運動習慣がない人にもおすすめ

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坂道もすいすい登れる電動アシスト付き自転車。子連れでの移動や買い物には便利だが、運動目的にはもの足りない。しかし「座りすぎ」の人にとっては、健康増進効果が期待できるらしい。

運動強度はエアロビやテニスと同程度

近年、注目されている「座りすぎ」のライフスタイルは、肥満や糖尿病、冠動脈疾患などのリスクファクターになり、死亡リスクを高めることが明らかになっている。

車通勤の人が多い米国でも「座りすぎ」は深刻な問題だ。座ったまま会社へ行ってデスクワークをこなし、座ったまま帰宅。自宅でもソファでゴロゴロ...という人も少なくない。

そんな中、米コロラド大学ボールダー校の最新の研究で、電動アシスト付き自転車が運動不足の人、とくに「座りすぎ」の人の健康状態の改善に役立つことがわかった。

研究者らは、運動の習慣がなく、通勤時も車を利用するなど座っている時間が長い20人のボランティアを対象に調査した。事前にヘルスチェックを行い、身体組成、最大酸素消費量、血圧、血中脂質、血糖値を調べ、その後4週間、少なくとも週に3回、1日40分以上乗ることを条件に電動アシスト付き自転車で通勤してもらった。また、運動強度を測定するため、参加者は乗車時に心拍計とGPSを装着した。

4週間の平均移動距離と時間は約318辧16時間で、自転車をこいでいるときの運動強度は平均4.9METs。METsとは運動強度の単位で、安静時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したものだ。『改訂版身体活動のメッツ(METs)表』(国立健康・栄養研究所作成)を見ると、5METsは軽度のエアロビックダンスやテニス、早歩き(6.4km/h)など、「ほどほど」あるいは「ややきつめ」の活動に相当する。普通の自転車で通勤する場合は6.8METsだが、アシスト付きでもそこそこ運動になるということだろう。

また、ヘルスチェックでは、血糖コントロールや最大酸素消費量に改善が見られ、電動自転車が「座りすぎ」の人々の心臓血管の健康に役立つことがわかった。

買う前に必ず試乗を

日本では、電動アシスト付き自転車というと「子ども乗せ」のイメージが強いが、最近は子育て世代だけでなく、通勤や通学、あるいはシニア向けの製品も各メーカーから発売されている。

調査会社ジーエフケー・ライフスタイルトラッキング・ジャパンの「2015年の電動アシスト自転車販売動向」によると、電動アシスト付き自転車の販売台数はここ数年、横ばいで、「子ども乗せ」の割合が増えている。少子化によって子育て世代の需要が頭打ちになることが予想され、各メーカーは学生やシニア世代の需要を喚起しようと、さまざまな機種を開発している。

自転車店の電動アシスト付き自転車コーナーをのぞいてみると、シニア向けに軽量で操作が簡単なものや、一見、アシスト付きには見えないスタイリッシュなデザインのもの、スポーティなクロスバイクなど、選択の幅の広さに驚く。

ママチャリ風だが細身でおしゃれなタイプを選び、試乗してみると、最初のひと漕ぎで思っていたより強いアシストを感じ、バランスを崩しそうになった。車輪が小径で重心が低いタイプに変えると、同じように背中を押される感はあるものの、心の準備ができていたこともあり、スムーズに漕ぎだすことができた。アシスト付きとはいえ、それなりにこぐ力も必要だ。30分も乗れば適度な有酸素運動になり、毎日乗れば脚力もつくだろう。

半面、リスクもある。ちょっとペダルを踏んだだけで意外にスピードが出るし、普通の自転車より重い。バッテリーが切れたら、ペダルをこぐのも一苦労する。価格は幅があるが、中心は10万円前後と高価だ。転倒や衝突を防ぐためにも、見た目だけで選ばず、体力や目的を伝えて、店員に相談するといい。購入前には必ず試乗し、記者のように久々に自転車に乗る人は、慣れるまで何度か練習することをおすすめする。

満員電車で30分立ち続けるのも座りっぱなしよりはマシかもしれないが、日々蓄積されるストレスを考えると健康的とも言えない。これからは、晴れた日だけでも通勤手段を電動アシスト付き自転車に変えてはいかがだろう。決して安い買い物ではないが、健康効果があり、爽快感を味わえるとあれば、本気で検討する余地はありそうだ。
[監修:早稲田大学スポーツ科学学術院教授 岡浩一朗]

参考論文
Pedelecs as a physically active transportation mode.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27299435
DOI: 10.1007/s00421-016-3408-9. PMID:27299435

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