなどでラオックスの出店場所を確認すると、大きな駅を出てすぐのところに店舗を構えているヤマダ電機などと比べて、少し離れたところに出店していることが分かる。集客は旅行代理店との提携に頼って、出店地は少し賃料の安いところにしているというわけだ。

 そして、人件費も非常に低い。平均年間給与は400万円以下と、同社が上場している東証2部の中でも低水準な上に、社員1人あたりの売上高が1億円近くあり、5000万円程度の同業他社と比べると高い。社員数が少なく単価も低いため人件費は抑えられるというわけだ。損益分岐点がので、売上減にも耐えうる体力を有しているとも言える。

 会社の借り入れ依存度の低さを示す指標である自己資本比率も80%台と、安泰だ。

◆改善のポイントは「品揃え」と「値付け」

 「爆買い」による特需があるまで、ラオックスは13年連続で赤字を出していた。それでも潰れない仕組みを構築していたのはある意味で見事である。

 今年度も第3四半期までの累計では黒字だが、さすがに1半期だけでみると赤字になっている。積極出店による賃料の増加はこれから重くのしかかってくる。

 しかし、ラオックスは短期的には赤字に再度転落しても、気にもとめず拡大路線を続ける可能性がある。

 マクロ環境に目を向ければ、東京オリンピックまで訪日外国人が増え続けるトレンドは続く。今後4年間で倍増するという見込みもある。現在は訪日中国人にそっぽを向かれて苦戦しているラオックスだが、今のうちに着々と地方にも出店を進めて受け皿を作りつつ、観光客を呼び戻す施策を打っていくのだろう。

 旅行代理店との強力なパイプがある限り、集客自体は安定的に見込める。改善ポイントは品揃えや値付けをどのように顧客に合わせていくかである。ラオックスが今後どのように変容していくか、要注目である。

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok