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SC16において、Harvey Mudd CollegeのMaria Klawe学長が、スーパーコンピューティングへの多様な人材を取り入れるやり方について招待講演を行った。スーパーコンピューティングに関する人材は大幅に不足しており、それを埋めるためには、男性/女性や白人や黒人といった人種などの区別なく、多くの人をこの分野に惹きつけることが重要である。また、多様な人材が集まることにより、より良いアイデアが出てくるという。

読者の大部分はHarvey Muddをご存じないと思うが、理工系だけの、教師100名、学生800名の小さな大学である。しかし、その評価は、CaltechやStanfordと並ぶ超一流校である。ロスアンジェルスの近郊にClaremontという人口3万人余りの小さな市があり、そこにClaremont Collegesという7つの大学の連合体があり、Harvey Muddはその中の1大学である。このような連合体の中のどの大学の講義でも選択することができるシステムとなっており、2000のコースがあるとのことである。ただし、学費は米国の大学の中でも最高クラスであるという。

Harvey Muddは1955年に共学校として創立されたが、最初の30年間は、ほとんどの学生が白人の男性であった。しかし、次の図に示すように。1996年には女性の比率が、約20%になり、その10年後の2006年には約30%、さらに2016年には教師は約40%が女性で、学生はほぼ同数まで増加している。

筆者も日本のいくつかの大学やインドの大学でコンピュータアーキテクチャの講師をやらせていただいた経験があるが、女性の受講者はだいたい10%〜20%で、理工系で男女比が50%-50%というのは信じられない比率である。

なお、Klawe氏は2006年にHarvey Mudd初の女性の学長に就任している。また、2015年はHarvey Muddの7つの学部の学部長の内の3人が女性、2016年は、なんと、7人のうちの6人が女性になったという。

また、2012年から2015年の間で、アフリカ系アメリカ人の学生は〜2%から〜12%に、ヒスパニック系の学生は〜5%から〜20%に、アメリカ原住民系の学生は〜1%から〜3%に、その他の外国人は〜10%から〜14%に増えたという。そして、アジア系アメリカ人の学生の比率は20〜25%でほぼ安定しており、白人の比率は現在では40%程度に減少しているとのことである。かつてのほぼ全員が白人男性という状況からは、大きく様変わりしている。

教師の方も多様化が進んでいるが、学生よりもペースはゆっくりであるし、注意を怠ると進みが止まってしまう。多様な人材を探すよう、教師の候補者を探す委員会を教育することが非常に重要であるという。

コンピュータサイエンス(CS)や工学系の学生を惹きつけるには、それらの学生をサポートし、引き込むような環境を作ること、存在感の薄いグループの学生には自信を持たせることやコミュニティを作ること、そして成功への道を分かりやすく示すことが重要である。そうすれば多様な人々がやって来て、成長して成功できる。

特にスーパーコンピューティングに対しては、多様な学部学生を夏休みの研究や企業インターンにリクルートすること。広範な教授陣を博士課程の教育プログラムにリクルートすること。研究申請に多様化(Diversity and Inclusion)の状況の報告を義務付けること。SCのすべての発表に多様な発表者を含めることなどが効果的であるとの忠告で、招待講演を締め括った。

Harvey Mudd Collegeだけでなく、スーパーコンピューティングの学会や業界は、多様な人材の確保には非常に熱心であり、色々な施策を行っている。SC16において女性やマイノリティの学生に奨学金を与えるACM SIGHPC/Intel Computational & Data Science Fellowshipsの受賞者の発表が行われた。受賞者は14名で男性の受賞者は2名で、12名は女性という多様な顔ぶれである。

また、今回のSC16では赤ちゃんの託児所が設けられた。スーパーコンピューティングの分野では、夫婦ともに同じ学会や業界の人というケースも多く、赤ちゃんがいる夫婦では、どちらかは家に残って育児をする必要がありSC16には参加できないということになりかねない。託児所を作れば、夫婦ともにSC16に参加できるという考えである。

スーパーコンピューティングに人材を集めて発展させて行くためには、このような取り組みも重要であると思う。日本でもこのような取り組みが広がることを強く希望する。

(Hisa Ando)