【専門誌では読めない雑学コラム】
■木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第81回

 アマチュアゴルファーにとって「憧れの小技」と言えば、いろいろありますが、おそらく一番は「スピン」じゃないですか。プロツアーのテレビ中継でよく見るバックスピンは、ことさらカッコよく、誰もが憧れます。

 高い球でピン奥3ヤードぐらいにドスンと落とし、そこからキュルキュルッと逆回転させて、カップ付近まで戻す――ああいうショットを一生に1回はやってみたいと思うのですが、まあ、それはほとんど無理でしょうね。

 でもその代わり、アマチュアでも簡単なスピンはかけることができます。

 まず、誤解されているのは、スピンの定義というか、範疇です。プロのトーナメントを見すぎると、「強烈なバックスピン」のみをスピンと解釈しがちですが、キュルキュルとボールがすごい勢いで逆回転しなくても、スピンと呼びます。

 例えば、60ヤードぐらいのアプローチで、ウェッジを使って低めに打った場合、ボールが2〜3回バウンドして、ややブレーキがかかって止まることがあります。あれは、ちゃんとスピンがかかっているから、間延びしないのです。

 昔、タイガー・ウッズが日本にやって来て、公開レッスンをしたときは、「60度のサンドウェッジで低く打ち出して、ボールを2〜3バウンドさせて止めます」とインカムで説明しながら、目の前で実演。あのときは、身震いしましたね。

 なにしろ、60度のウェッジなのに、ボールの打ち出しがすごく低くて、ボールが落ちてからは2〜3ヤードでピタッと止まるのです。何度打っても、ほぼ同じところにボールが止まって、まるでマジックを見ているようでした。

 個人的にはスピンをかけることはありません。短いアプローチでも、ボールが落ちてから惰性で転がる距離を計算し、カップのどれくらい手前にボールを落とすかを考えて、おおよそサンドウェッジで高い球を打ちます。

 砲台グリーンで、カップがすごく手前に切ってある場合などは、もう諦めの境地で「グリーンに乗れば、カップの奥に転がってもいいや」と思って打ちます。下手に小細工して打つと、余計なミスをするので、「こざかしいことはしない」、そう決めているのです。

 とまあ、私はスピンをかけない派でプレーしているのですが、たまたまスピンが勝手にかかることがあります。それは、ご褒美ということで、喜んでスピンの恩恵にあずかります。

 じゃあ、たまたまスピンがかかるって、どういうことなんでしょうか?

 以前、日本の「スピンの父」と言われた(というか、私が勝手に言っているだけです。すみません......)、竹林隆光さんにインタビューしたことがあります。スピンがかかる理由の一端が、そのときの話から垣間見ることができます。

 竹林さんは、クラブデザイナーであり、『フォーティーン』の創業者です。自らもプレーし、日本オープンの出場経験を持つトップアマでもあります。

 フォーティーンブランドのウェッジは、よくスピンがかかると評判でした。個人的にも何本も持っています。最初にフォーティーンのウェッジで打ったときは、ボールの表面から鉋(かんな)をかけたみたいな、小さい削りカスが飛んで、びっくりしたものです。それだけ、シャープにカットが入るんですね。

 インタビューでは、スピンの話に花が咲きました。フォーティーンのウェッジが発売されてから、アマチュアの「スピンに対する意識が変わった」とおっしゃっていました。それはつまり、「スピンはかけるものから、勝手にかかるもの」に変化したというのです。

 通常、プロや上級者は、意図的にボールに回転をかけて、スピンを発生させます。その回転方法は、アイアンやウェッジのロフトを立てて、ボールを潰すように打つのですが、アマチュアが真似をしてできるようなものじゃありません。逆に、大きなミスにつながる可能性のほうが高いでしょう。

 ところが、フォーティーンのウェッジは、普通にアマチュアが打っても、勝手にスピンがかかるのです。そう言われても、「スピンの実感は少ないです」と私が言うや、竹林さんは最適な条件を提示してくれました。

 最もスピンのかかりを感じやすいのは、「アプローチウェッジで、50〜60ヤードを打ったとき」なんだそうです。

 そうかぁ〜。そう言われて、妙に納得しました。要するに、100ヤードぐらいの距離だと、スピンはかかるけれども、もともと高いボールだから、勝手にボールが止まる。一方で、20〜30ヤードの短い距離だと、スピンがかかるほどの摩擦が発生しない。

 それが、50〜60ヤードの距離だと、適度に打ち込むので、摩擦が生じて勝手にスピンがかかりやすいのです。しかも、自分の目でスピンを確認しやすい、というメリットもあります。

 もちろん、グリーンの硬さや湿り具合、そしてライによっても、いかようにでも変化しますから、スピンの発生率はさほど多くありません。意識せずに打って、「あれ? 今回はスピンがかかっているぞ」というのがいいでしょう。

 スピンは、忘れた頃にやってくる――そんなところでしょうか。

 竹林さんからの教えもあって、今でもアプローチはフォーティーン製です。もちろん、最近のクラブメーカーは研究熱心ですから、評判の高いウェッジはどれもスピンがかかりますけどね。

 たまたまスピンがかかったときの爽快感は、ドライバーでナイスショットを打ったときよりも気持ちいいかもしれません。ドライバーは"飛距離自慢"の意味合いが強いですが、スピンは"巧いこと"を同伴競技者にアピールできますからね。

 とはいえ、スピンが決まったからといって、ドヤ顔で同伴者たちの顔を覗き込むのだけはやめましょう。「あれ? ボールが落ちた箇所からまったく転がってないなぁ〜」などと、わざとらしいアピールもくどすぎます。

 スピンがかかっても、あくまでさりげなく、平静を装ってプレーするのがいいでしょう。周囲は十分に、あなたの実力を知っていますから。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa