鬼才マッテオ・ガローネが描く女の性『五日物語 3つの王国と3人の女』

写真拡大

カンヌを二度制した鬼才マッテオ・ガローネが、ヨーロッパ最古のおとぎ話を映画化した『五日物語 3つの王国と3人の女』。

『ゴモラ』『リアリティー』で、カンヌ国際映画祭グランプリを二度受賞したイタリアの鬼才マッテオ・ガローネ。最新作『五日物語 3つの王国と3人の女』では、17世紀イタリアで誕生したおとぎ話『ペンタメローネ/五日物語』から3つの異なる物語を抽出し、ソの性イ鬟董璽泙砲靴真縞イ淵澄璽・ファタジーを紡ぎ出した。


(C) 2015 ARCHIMEDE S.R.L. - LE PACTE SAS

-まずは、企画の成り立ちから教えてください。これまでも非常にオリジナリティの高い作品を撮られてきましたが、今回のジャンバティスタ・バジーレによる原作も監督ご自身で選ばれたのですか?

そうだよ。僕はプロデューサーも兼務しているからね。ヨーロッパ最古のおとぎ話『ペンタメローネ/五日物語』は、イタリア文学における大傑作なんだけど、イタリアでも世界でもあまり知られていない作品なんだ。キャラクターもすごく豊かなんだけど、それと同じくらい視覚的なビジュアルにも富んでいる。もともと僕は画家だったから、この物語が秘めるヴィジュアルを映像化したいという思いも強かったんだよ。

映画作家として常に変化し続けたい気持ちも強くて、常に違うジャンルに挑戦したい気持ちもあった。だから、シリアスな『ゴモラ』の後にコメディの『リアリティー』を作ったし、その後は17世紀という過去の世界と現在の繋がりを模索したいと思って、この作品に着手したんだ。

この物語には、おとぎ話という側面があるんだけど、それは僕の作品のすべてに共通してあるものなんだ。今まで手がけた作品は、現実からスタートして抽象的な次元に繋げていくという手法で作っていたんだけど、今回は魔法の世界からスタートしてリアリティーに繋げていくという、逆のアプローチで撮ったんだ。

-原作にある数ある物語の中から、女性の執念、女の性みたいなものにテーマを絞りこんでいますよね。

原作には本当に数多くの物語があって、どれも興味深くてその中から3つに絞るのはとても大変な作業だった。最終的に、すべて女性の視点から描かれているもの、さらにそれぞれ三つの違う年齢層のキャラクターで描かれているものを選んだんだ。どのエピソードも主人公が欲望に駆られ、悲劇的な終わりを迎える物語になっている。

-その悲劇的な部分も含め、ギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』に通ずる残酷さを感じました。

デルトロ監督のアプローチはとても好きだよ。特殊効果も現実的な感じで取り入れるところがいいよね。でも、僕は僕なりのストーリーテリングの方法を育ててきたつもりで、僕のアプローチというのは常にシンプルに、リアルに、そして人間的に物語を描くということなんだ。僕は常にキャラクターに寄り添うことを大切にしていて、彼らが間違っているか正しいかという観点ではなく、たとえキャラクターが間違った選択をしたとしても、そのことを理解するように、人間的なアプローチを心がけているつもりなんだ。彼らの旅に付いていくような感覚かな。


(C) 2015 ARCHIMEDE S.R.L. - LE PACTE SAS

それと、この映画を作るにあたってすごく重要だったのはロケーションなんだ。物語への理解が深まるような壮大なロケーションを、1年以上かけてイタリア中で探したよ。イタリアのさまざまな景観で、観客を驚かせられたらいいなと思ったんだ。

ーさまざまな国から集めた国際的なキャスティングも、その多様性から架空の王国という世界観にすごくハマっていました。

この作品は僕の初の英語作品なんだけど、それは英語で作ることによってこのあまり知られていない物語を世界中の人に届けたいという思いがあった。それに、バジーレはウィリアム・シェイクスピアと同じ時期に輩出された作家で、バジーレも演劇色の強い作家だったんだ。だから、イギリス出身の役者を多く起用したんだよ。

でもその他のキャストは色々な国から参加してもらった。彼らの演技の才能はもちろん、その物理的なルックスも大切だったんだ。サルマ・ハエックはスペインから来た女王、ヴァンサン・カッセルはフランスの王様といった感じでね。


(C) 2015 ARCHIMEDE S.R.L. - LE PACTE SAS

ーロケーションとキャステイングはもちろん、ひとつひとつの画のヴィジュアル、アングル、構図に至るまで、細部に渡り監督の強いこだわりを感じました。それはやはり、あなたの画家というバックグラウンドが強く影響しているのでしょうか?

もちろんそれは大きいと思う。今回の作品で一番インスピレーションを得たのはフランシスコ・デ・ゴヤだったんだ。ゴヤはバジーレの2世紀後に登場した画家なんだけど、中でも作品集「ロス・カプリチョス(気まぐれ)」(1799年)などの絵画に影響を受けたよ。ゴヤは人間のグロテスクな部分を描くことに長けていて、悲劇的でありながらコミカル、シュールでありながら現実的なんだ。ゴヤが描く人間の肉体、人間と獣の関係性、人間の肉体的な変化など、すごく興味深くて参考にしたよ。もちろん、17世紀の偉大な画家、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオも念頭にはあったんだけど、とにかくこの映画はゴヤの影響が一番大きかったね。


(C) 2015 ARCHIMEDE S.R.L. - LE PACTE SAS
『五日物語 3つの王国と3人の女』
監督・製作・脚本:マッテオ・ガローネ
出演:サルマ・ハエック ヴァンサン・カッセル  トビー・ジョーンズ ジョン・C・ライリー ほか
11月25日よりTOHOシネマズ六本木他全国ロードショー。
http://itsuka-monogatari.jp/


マッテオ・ガローネ
1968年、イタリア・ローマ出身。1986年、芸術高校を卒業して撮影技師の助手から画家となるが、次第に映画製作を志すようになり、1997年に製作会社アルキメデを設立。2002年、カンヌ国際映画祭の監督週間で上映された『剥製師』で注目を集め、2008年『ゴモラ』では同映画祭の審査員特別グランプリを獲得。2012年、『リアリティー』で再びカンヌ審査員特別グランプリに輝き、イタリア国内の最高賞ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞も受賞した。次回作は、童話「ピノキオ」の実写映画化になる予定。