イ・ボミ(28歳/韓国)が、ようやく重いプレッシャーから解放された。

 11月20日に最終日を迎えた大王製紙エリエールレディス(11月17日〜20日/愛媛県)で、賞金ランキング1位のイ・ボミは通算9アンダー、26位タイでフィニッシュした。これで、年間獲得賞金は1億7411万4764円(11月21日時点。以下同)となった。

 一方、賞金ランク2位の申ジエ(28歳/韓国)は36位タイ(年間獲得賞金=1億3709万8013円)、同3位の笠りつ子(29歳)も26位タイ(年間獲得賞金=1億3368万9013円)にとどまり、イ・ボミとの賞金差を縮めることができなかった。この結果、最終戦のLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ(11月24日〜27日/宮崎県。※優勝賞金2500万円)を前にして、イ・ボミの2年連続賞金女王が決まった。

「今は、本当にうれしいです。でも、これで来年の目標をどうすればいいのか......、逆にプレッシャーです(笑)。まだ、残り1試合ありますけど、今はとにかく早く休みたいです」

 早く休みたい――それは、まさにイ・ボミの本音だ。

 今季は賞金女王の立場を守ることに、本当に苦しんだ1年だった。シーズン終盤、顔を見れば「疲れています......」と口癖のように語っていた。確かに、何かを守ること、その価値や重要性が高ければ高いほど、それは精神的にかなりしんどいことだ。

 また、昨季は年間7勝を挙げて初の賞金女王に輝いたイ・ボミ。圧倒的な強さを見せて、年間獲得賞金は2億円を超える快挙まで成し遂げた。ツアーで戦う選手たちにとって、2016年シーズンの意識は間違いなく「打倒、イ・ボミ」に向いていた。そんな追われる立場となれば、その精神的な重圧や苦労は計り知れない。

 苦しいシーズンだったことは、イ・ボミの専属キャディーを務める清水重憲氏も認める。

「2015年は賞金女王を獲る、という目標へ前だけを向いてやってきたけど、今年はそのタイトルを守る立場となった。その重圧は間違いなくあったし、相当なものでした」

 さらに今季は、試合会場でイ・ボミのプレーを追うゴルフファンに限らず、日本中の人たちがイ・ボミの存在を知るようになって、街中でも声をかけられる機会が増えたという。そういう立場になったことを理解しているからこそ、今季のイ・ボミは余計に「情けない試合はできない」と、自らを追い込んでしまった。

 シーズン中は、「応援してくれるファンがいるから、しっかり結果を残さないといけない」と繰り返し語っていた。それだけ、彼女はファンの期待に応えようと必死だったのだ。

 その姿を間近で見ていた清水氏が再び語る。

「なかなか優勝できなかったり、トップ10入りできなかったりしただけで、周囲から『調子が悪いの?』と言われる。そんな選手って、そうそういませんよね(笑)。そういった言葉が、後半戦はイ・ボミ選手に重くのしかかっていた、というのはあるかもしれませんね」

 だが、そうした状況にあっても、イ・ボミは今季も5度優勝を飾って、日本ツアー通算20勝を達成。見事に2年連続となる賞金女王のタイトルを手にした。加えて、日本で通算20勝を記録したことで、母国・韓国女子ツアーでの永久シード権も獲得した。

 今季の数字を見ても、その強さは突出している。出場27試合で、優勝を含むトップ10入りは20回を数える。しかも、日本女子オープンの1試合だけ棄権したものの、予選落ちはなく、最も悪い成績はTOTOジャパンクラシックの49位タイだった。賞金ランク2位の申ジエ、同3位の笠りつ子でさえ、一度は予選落ちを喫しているだけに、イ・ボミの強さと安定感は一層際立つ。

 その驚異的な強さの要因はどこにあるのか。清水氏は、今季のイ・ボミの強さについて、こう分析する。

「注目してほしいのは、パーセーブ率です。残り1試合を残して、91.1765%でツアー1位。おおよそ18ホールで1個のボギーを叩くと、約94%になるのですが、その計算でいくと、イ・ボミ選手は1日約1個のボギーしか打っていないことになります。私の中には、『優勝争いをする強いプロはボギーを打たない』という認識があるのですが、まさしくここにイ・ボミ選手の強さが垣間見えます」

 清水氏が続けて語る。

「さらに今季、大きな変化があったのは、リカバリー率(パーオンを逃したホールでパー以下のスコアで上がる確率)です。先ほどパーセーブ率が上がったという話をしましたが、それは、それだけアプローチとパターの技術が向上していると言えます。つまりその結果、リカバリー率も上がるわけです。今季は、73.4536%で断トツの1位です(2位のキム・ハヌルが71.4579%)。賞金女王となった昨季でも、66.5272%で6位でした。

 振り返れば、私が初めて(イ・ボミの)バッグを担いだ2012年のリカバリー率は、20位台(24位=63.1579%)でした。それ以外の部門別ランキングは、ほぼトップ5だったにも関わらず、そこだけが明らかに悪い数字でした。要するに、そこを改善しなければ、目標の賞金女王獲得はかなり厳しい。そこで、当時からアプローチ練習にずっとこだわってきたわけです」

 イ・ボミも、清水氏の話に頷いてこう語った。

「アプローチとパターは、たくさん練習しました。今年は特に、日本の芝に対応するために打ち方を工夫しました。マネジメントも、基本は手前から。グリーンを外しても、手前からピンに寄せていける簡単なアプローチショットを残して、楽にパーを取れるようにしました」

 こうした技術の向上はもちろんのこと、イ・ボミは年齢を重ねるごとに衰える体力面のカバーにも気を使ってきた。専属トレーナーのもと、毎日トレーニングを重ねて、体のケアも必ず行なってきた。そうした日々のトレーニングを欠かさず、やり遂げることができるのが、彼女の強さでもある。

 イ・ボミの強さについて、最後まで賞金女王を争った申ジエはこう話す。

「ピンチになったときにしっかりと対応し、リカバリーできる、すごい選手だと思います」

 エリエールレディスを制し、昨季女王の座を争ったテレサ・ルー(29歳/台湾)もこう言う。

「いつも優勝争いをしている姿を見て思うのは、(イ・ボミは)追い込まれても動じないな、と。そんな、メンタルが強いところがすごい」

 ライバルたちが認める強さは、やはり本物だ。イ・ボミの時代は、まだまだ続く。

text by Kim Myung-Wook