<「私はムスリム」と書いた札を提げ、目隠しをして街頭に立つユーチューバー。決死の行動に人々はどう反応したか>

 昨年11月、130人の死者を出したパリ同時多発テロの衝撃も冷めやらず、ヨーロッパ中に反ムスリムの嵐が吹き荒れていた時期、デンマークのユーチューバー(YouTubeの動画配信のプロ)、アリアン・カシェフは何か行動を起こそうと思い立った。

 カシェフはデンマーク第2の都市オーフス各地の人通りが多い場所を選び、「私はムスリム。だがテロリストではない。あなたは私を信頼してくれますか。イエスなら、私をハグしてください」と書いたボードの横に、無防備にも目隠しをして、腕を広げて立った。そしてその様子を撮影し、YouTubeで配信した。

 人々の反応は心温まるものだった。動画では通りすがりの男女、子供たち、さらに終わりのほうでは、やはり差別を受けがちな車椅子の男性がカシェフをハグする。

 15年11月22日にアップされてからほぼ1年。カシェフのささやかな実験を収めた動画は静かな共感を呼び、再生回数は40万回超に達した。そして今年11月中旬、信じ難いことが起きた。

 カシェフの動画はソーシャルメディアで取り上げられ、世界中に拡散し始めたのだ。きっかけは米大統領選だ。選挙戦中にムスリムをはじめマイノリティーを公然と侮辱してきたドナルド・トランプが勝利したことで、1年前のカシェフのように何かしなければと思う人たちが現れた。

ゼンデイヤもリツイート

 11月8日の投票日の4日後、ツイッターのユーザーがカシェフの動画を紹介。このツイートを映画『スパイダーマン』シリーズの新作でヒロイン役を務めた人気アイドルのゼンデイヤがリツイートした(彼女のフォロワーは690万人に上る)。ゼンデイヤの投稿はさらにリツイートされ、50万超の「いいね!」を獲得した。

 その翌日の11月13日、DJのサミー・アーサックがフェイスブックの公式ページでカシェフの動画を紹介。わずか1週間で、5800万回再生され、94万人の「いいね!」を獲得。シェア数は91万9000件に上った。

 動画に寄せられたコメントを見ると、「人々の反応に希望をみいだした」「寛容の精神が大事だ」といった内容がほとんどだ。カシェフのメッセージは確実に伝わったようだ。ある人はこう書いている。「あなたがムスリムでも、ゲイでも、非白人でも、何であれ、アメリカで肩身の狭い思いをすることはないし、怖がることもない。あなたはここに属している。私はあなたの味方だ」別の人はこうも言う。「胸が熱くなる動画だ。もちろん、私も彼をハグする」

トゥファエル・アフメド