「ボールとスペースだけ見てしまい、人を見れない」守備陣は、日本代表のウイークポイントだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「率直な感想を言うなら、岡田、ザッケローニ時代と比べ、大まかな印象は変わらない」
 
 ロシア・ワールドカップアジア最終予選、サウジアラビア戦を検証したヘスス・スアレスは感想を語っている。
 
「攻撃の選手は俊敏でテクニカルでハイテンポだが、攻め急ぎすぎる。慌ただしく、緩急の変化が乏しい。やはり、最大の課題は守備だろう。なにひとつ解消されていない。人に対して弱い、という表現では足りない。球際だけの問題ではないだろう。ボールとスペースだけ見てしまい、人を見れないために読みが浅く、こぼれ球の反応が悪く、オフサイドにかけて攻撃を一網打尽にするような試みもない」
 
 スペイン人記者、スアレスの論説には一切の容赦がない。『ワールドサッカーダイジェスト』で20年近く連載。「名将への挑戦状」「戦術への挑戦状」(東邦出版)などたくさんの著作も出版している。

 シニカルで鋭い視点は人気を博し、ヨハン・クライフ、ジョゼップ・グアルディオラ、ホルヘ・バルダーノ、キケ・セティエン、マウロ・シルバ、フラン、ファン・カルロス・バレロンなど名士たちとの交流も深い。
 
 日本代表についても、定点観測してきた。
「速い攻撃を志向? それは精度の悪い攻撃ということか?」
 スアレス節で、ハリルジャパンの現在を解析する。
 
「日本はサウジを相手に攻撃を仕掛けていた。その点は間違いない。しかし、攻撃をしていたが、それは"支配していた"と同義語ではない。日本は攻めはしたが単発で、支配はできなかった。攻めている時の選手の距離感が悪く、セカンドボールを拾えるポジションを取れず、そのため波状攻撃にもなりにくい。カウンターの意識だけが強く、PAUSA(プレーを停止し、緩急を生み出す)に欠け、攻め急ぎ、効果的ではなかった」
 
 スアレスは「支配できていない」攻守に関して、辛辣を究めた。
「攻撃に関しては、清武弘嗣がスキルの高さを見せている。キックの質が高い。とりわけ、セットプレーは有力な武器になるだろう。しかしチームとしては凡庸だった。PAUSAを用い、幅を使えたら、(相手のレベルを考えたら)もっと簡単に得点を取れただろう。速い攻撃を目指しているらしいが、私に言わせれば、精度、質を落としていたに過ぎない。実際、シュートの瞬間、精度を欠いていた」
 そして、CFの大迫については、
「大迫勇也というストライカーが絶賛されているようだが、私にとっては、岡崎慎司のプレーの質に及ばない。岡崎の動き出しやゴールセンスは、スペイン人である私が語るまでもないだろう。レスターで定位置を失い、代表でも不調ということだが、攻撃において速さばかりが求められることに、むしろ疑問を覚える。クラウディオ・ラニエリも含め、岡崎を使い切れていないだけ。ザッケローニ時代のほうが、そこは可能性を感じさせた」
 
 ボールありき、を理念にするスアレスは、ウナイ・エメリ、ディエゴ・シメオネ、ジョゼ・モウリーニョにも苦言を呈する。受け身の戦術の正当性を認めない。プレーヤーの創造性を殺すだけだからだ。
 
「(ヴァイッド)ハリルホジッチ監督は守備の改善に力を入れている、と聞いた。選手は個人で守る意識は強くなった。しかし、それぞれが相手選手に食いついてしまっている。結果、守備ブロックは形だけ。欧州や南米の強豪が相手なら、簡単に突き崩されるだろう。そもそもハリルホジッチはブラジル・ワールドカップのアルジェリアで、組織的な守備を作れていない。選手にインテンシティを要求し、走り続けて立ち向かったが、最後は力尽きている」
 
 スアレスはインテンシティよりもインテリジェンスを重んじる。彼はサウジ戦に勝利した事実よりも、「追いつかれなかったのは僥倖」と主張した。