映画『疾風ロンド』:吉田照幸監督が語る制作裏話「真面目な人がバカをやってるほうが面白い」

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日本を代表するミステリー作家・東野圭吾が原作の『疾風ロンド』。100万部超の大ヒット作を映画化するにあたり、白羽の矢が立ったのが『サラリーマンNEO』や『あまちゃん』の演出を手掛けた吉田照幸監督だ。ユーモアには定評がある吉田監督が、本作の制作裏話を語ってくれた。

―今回『疾風ロンド』を撮るにあたり、念頭に置かれていた作品があったそうですね。

僕はもともと、ダニー・ボイル監督の『トレインスポッティング』やエドガー・ライト監督の『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のようなイギリス映画が大好きで。どちらも、犯罪を扱っていながら皮肉めいた笑いが随所に散りばめられているんですけど、『疾風ロンド』もサスペンスとコメディを融合させた映画にしたいと思っていたので、こういった作品がとても参考になりました。


(C) 2016「疾風ロンド」製作委員会

―具体的には、どんなところで?

いくつかありますけど、ひとつ挙げるなら栗林(阿部 寛)と東郷所長(柄本 明)の電話シーンですね。イギリス映画はよく説明部分をバッサリ省いたりするんですが、『疾風ロンド』でも、本来なら細かい会話のやりとりで展開していく場面でいきなり本題の会話からスタートさせています。あと、悪役もどこか間抜けで笑えるキャラだったりする場合が多いので、柄本さんにヅ豢申蠶垢呂箸砲く自己保身だけを考えたキャラクターにしてくださいイ箸願いしました。そうすることで人間の愚かさやおかしみが表現できるし、少し間抜けで憎めないキャラクターに見えるかなと思って。

―なるほど(笑)。

邦画のコメディって、キワモノ的なキャラクターを出して笑いをとろうとするイメージがあるんですが、僕自身は『ホットファズ〜』でサイモン・ペッグが演じたような、真面目な人がバカなことをやってるほうが面白いと思うんです。栗林の場合も、真面目にやればやるほど空回りしていくし、観ていて笑えますよね。この映画では他にも、ワダ(ムロツヨシ)と川端(前田旺志郎)というゴ靴譴討い覆と蛤畆圈間抜けな子供イ登場します。東野圭吾先生が彼らの場面についてゲ薪抓僂討眈个┐譛イ箸っしゃってくださったのはとても嬉しかったですね。


(C) 2016「疾風ロンド」製作委員会

―それは監督冥利に尽きますね。

特に笑いのシーンは、原作から少し膨らませて作ってる部分もあるので、東野先生が喜んでくださって本当によかったと思います。スキーのアクションシーンに関してもイ海鵑覆隆僂燭海箸覆イ箸っしゃってました。

―スキーの場面は映画の見どころのひとつですが、あのシーンはどうやって撮影されたのですか?

GoPro(ゴープロ)というカメラを地元スキーヤーの方に持ってもらって、滑りながら撮影していただきました。フルCGで、グリーンバックにするという案もあったんですけど、やっぱり本物の映像とは勝負にならないんですよ。YouTubeでスキーヤーの映像を探した時、一番衝撃を受けたのがGoProで素人の方が雪山を滑ってる映像だったので、今回はそのアイデアを使わせてもらいました。


(C) 2016「疾風ロンド」製作委員会

―音楽の使い方もイギリス映画を意識した部分があったり?

例えば栗林と東郷所長のシーンでは、最初はサスペンス風の重厚な音楽が流れるんですが、所長のイ錣靴話里蕕龕イ箸いβ羯譴らあえて奇妙な音楽にしているんです。そうすることで、サスペンスかと思いきや、なんかちょっと変な感じになってきたぞと思ってもらえるというか。映画音楽というとストリングス系かハンス・ジマーの曲のような打ち込み系が多いんですけど、僕はロックが好きなのでついロックな音楽を鳴らしたくなってしまうんです。ちなみに2015年に撮った『洞窟おじさん』というドラマでは、ドアーズの『ジ・エンド』を流してるんですけど、曲がかかった瞬間に映像の色合いがまるで違って見えたので、音楽って強力だなと改めて実感しました。


(C) 2016「疾風ロンド」製作委員会

―ロックと言えば、監督もバンド活動をしてらっしゃったそうですね。

レベッカを独自にアレンジしたバンドでヤマハのポプコンに出場したことがあって、僕は山口出身なんですけど広島大会までいきました。昔はハードロックのギターの早弾きばっかり練習してましたね(笑)。イギリス映画が好きなのは、ロックが劇中に流れることが多いからかもしれないです。

―吉田監督と言えば『サラリーマンNEO』や『あまちゃん』など、NHKで常に新しいことに挑戦されているイメージもあります。

『サラリーマンNEO』をやったことでNHKで面白いことをやっても怒られないんだイ箸いνΦい鰺燭┐襪海箸できたと僕は思っています。でも、そこで満足していたら今の自分はなかったかなと。これまで出会ってきた才能ある方々は、長いキャリアの中で常に新しいことを求めて貪欲にやってこられているんです。例えば『あまちゃん』で脚本を書いてくださった宮藤官九郎さんも、本当に手を抜かない人なんですね。あれだけ締め切りをきちんと守って若手の意見を聞く作家の方は、見たことがないです。そういう宮藤さんの姿を見たら、僕なんてとてもじゃないけど調子に乗れないですよ。あと『となりのシムラ』でご一緒した志村けんさんは、僕ら演出家が書いた台本を1時間かけて読まれるんです。長い年月の中でものすごい数のコントを作ってきた志村さんが、たった1本のコントにここまでこだわるんだと驚きましたし衝撃的でした。そういう方達と一緒にお仕事をさせていただくと、慣れてきてさぼろうとする自分を戒めることができるんです。阿部 寛さんも台本の一行一行をしっかり読み込んで、たった4、5秒のシーンでさえも細かく丁寧に考えて挑んでくださる。常にトップを走ってこられた人達は熱量が圧倒的に違うんですよね。ついていくのは正直大変ですが(笑)、なんとか応えられるように自分の熱量も上げるようしています。

―そういった方達との出会いはご自身のモチベーションにもつながったり?

つながりますね。先日、2017年のお正月に放送されるNHKドラマ『富士ファミリー』の演出をさせていただいたのですが、小泉今日子さんと薬師丸ひろ子さんが『あまちゃん』以来の共演を果たしてくださって。その時、小泉さんがサ氾調篤弔砲呂發辰箸い蹐鵑丙酩覆鮖っていって欲しいイ肇瓮ぅさんにおっしゃったそうなんです。それって、イ發辰箸燭さん経験をしなさいイ箸いΕ瓮奪察璽犬覆鵑任垢茵今までの仕事を認めてくださったからこそ、さらにがんばれとメッセージを送ってくださる。こうやって僕はいろんな方に生かされてるんだなと思います。


(C) 2016「疾風ロンド」製作委員会

―今後はどんな作品を作っていきたいですか?

大好きな伊丹十三監督のように、社会的な面を描きつつも、日本の映画界に対するアンチテーゼを感じさせる作品を撮りたいです。メッセージが豊かで、笑えるシーンもしっかり描けるような監督になれたらいいですね。『あまちゃん』が終わった後、伊丹十三記念館を訪れたんですけど、監督が書かれたものを拝見したらとても緻密な内容で。とにかく尋常じゃない熱量で、すべての情熱を作品に対して注がないと良いものは生まれないんじゃないかと思いました。あとは、やはり最初の話に戻っちゃうんですけど、エドガー・ライトとサイモン・ペッグのコンビにも憧れます。彼らはテレビ番組の制作者と俳優として出会っていて、その後に笑えて感動できる『ショーン・オブ・ザ・デッド』というゾンビ映画や『ホットファズ』、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』を撮っています。どの作品も本当に良くできていて面白い。パンキッシュだけど誰もが共感できるようなエンターテイメント映画を、僕も作っていけたらと思います。


TERUYUKI YOSHIDA
吉田照幸 1969年12月13日、山口県生まれ。93年、NHK入局。2004年に『サラリーマンNEO』を企画・演出し、NHKでは型破りな番組として人気を博す。さらに日本中にブームを巻き起こした連続テレビ小説『あまちゃん』の演出を担当し、近年では『となりのシムラ』といったコント番組や『獄門島』(NHKBSプレミアム 11月19日放送)、2017年正月に放送されるドラマ『富士ファミリー』の演出を担当。

『疾風ロンド』
監督/吉田照幸
出演/阿部 寛、大倉忠義、大島優子ほか
11月26日(土)より、全国ロードショー
http://www.shippu-rondo-movie.jp/